台湾最大のスタートアップ・カンファレンス「InnoVEX」が開幕、AIやロボティクスなどを中心に世界から467チームが参加

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本稿は、InnoVEX 2019 の取材の一部。

台北では今週、台湾最大のスタートアップ・カンファレンスである「InnoVEX」が開催されている。アジアを代表するテクノロジー見本市「Computex」に併催される形で、2016年に始まったこのイベントも今年で4回目を迎える。今年は世界24カ国から467のスタートアップが参加しており、前年比で参加スタートアップ数は20%増。このうち、約4割が台湾外からのスタートアップだ。各国政府のスタートアップ支援組織が出展するパビリオンも、ポーランド、オランダ、イスラエル、フィリピン、韓国を始め12カ国を数え史上最多となった。

韓国と並んで、台湾には政府系のスタートアップ支援組織、政府が民間に委託してスタートアップを支援するイニシアティブが多い。さまざまな省庁が手を広げた結果、その種の活動を手がけたる組織やイニシアティブは48にも上るという。ここには活動がカニバる分野も存在し、税金を財源としている以上は改善の余地もあるのだが、今年は特に、総統選挙を控える台湾では、国や自治体政府がスタートアップ支援に余念が無いようだ。

選挙戦を意識してか、InnoVEX の会場には Foxconn(鴻海/富士康)会長の Terry Gou(郭台銘)氏も訪れていた。

そんなこともあってか、今年の InnoVEX は会場入口を入ると、企業、国政府、自治体政府が牽引するアクセラレータやインキュベータのパビリオンのオンパレード。もちろん、これらパビリオンの中に、各アクセラレータやインキュベータが支援するスタートアップがブースを構える構成となっているのだが、昨年と比べてみても、観覧者の視点からはアクセラレータやインキュベータの存在が目立つように思えた。

今年の InnoVEX は AI や IoT など7つの分野を主軸テーマに設定しているが、それに呼応して、台湾・新竹にある清華大学が中心となって開設されたアクセラレータ「StarFab」は、「TAIRA(Taiwan AI & Robotics Accelerator) 」という新しいプログラムを発表した。TAIRA には、THE BRIDGE のメディアパートナーである e27、日中台でのスタートアップ投資に積極的な Infinity Venture Partners、昨年、約25億円規模の1号ファンドをクロージングしたシンガポール拠点のデータドリブン系特化ファンド TNB Aura などが参加する。AI やロボティクス分野で、台湾スタートアップの東南アジア・日本展開を支援するようだ。

InnoVEX のハイライトであるピッチ決勝は31日に開催されるので、評価の高い台湾を代表する新星スタートアップの紹介は、そちらに委ねることにしたい(19カ国から143チームがエントリ、うち31チームが予選を通過)。今日は会場で見かけたスタートアップブースの中から、面白そうなサービスやプロダクトをいくつか紹介してみる。

Poop Out(台湾)

これは AI でも IoT でもないのだが、犬のウンコを3秒で片付けるというプロダクト「Poop Out」。透明なラップと水分を透過させない紙に排泄物を巻き込むことで、3秒間で掃除ができるという触れ込みだ。いささか巻き取る部分のサイズが大きいところと、処理に使う消耗品がエコではない感が否めない。だが、犬に限らず、動物に留守番してもらわなければいけない場合などに遠隔モニタリング系のアプリと合わせて、この種の仕組みは活躍できる機会があるかもしれない。

Ourhub Europe(オランダ)

どの国のスタートアップにとっても海外展開はハードルが高いが、その困難の一つは、新しい市場で認知度を高める努力が必要なことと、それに必要なコストにある。Ourhub はアジアのスタートアップやブランドを、ヨーロッパのインフルエンサーにつなぎ込めるプラットフォームだ。アジア側からプロダクトを提示してインフルエンサーを募り、そのインフルエンサーの努力によって売れた実績ベースで手数料が徴収される。B2C に強いと考えられるが、B2B プロダクトのインサイドセールスにも応用できるだろう。

Hackuna(フィリピン)

Hackuna は、WiFi 上でハッカーをトラッキングできるアプリ。自分の端末がハッキングされる前に、ハッカー側の情報をハックしようというツワモノだ。ハッカーの IP アドレス、MAC アドレス、居場所、利用している端末のブランドなどが特定可能。ハッカー側が自身もハックされる可能性が高まるため、一定の抑止効果が期待できるという。コワーキングスペースやカフェなど、公衆環境で WiFi を使う機会が増えている昨今では、この種のサービスの需要は高い。

AI とセンサーデバイスの融合の具体的事例を説明する DT42 のプロジェクトマネージャー Kevin Su 氏。DT42 は AIoT(AI + IoT)で台湾を代表するスタートアップだ。

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