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インドの誰かがオンラインでスニーカーを買うと、多くの場合、Delhivery の T シャツを着た人が届けてくれる。
今年16億米ドルという評価を得てユニコーン企業の仲間入りを果たしたこのスタートアップは、単一の品物を販売しているのではない。その代わりに、ハイテクな流通ネットワークとインド全域に広がる配送サービスを構築、運営している。
小包や荷物の4分の1は、弊社に依頼されます。
Delhivery のチーフビジネスオフィサー(CBO)である Sandeep Barasia 氏は、オンラインショッピング部門についてこう話す。同社によれば、配達クルーは毎日5億キロメートルの距離をカバーしており、これは月と地球を700回往復するのに等しい。
統計的な数字をもう少し見てみよう。
- インド全域の2,000都市をカバー
- 33か所のフルフィルメント倉庫(所有ではなくリースで)
- 4,000台のトラックが毎日稼働
- 1万2,000台の配達用オートバイ
- 2万5,000人の事務および輸送スタッフ
ソフトバンクの出資
Barasia 氏が強調するところでは、ユニコーン企業の地位によって会社とその展望が変わったわけではないという。
同氏は Tech in Asia に次のように語っている。
シャンパンのボトルを開けるようなことでもなかったと思っています。当社では評価額を気にしていません。私は、評価額は目標でもなく、解決したいことでもないと考えています。
最新の資金調達となる4億1,300万米ドルは、1,000億米ドルを運用するソフトバンク・ビジョン・ファンドがリードしており、日本の大企業がインドのスタートアップの25%の株式を取得した形となる。
2018年3月時点での最新データによれば、Delhivery の公表している収益は1億5,330万米ドルであり、損失は9,870万米ドルである。
インド有数のショッピング用アプリとして Amazon との結びつきも強い Flipkart は、同社の顧客の中でも特に有名な企業の1つだ。
調査会社 eMarketer が Tech in Asia に提供した数値を見ると、2011年にローンチしたDelhivery は、インドの e コマース市場が急激に拡大している(2011年の消費額である12億7,000万米ドルから2019年末の同予測460億5,000万米ドルに成長)ことを考えれば、タイミング良く起業したことを証明してきている。
Delhivery の収益の大部分をオンラインショッピングの荷物が占めているが、その比率は変化していると Barasia 氏は説明する。2018年度には90%だったが、今年度は75~80%になる予定であり、2023年か2024年には他の収益源と同等になる可能性もある。
Delhivery の e コマース配達での売り上げは今だ増え続けているため、Barasia 氏はこの変化を歓迎しているという。トラックの貸切輸送を行ったり倉庫での保管を請け負ったりするなど他業種の企業顧客との取引が増えており、会社が多様化しているからだ。同社は最近、ニッチ分野のライバル企業の買収による輸送戦略を固めた。
このような変化の中で、Bain & Co.の元アナリストである Barasia 氏は、Delhivery は「単一の顧客には大きく依存していない」と言う。
グルガーオンに拠点を置く Delhivery は、独自の物流部門もある Flipkart の他にも、インド国内のほぼすべてのオンラインショッピングサイトを含む5,000ブランドの配達に携わっている。
Barasia 氏は、インドのオンラインショッピングを制するのがどの企業であっても、物流と配達を外注する傾向は今後も上昇し続けると考えている。
どの企業も、すべてを自分たちだけで行うことはできません。なぜならサードパーティによる物流が大きな価値をもたらすからです。
また、この外注によりオンラインショップは、新しい製品カテゴリーを加えたり、特別セールの日の膨大な注文をさばいたりする柔軟性を得られるという。
彼は言葉巧みに語った。
コーヒーカップをデリーからバンガロールに配達することで得られるアドバンテージは何もありません。Amazon のネットワークにも、Flipkart のネットワークにもありません。それに、注文者は輸送が外注されていることに気づきません。気にするのは、コーヒーカップが割れることなく必要な時までに届くかどうか、そして配達人が代金引換払いや商品受渡し時のカード決済、あるいは携帯電話での支払いに対応できるかどうか、といったことだけです。
そして、次のように続けた。
当社ならいずれも可能です。多くの場合、注文者が家にいることすらありません。注文者のために誰かが受け取ります。ガードマンかもしれませんし、近所の人か、オフィスの受付ということもあります。注文者は配達人が何の T シャツを着ていても気にしません。Flipkart の T シャツでも、Amazon の T シャツでも、Delhivery の T シャツでも。
