オープンイノベーション「企業間データ共有」をブロックチェーンで効率化ーービジネス効率化の旗手たち/ZEROBILLBANK代表取締役・堀口純一氏 #ms4su

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本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

前回からの続き。本稿では、エンタープライズSaaSやインダストリークラウドに注目したサービスを展開するスタートアップにインタビューし、どのような生産性向上の取り組みがあるのか、その課題も含めてお伝えしています。

医療現場の業務支援に続いてブロックチェーンによって企業のデータ連携を効率化するZEROBILLBANK LTD(日本法人はZEROBILLBANK JAPAN)代表取締役CEOの堀口純一氏です(太字の質問は全て筆者。回答は堀口氏)。(取材・編集:増渕大志

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ZEROBILLBANKが解決していること:ブロックチェーン技術とスマートコントラクトの仕組みを活用して企業が保有するデジタルデータをアセット(資産)として管理する技術を提供。これにより、企業間でそれぞれが保有するユーザー情報などを、安全かつ信頼性ある状態で利活用可能になり、新規事業の創出促進が期待できる

企業間データ資産のブロックチェーン・スマートコントラクトによる共有というアイデアは実は以前も別の場所で聞いたことがありました。どういった経緯でこの課題に取り組むことになったのでしょうか

堀口:IoT技術の拡大によるエンドポイントが爆発的に増加することで、企業1社単独ですべてのデータを獲得することは不可能になってきています。

それを裏付けるように、トヨタ自動車とソフトバンクがMaaS領域で”共創”モデル『MONET』を発表しています。88社の協業プラットフォームですが、大企業が自分たちが保有する”アセット”(デジタル含む)を共有してでも新たな価値を生み出そうという意思を感じますよね。

最初からこういった企業データ資産の流通というスキームでの事業を考えていたのですか

堀口:いえ、当初は企業トークンや地域通貨などを中心に事業展開を模索していましたが、2018年11月末に発表したトッパン・フォームズ社との協業で、個人情報を含むデータ流通に事業ドメインをシフトさせたんです。オープンイノベーションによる顧客ニーズや、GDPR対応などの外部環境変化とも重なってトラクションを得られている状況ですね。

やはり企業それぞれが保有するデータの相互乗り入れについてはニーズがある

堀口:はい。管理主体の異なる企業間やサービス間でのデータ連携を実現するための課題は各社お持ちで、特に大企業における新規事業やオープンイノベーションの文脈でのお話が多いです。業種や業界をまたぐユースケースにおいて、既存のITシステムを活用したデータ連携では実現しづらかった事業開発に対する要望にお応えしているという状況です。

当然、データの信頼性が問われることになります

堀口:はい。改ざん耐性もそうですし、そもそもデータは個人のものです。その管理の自主性も重要なポイントになります。

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複数企業間でのデータ活用についてもう少し詳しく教えてください。具体的にどういった利用シーン、特にエンドユーザーの何が変わるのでしょうか

堀口:特に個人のスコアに関するものが最初のケースになるでしょうね。3つほどあると思っていて、一つは与信に関するもの。次に健康。そして社会性に関わる情報です。

なるほど、お金に関する信用情報は他の業種でも使いたいでしょうし、健康情報は各社、取得しつつそれを保険などのサービスに紐づける動きはよく耳にします。複数社乗り入れの開発となると工程も複雑そうですが

堀口:サービス開発のアプローチについても各社の動きを整理すると三つほど私たちが留意している点があります。

1. 複数社間での情報共有が必要で、現状に大きな課題があるユースケースを探索&妄想
2. ユーザー目線でのUI/UXが、Before/Afterでどう変化するのかにこだわる
3. 実証実験で終わらないために、2年後の絵を見据えたプロジェクト全体ロードマップ

特に苦労するポイントは

堀口:やはり複数企業間で形成するコンソーシアム内での意志決定プロセスでしょうか。お客様によって事業化までの進め方や考え方はさまざまなので、1:N(中央集権型)からN:N(非中央集権型)への環境遷移に合わせて適切にスコープ設計やゴール定義を明確にして、プロジェクトを進めるようにしてますね。

確かに企業間連携は乗り越えるべきハードルも多い

堀口:本番運用や実用化に向けて解決しないといけない課題は少なくなく、個人情報の管理や入力データの正確性の担保、ITシステムのいわゆる非機能要件の充足などの技術的側面など山積です。さらに前述したようなコンソーシアム内における企業内外での調整、法律などの制度面など事業的側面もあり、関係者を巻き込みながら丁寧かつ迅速に解決していくことが大切ですね。

ブロックチェーンによる企業間のデータ共有というと、まだまだ新しい概念だと思うのですが、現状のトラクションは

堀口:現在、SaaSモデルで提供しているのですが、今年3月時点で利用は17社に拡大していて、特に2018年後半から管理主体の異なる環境間でのデータ連携とそのデータ流通に対するお問い合わせが加速度的に増えています。

想定している市場のインパクトはどのように考えてますか

堀口:中心になるのはやはり日本の企業のIT投資で、2019年が約27兆円です。成長傾向であり、現時点で55%の企業がクラウドに移行しています。

その中でブロックチェーンを活用したデータ流通の市場が生まれると

堀口:現時点で日本市場におけるブロックチェーンの投資はごくわずかです。しかし前述の通り、各社が自社で管理している技術やITシステム、データだけで、既存事業の成長や新規事業を産み出すことについては限界がある状況です。

この共創の文脈で、企業間でのデータ連携をブロックチェーン・スマートコントラクトが担うことになれば、将来的には企業のIT投資の数%を占めることも十分可能性としてあると考えてます。国内だけでも1兆円以上の市場が生まれるのではないでしょうか。

ありがとうございました。次の方にバトンをお渡しします。(取材・編集:増渕大志

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