産業用全自動ドローンシステム開発のシンガポールH3 Dynamics、未来創生ファンドのリードで1,600万米ドルのシリーズBを8月にクローズへ

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Image credit: H3 Dynamics

遠隔セキュリティや産業資産検査用ドローンの運用を自動化するスタートアップ H3 Dynamics は、既存投資家である未来創生ファンド(トヨタ自動車、三井住友銀行、スパークス・アセット・マネジメントが支援)がリードし進行中の1,600万米ドルのシリーズ B 資金調達ラウンドをクローズするプロセスに入っていると、グループ設立者兼 CEO の Taras Wankewycz 氏が e27に語った。

最初のクローズの一部としてすでに総額600万米ドルが確保されており、1,000万米ドルの最終クローズが現在進行中だ。

Capital Management Group(セイシェル)や ACA Investments(シンガポール)を含む既存のシリーズ A 投資家もこのラウンドに参加している。

同氏はこう述べた。

世界的な多国籍コーポレート VC ならびにシンガポール、ヨーロッパ、シリコンバレーの VC 企業と共に、デューディリジェンスを進めています。8月末までにシリーズ B ラウンドがクローズするのではないかと思っています。そしてこれが弊社にとって最後のプライベートラウンドになります。

H3 Dynamics は2015年に Wankewycz 氏によって設立され、後に Shaun Koo 氏(CTO)と Cher Chuan Lee 氏(エンジニアリング部門 VP)が参加した。同社はソフトウェアプラットフォームと多目的ハードウェアプラットフォームの両方を開発しており、複雑、危険、もしくは遠隔のデータ収集とデータ処理の全サイクルを、ロボットやドローン、AI(機械学習)を用いてクラウド上で自動化できるようにしている。

同社のロボティクスハードウェアプラットフォームは、同じく同社のソフトウェアプラットフォームと協働し、クローズドループを形成するよう設計されている。H3 Dynamics はドローンを作らず、代わりに既存のドローンを自動化し、また商用ではない専門的なドローンメーカーとパートナーシップを結び、特定のソリューションを提供できるようにしている。

主に提供している製品は2つ、H3 Zoom というデジタルなマイクロサービスプラットフォームと、DBX(DRONEBOX)という現場に展開可能なテレロボティクスである。この2つはそれぞれがお互いに協働するよう設計されており、同社はこれを産業用ドローンサービスの未来として見ている。

H3 Zoom は機械学習と組み込まれた検査ワークフローを用いたオンラインのプラットフォームであり、スキャンされた画像データを産業施設や商業施設に合わせた検査レポートに変換する。このプロセスは全て自動化されている。H3 Zoom は独自の機械学習エンジンを用いて識別および認定を行い、検査対象構造物の 3D モデルや 2D 図面から表面欠陥の量を図示する。構造物は建物や船、あるいは太陽光発電所といったものが例に挙げられる。現在の産業界で使われている紙の報告書に相当する健康診断レポートが自動で生成され、世界中のどこからでも運営者や契約者はダウンロードすることができる利便性がある。同社によると、ブラジルにおける最初の建築物スキャンテストでは、このシステムは数分で1,400ページの検査レポートを作成した。

パイロットのいない未来を予期し、同社はドローン用のテレロボティクスな基地局である DBX も作っている。ここでは遠く離れた人が住んでいない場所にある商業資産用の自動スキャニングソリューションを提供しており、またクライアントの所在地用には敏感な監視やセキュリティのソリューションも提供している。

Wankewycz 氏は H3 Dynamics のチャンスは世界的なものであり、商業用ドローンサービス業界全体にわたるものであるとしている。シンガポールは不動産、海事、石油やガスといった分野で直近のチャンスがある参照市場だ。同氏が見るところでは、現地の外国人労働者削減目標によるギャップ、ならびに労働者の安全や生産性目標を満たすために、すでにロボティクス、自動化、AIに対する大きなニーズがある。

Wankewycz 氏は次のように加えた。

シンガポールには弊社が最初の商業段階で成功するための、全ての材料があります。弊社の核心技術の青写真は、地元の使用例からシンガポールにはない他のタイプの大規模なインフラ、例えば大きな水力発電のダムや大規模太陽光発電施設へと、簡単に変換することができます。シンガポール外における弊社ソリューションのさらなる展開を提唱しているのです。

すでに不動産分野において高層ビルの外観検査に注力したマイクロサービスでトラクションを得ており、これは予定されている多くのサービスのモデルとなった。同社はインフラ検査業界全体を1つのプラットフォームで受け持ち、それをパイロット補助のソリューションや DBX のような自動化された無人パイロットシステムを通じて展開したいという志を持っている。

その他の将来的な計画に関して、Wankewycz 氏はチームを成長させ、収益や新製品をスケールアップさせるつもりであると述べた。

弊社は常に世界クラスの基準を築くことができるように、世界中のそれぞれの産業界におけるバーティカル市場のリーダーとパートナーになるつもりです。また弊社のデータ収集エコシステムは、ドローンの活用から第三者による他の形態のロボティクスへとデータの移行も行い、より多くのユースケースをカバーしていきます。

先月、H3 Dynamics は Echelon Asia Summit 2019で優勝し、Enterprise SG から5万シンガポールドルの奨励金を得た。

2017年2月には、シリーズ A ラウンドで ACA Partners と Capital Management Group から700万米ドルを調達している。

【via e27】 @E27co

【原文】

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