
ニュースサマリー:6月12日、ブロックチェーンを活用し分散的なアイデンティティ及び信用スコアネットワークの構築を目指す「Spring Labs」がシリーズAラウンドで2300万ドルを調達した。同社の調達は今回が二度目となり、前回のシードラウンドと合わせて計3800万ドルを調達している。
<参考記事>
Spring Labs、シードで1,475万米ドルを調達——ブロックチェーンの活用で、金融機関に身元や信用情報の安全な相互交換ネットワークを提供
プロダクトの基本的な設計としては、Spring Labsプロトコルが個人や金融機関(銀行やレンディング・スタートアップ)にとってのアイデンティティ・信用データの参照先になるというものだ。その際、参照されるデータは従来のような中央集権機関ではなく、プロトコルとユーザー自身によってコントロールされている。
このようなデータの所有権モデルは、漏洩・流出の危険が低く、セキュリティ及びプライバシー保護の観点で非常に有効だ。Spring Labsの場合はそのデータ・アーキテクチャをブロックチェーン技術を用いて実現するという。(ただし、詳細な設計は未詳)
話題のポイント:Spring Labsは、レンディング・スタートアップである「Avant」が、既存の消費者信用のデータ管理・運用方法の在り方に非効率性を感じ、スピンアウトとして開始したプロジェクトです。
なぜSpring Labsが必要なのか。その理由として、データ・セキュリティ及びデータ・プライバシーに関する事例を1つ紹介します。それは米国大手信用情報機関であるEquifaxのハッキング事件です。これによる米国民1.4億人分の信用情報が漏洩するという大きな被害が発生しました。
事件の具体的な解説は割愛しますが、ビックデータ時代において、ユーザーが自分自身の大事なデータを中央集権的な第三者機関に預けるということが、いかにリスクの高い行為かを知るには最適な実例です。

従来ユーザーが銀行などで信用調査をされる場合、銀行はEquifaxのような情報機関に保存されたデータを参照するというモデルが一般的でした。一方で、Spring Labsは、プロトコル内で個人が自らデータを管理し、金融機関やレンディングサービスを受ける度に、ID検証技術を介し、ユーザーが自身のデータを最小限提示します。こうすることで、単一機関によるデータ管理・漏洩リスクを最小限に抑えることが可能になります。

同社のサービスは、まだプロダクトが始動しているわけもなく、またブロックチェーン・プロジェクト特有のプロジェクト情報を記述したWhitepaperも公開されていないことが一つの懸念点ではあります。
ですがプロジェクトのコンセプトとビジネスモデルに、上述したいくつかのファンドが興味を示しているということは、先ほど説明したようなデータに関する課題感が彼らに共有されており、かつプロジェクトチームへの信頼性が非常に高いということを表しているのではないでしょうか。
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