
先日、スタートアップPRの勉強会をやりたいとTweetしたところ、結構リクエストいただきまして、10回ぐらい機会貰えることになりそうです。早速広報寺子屋さんでは22日に登壇させてもらうことになりました。ありがとうございます。
スタートアップPRの勉強会やりたい
— kigoyama (@kigoyama) April 5, 2019
さて、これまで逆算で考える方法や、パブリシティ活動のクラウド化、プレスリリースの方法、オウンドコンテンツの効率化などについて考えを整理してきました。勉強会に向けての思考整理も兼ねて本稿では「スタートアップPRの指標(KPI)」について考えてみたいと思います。ポイントは次の通り。
- PLではなくBS的に考える企業のPR力
- コンテンツ力を高める
- 全員PRで結果を作る
最初に考えるべきは積み上げ
スタートアップ経営者であれば特になんですが、PLよりもBSを中心に投資や事業戦略を組むことが多いと思います。C2Cであれば手数料よりもユーザー獲得が先ですし、B2Bであれば時期尚早のスケールよりもプロダクトのPMFポイントを探し当てるまでの仮説検証を繰り返す、などの考え方です。
実はスタートアップのPRも同じ考え方が必要になります。PLベースでデイリーやマンスリーの結果、つまり掲載数や広告換算などを追いかけると、当然ですが創業1年や2年の企業に話題が続くはずがありません。結果的に足元ばかりみた計画になり、中長期にこの企業が「誰と関係を作ってどう動いて欲しいか」という視点がすっぽり抜け落ちることにつながります。
ではBS的な視点でPRを見るとはどういうことでしょうか。
PR(パブリックリレーションズ)は関係値づくりの活動です。そして人や企業とつながるためには「情報=コンテンツ」が必要になります。そしてその結果としての「行動」が生まれなければなりません。このコンテンツと結果としての行動を積み上げる活動がしっかりとできていれば、実は大きな影響力のあるメディアも、自然と向こうからやってきてくれるようになります。
もう少し詳しく掘り下げます。
コンテンツ力を高める

人や企業に動いてもらうためのツール、それがコンテンツです。これには次のようなものがあります。
- コーポレートサイト
- プロダクト(追加)
- プレス向けリリース
- オウンドコンテンツ
- イベント
- 企業紹介スライド
私が取材する中、最近増えてきているのが「プロダクトがない」スタートアップです。企業は社会に対して製品やサービスを通じて社会貢献をする役割を担うわけですが、それが「ない」状態です。
そういう場合、著しく情報量が少ないのがコーポレートサイトです。この状態でプレス向けのリリースに格好のよい文言が並んでいても残念ながら説得力はありません。
以前も書きましたが、スタートアップPRでやるべきことは「説明コストを下げること」です。なぜやるのか、なぜ自分なのか、なぜ誰もやっていないのか。ましてや複雑なテクノロジーやビジネススキームを使うわけです。ここが論点整理できてないと関係が作れません。
このコンテンツを積み上げること、これこそがスタートアップPRの最初の仕事だと思っています。決して何もない状態でメディアリレーションズに力を入れるべきではありません。そしてコンテンツを作る上で留意したいのが「行動」になります。
補足:「プロダクトで語る」という重要なタグラインを忘れておりました。美辞麗句が並ぶプレスリリースも、製品がそれを語っていなければほぼ意味がないです。補足終わり。
全員PRで結果を作る
コーポレートサイトの事例紹介でも、社員インタビューでもなんでも結構です。コンテンツを作る際は必ず「誰に(社会・パブリック)」対して「何をして欲しいのか(行動)」を考えるべきです。そしてその結果としての行動をプールできる場所を用意するとPR活動が見える化できます。
例えば採用を目的としたPR活動を考えたとします。ここでまず動いて欲しいのはもちろん「候補者」なんですが「社員・チーム」をパブリックのひとつに入れるのも重要なポイントです。
- 社員インタビューで社内の雰囲気を候補者に伝える
- チームには仲間になる候補を一緒に見つけてもらう
- 勉強会などを開催して具体的に参加してもらう
こういう短い、行動が分かるスクリプトをいくつも作るといいでしょう。あとはチームで一緒になってコンテンツを作り、シェア(ソーシャルでも口コミでもなんでも)し、候補になる人たちの顔が分かるリストを作成するのです。
スタートアップPR におけるKPIの考え方
広報やPRの活動はどうしても「広報/PRチームのもの」と考えがちですが、スタートアップのようにまだ人数が少ない間は、あくまでその企画や戦略を考える役割に集中し、実際に行動を生み出す活動は全員でやればいいと思います。
なので、例えばですが、こういった施策の数はひとつのKPIに入ってくると思います。また、具体的に生み出したコンテンツの数やチームでPRに参加してくれた人たちの数、外部(メディアも含めて)起こした行動の数、こういったものが再現性のある指標として設定可能です。
経営者はそれらの指数に対して結果となる採用や営業活動への説明コスト削減効果、こういうものを紐づけてパフォーマンスを測るのも大切ですが、それよりもその積み上げが可能になる文化を作るまで、継続して投資し続ける姿勢も大切です。
私は企業のPR力は「コンテンツ力+シェア(全員PR)力」で測定できる時代がやってくると思っています。特に創業期のスタートアップがこれを徹底すれば、PRは企業にとってあらゆる説明コストを削減してくれる大きな力(資産)になるはずです。
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