中国のソフトウェア企業 Kingsoft(金山軟件)は5月8日、中国で新設されるハイテク新興企業向け市場への IPO を申請した。
中国における Microsoft のライバル企業である同社は、目論見書によると、発行済株式の21.91%に相当する1億100万株で20億5,000万人民元(約327億円)を調達する計画である。
調達した資金は、Microsoft Office と互換性があり、同社が無償で提供する WPS Office のアップグレードに使われる。また、人工知能の基礎研究やクラウドベースのオフィスサービスの研究開発にも使われるという。
WPS Office は中国の政府関係団体で幅広く使用されている。同社によると、中国外交部をはじめとする70以上の中央省庁や、地方自治体の3分の2以上が WPS Office の有料版ユーザであるという。中国工商銀行(ICBC)や State Grid(国家電網) といった国有企業も利用顧客として名を連ねている。
さらに、中国の一部のインターネット大手企業も顧客に含まれている。IPO 申請の数字によると、Alibaba(阿里巴巴)が最大の得意先で、2018年にはサブスクリプション料金として1億5,700万人民元(約25.1億円)を支払っている。これは Kingsoft の総収入の13.9%に相当する。5番目に支払額が大きいのが Tencent(騰訊)で、2018年にサブスクリプション料金として2,050万人民元(約3億2,700万円)を支払っている。
Kingsoft によると、2018年の売上高は11億3,000万人民元(約180.3億円)で、前年の7億5,300万人民元(約120.2億円)から50%の増加となっている。2018年の純利益は対前年比45%アップの3億1,100万人民元(約49.6億円)で、売上総利益は86.7%となっている。同社は PC とモバイルデバイスを使用する中国ユーザ向けに、広告付き無料版を提供している。無料版と有料版を合わせた月間アクティブユーザ数は2018年12月時点で3億1,000万人を超えたという。
同社は申請の際に次のように述べている。
中国では、特に政府関連業務や軍事目的、金融機関で使用される情報システムのセキュリティに対する需要が高まっています。国内のソフトウェアプロバイダーは有利な立場にあり、中国市場でのシェアを拡大しています。
Qiu Bojun(求伯君)氏によって1988年に設立された Kingsoft は、中国で最も早く設立されたソフトウェア企業の1つである。現在、12.0%の株式を所有している Lei Jun(雷軍)氏が同社の経営権を握っている。北京に拠点を置く同社に Lei 氏がエンジニアとして入社したのは1992年のことである。2010年4月にスマートフォン企業 Xiaomi(小米)を設立した翌年の2011年には、Kingsoft の取締役会会長に就任している。
Kingsoft のレポートによると、中国のオフィスソフトウェア市場における同社のシェアは42.8%だが、世界の売上収益という点で Microsoft に遅れをとっている。Microsoft の2018年における生産性・ビジネスプロセス分野の収益は97億7,000万米ドルだった。Microsoft の年次レポートによると、有料版 Office 365分野の収益は前年から24億米ドル増加し、消費者部門では前年から3億8,200万米ドル増加している。
Microsoft によると、2018年における Office 365の有料版利用者数は月当たり1億3,500万人以上にのぼるという。一方、Kingsoft によると、同時期に同社のソフトウェアを利用した企業ユーザは2億8,000万人になるという。
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