サプライチェーンにおける、この有能ながらほとんど目につかない企業に対する好意的な意見は、Ecom Express や Future Supply Chain Solutions といったインドの輸送業界における一握りのライバルたちの後押しにもなっている。ただし、これは書く必要のないことかもしれないが、いずれも Delhivery という競争相手ほど投資家からの出資を獲得していない。Flipkart のスピンオフである Ekart も、同じく競争に加わっている。
拡大への船出
インドのほぼ全域をカバーすると同時に、Delhivery は国境をまたいだショッピングのブームと運送業への視点から、海外ネットワークを少しずつ広げている。同社はこの展開を、独自のリソースを構築するのではなく、パートナー企業とともに行っている。
ネットワークの国外最大エリアは中国だ。インドではますます多くのオンラインシッパーが Alibaba のマーケットプレイスなどのショップを試してみるようになったためだ。Delhivery には中国全域にファーストワンマイル輸送を行うパートナー企業があり、このパートナー企業が中国の販売元から製品を受け取る。その後、Delhivery の国際サービス部門が税関手続きを行って配送し、インド各地へ運んでいる。
同社は、中国の東のメインハブである上海と南のメインハブである深センに2拠点を立ち上げ、この業務をサポートしている。
インドの商業上のもう1つのホットな地域は、中東、特にドバイだ。
Delhivery の CTO、Kapil Bharati 氏は Tech in Asia に対し、同社は現在、特にスリランカ、バングラデシュ、ネパールを中心とした南アジアでパートナー網拡大の初期のステージにあると話している。
Bharati 氏と彼のチームはこのために、海外の輸送会社と有料で共有するソフトウェアシステムを開発している。このシステムの開発は、Delhivery に2つのものをもたらしている。1つはまったく新しい収益源であり、もう1つは海外の物流パートナーを引き寄せ、統合するための新しい方法だ。
新しく成長しているエリアについて、Barasia 氏は次のように付け加えた。
南アジアはより合理的です。インドから南アジアへ、あるいは逆に南アジアからインドへの通商や e コマースは、最も近くで起こっているためです。
スピードアップを図る
Bharati 氏は2011年に結束した Delhivery の5人の共同設立者の1人である。
設立間もない間はミールデリバリーサービスをビジネスの中心としており、その後、いわゆるラストワンマイル輸送(倉庫から注文者への配送)の市場に参入した。
注力したのは、ラストワンマイル輸送をどのように最適化するか、という点でした。そして合理的な長さの期間、確か6~9か月でしたが、デリー首都圏内に絞りました。(Bharati 氏)
その期間中、少数のスタッフが配送と e コマースのいくつかの問題(特に、代金引換払いで注文者が支払った現金がベンダーに届くまでに長い時間がかかるという点)の解決に取り組み始めた。Bharati 氏によれば、当時は古い配達ネットワークを使っており、45日もかかったという。
送金サイクルを短縮する必要がありました。(Bharati 氏)
そのため、Delhivery は第三者預託システムを使用することにし、販売者が24時間から数日の間に支払いを受け取れるようにした。
さらに同社のチームは、荷物の場所を絶えず把握したり、注文者が荷物を受け取った時点を明確にするために、多くのデータを必要とした。Bharati 氏は、データがリアルタイムか、リアルタイムに近い状態で得られるようにしたという。新しいシステムを利用して、Delhivery はラストワンマイル輸送を他の大都市にも広げていった。この中にはチェンナイやムンバイも含まれる。
その後、同社はエンドツーエンドで配達を行う決定をし、全国規模へ拡大した。都市から都市へ、今日の物流ネットワークを築く道筋をたどり始めた。
Barasia 氏は2015年に、事業の収益面に力を注ぐべく Delhivery に引き抜かれた。一部の共同設立者とはすでに Bain & Co.で顔見知りとなっていた。Barasia 氏は同社に15年務め、インドでの経営コンサルタント業務を整えた。初めはマネージングディレクターの肩書きを得ていたが、後に現在の CBO 職に変わった。
Barasia 氏は次のように語った。
会社設立当初、共同設立者の誰にも流通の経験はありませんでした。つまり、第一原則の視点でビジネスを見ることができたのです。聖域などない、という視点です。当社の共同設立者たちは、ゼロからこのネットワークを作り上げたのです。
彼はこう付け加えた。
私たちは、自分たちの与える影響が、取り組んでいる市場自体のためになるべきだと考えていました。誰もが従う慣習通りのことをするよりは。
【via Tech in Asia】 @techinasia
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