透明性のないスタートアップは大きくなれない #スタートアップPR

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2019.5.10

先日、グローバルで躍進が続く語学プラットフォームのLang-8がサービスのグロースや採用に関する情報を開示していました。SmartHRやミラティブ同様、Speaker Deckでの公開です。LAPRAS(旧Scouty)さんのブログでも紹介されていますが、透明性高く社内の情報を共有する事例がぽつぽつと増えてきています。

短期的な目的は採用なんですが、もう少し大きな視点で見ると、この「透明性」というキーワードが企業としての組織・カルチャーづくりの考え方、今後の企業成長を占う上で重要なポイントになるように思いましたので少し考察残しておきます。

  • メルカリ前後で変わったコーポレートPRの考え方
  • 社員をリスペクトしない創業者は情報格差を悪用する
  • 何を公開すべきか

メルカリ前後で目につくようになった「コーポレート」

ここ1カ月ほど、「スタートアップPR」というテーマで勉強会をしておりまして、私もこちらに資料を公開しております。で、スタートアップのパブリックリレーションズ活動を振り返ると、一つの小さな転換点に気がつきました。それがメルカリ前後のコーポレートPRの考え方です。

startuppr_001.png

2010年以降、国内でもアクセラレーションプログラムが開始され、株の持ち方やサービスグロースなど、さまざまな企業成長に関する科学が進み、生存確率、成長確率は格段に上がったように思います。一方でPRについては多くの方が「プロダクトの宣伝(パブリシティ)」が当然と考えている状況でした。いわゆる「サービス出ましたよリリース」です。

しかしメルカリは少し異なるPR戦略でした。ダウンロード数や流通総額を定期的に公開し、2年目からは社内の福利厚生など「組織に入ってくる人」向けの情報公開を進めます。思えばこれは極めてIR的な活動ですし、元々ミクシィでCFO経験のあった小泉文明さんが入って以降、こういうPRスタイルになったことからもその影響は大きかったのだと思います。

例えば彼らのコーポレート戦略で特徴的なアイデアに「バリューの公表」というものがあります。通常、企業としてのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を公表する場合、ミッションやビジョンを第一に宣伝することが多いです。しかし、彼らは(結果的に、かもしれませんが)社内の行動規範である「バリュー」を全面にすることで、社会に対し「メルカリはこういう行動で仕事をしているんだ」という約束をしたのです。結果、リファラルで多くの優秀な人材がメルカリに流れ込むことになりました。

情報格差を悪用するスタートアップに優秀な人がくるわけない

black and white business chart computer
Photo by Lorenzo on Pexels.com

透明性のないスタートアップになぜ優秀な人がこないのか、もしくはすぐに辞めるのか。

これはスタートアップ特有の資本構成にあると思います。当たり前ですが、創業者は株式を大量に持っていて企業価値を上げることによる恩恵を受けやすい位置にいます。スタートアップに関する情報が少なかった頃、ストックオプションについての知識もそこまでなく、上場ではなく創業者が企業売却を選択したためにSOが行使できず、損をしたなどという話がありました。

現在は違います。「ストックオプション M&A」で検索すればたちどころに情報は出てきますし、買取なのか放棄して別の代替のインセンティブをもらうのか、いくつものオプションがある上、こういった経験を経た人に相談することもできます。少し努力すれば嘘がつけない状況があるのです。

先日とある起業家の方にこの話をしたところ「優秀な経営者は自分よりも優秀な人に参加してもらいます。情報格差を悪用する人はそもそも優秀な人とみなしていないんでしょうね」とお話されててさすがだなと。取材したグロービス・キャピタル・パートナーズでのインタビューでも同様のことを話されています。

「良いことも悪いことも全部言う。入ってから大混乱の方が問題(今野氏)」と、スタートアップ採用の難しさを垣間見せつつ、ベンチャーキャピタルが企業の透明性を担保する役割を担っているという話が興味深かった。(引用:GCPが360億円ユニコーンファンド、最大50億円出資も可能ーー今野、高宮 両氏に聞く「連続起業家の再現性」について

公開の範囲

こうやって考えると透明性のない企業、特に創業者との利益格差が大きいスタートアップに優秀な人が集まらない、すぐに離職するのは至極当然と思えます。では、どの辺りまで情報を開示すればいいのでしょうか。キーはプロダクトです。

startuppr_002.png
Lang-8が公開しているHiNativeのグロース

プロダクトの成長を示す数字はC向けであればダウンロード数だったり流通総額があります。B向けであれば顧客数や場合によって年間売上のような数字も必要でしょう。また、ビジネスモデルや株主構成といった企業の資本に関する情報もできるだけ透明性を高めた方がいいでしょう。その企業に株主として、メンバーとして参加する人たちが納得できる情報を提供し、具体的に行動に移してもらわなければ意味がありません。

また、いつから公開すべきかというタイミングも、やはり市場にフィットして確実に「勝てる」という状況下で実施すべきと思います。プロダクトは踏めば勝てる、その傍らでコーポレートを強化して次に備える、という時期です。

逆に公開しない方がよい数字もあります。どうしても人間は本能的に感情の生き物なので、その情報を得ることで無駄な軋轢や噂を生じさせる情報です。特に報酬については扱いが難しいですが、SmartHRさんのようにレンジとして開示することで納得感のある合意形成ができるのではないでしょうか。

透明性のないスタートアップは大きくなれない

安定した企業と異なり、振れ幅の大きい現場がスタートアップです。本当にユニコーンを目指しているのであれば上場は本当に通過点でしかなく、そのタイミングであらゆる情報が開示されます。なのに情報を出さない。それはプロダクトに嘘があるか、実は創業者が自己利益に走っているとみなされてもおかしくありません。

そのスタートアップが実はオーナー中心の中小企業を目指しているかどうか、それは情報の透明性によってわかる時代に入ったと思います。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------