医療データを統合・管理するAbacus Insightが1270万ドルの資金調達

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ピックアップ:Healthcare data integration startup Abacus Insights lands $12.7M Series A

ニュースサマリー:医療データの管理・共有における課題解決を目指すAbacus Insightは5月30日、CRVをリードインベスターとしたシリーズAラウンドで1270万ドルを調達した。

電子カルテや会計ソフトなど、医療現場のIT化は着実に進んでいるが、データという観点で見たとき、サイロ化による業界全体での情報の非対称性が問題になる。ここでいう医療におけるサイロ化は、各医療機関やその他機関ごとにシステムやデータ管理が独立して存在している状況を指し示す。

Abacus Insightは、健康保険会社向けに医師や薬剤師、その他医療従事者の間でやりとりされる患者の医療データを共有するプラットフォームを開発することを目指している。保険会社と医療機関は共通の病歴データにリアルタイムでアクセスすることができ、より適切な医療行為を行うことができる。

同社は現在40人の従業員がおり、今回調達した資金で従業員数を2倍にし、開発力の増強を図る。

話題のポイント:医療データのサイロ化、つまり孤立状態が起こってしまう背景には、センシティブな個人情報の扱いがあります。もし、ネットワークのどこか一つの機関でもセキュリティーが脆弱でやりとりの改ざんが起こってしまった場合、情報流出等の大きな問題に繋がりかねないからです。

こうしたセキュリティーに対する解決策として注目されているのがブロックチェーンです。ブロックチェーンは分散的に改ざん不可能な取引記録を残すことができるという特徴から、医師による記録である電子カルテを始め、医療に関わるやりとりの情報を安全に管理できます。

秘匿な情報の管理には向きませんが、閲覧権限を厳密にコントロールできるので、複数の主体の間で医療情報のやりとりを行う基盤として期待されています。まだ実際にブロックチェーンを医療データに活用した例は多くありませんが、電子カルテを積極的に導入し、国民の健康情報を一元管理しているエストニアでは、セキュリティーの観点からブロックチェーンでの管理が導入・運用されています。

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参照:福岡エリアにおける医療情報連携に関する実証実験の完了

エストニアの事例は極めて先進的ですが、地域限定もしくは関わる主体を限定する形でデータの共有基盤やブロックチェーンを導入することも可能です。

実際に日本でも2017年に福岡県の飯塚病院を中心とする実証実験が行われています。ここではブロックチェーンと情報連携基盤を組み合わせる形で、効率化や利便性の向上を目指していました。

医療機関に留まらず、保険会社、薬剤師、介護施設など複数の主体間でデータのやりとりは発生していきます。また今後はIoTデバイスなどの普及で様々な生体情報が医療情報として取得され、分析や管理をすることも増えるのではないでしょうか。(執筆:矢部立也

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