ピザを〝焼きながらお届け〟してくれるZume、フードデリバリに使われるプラスチック容器をなくすべくPivot Packagingを買収

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オープンが搭載された Zume のトラック
Image Credit: Zume

Zume は、超高効率なオーブンを搭載した Zume Pizza デリバリトラックで焼き立てのピザを届ける企業だ。同社は今回 Pivot Packaging を買収し、フードデリバリビジネスからプラスチック容器をなくしてコムポスト化可能包装に置き換えるべく動き出した。

Zume によると、今回の買収によって、プラスチックに変わる費用対効果の高い容器を提案する企業に生まれ変わるという。Pizza Pod を共同開発した Pivot Packaging を買収したことに加え、南カリフォルニアに7万平方フィートの工場を立ち上げて、世界規模の食品企業向けに植物由来の容器の製造を目指す。同社は、植物由来の容器の品質がプラスチック容器に劣らないものにしたいと考えている。

Pivot の買収と包装工場の立ち上げによって、Zume は2020年までに10億個のプラスチック容器を、環境に配慮した植物由来の食品・飲料容器に置き換えたいと考えている。

ビジネス上の観点から言えば、プラスチック容器より環境に配慮した容器の方がコストを抑えられるかが重要になってくる。赤字に陥ることなく環境に配慮した企業になることが重要だと同社は語っている。

現在、世界屈指の航空会社や50億米ドル規模のアメリカのフードサービス企業、世界最大規模の食品コングロマリットなどが Zume Packaging を利用している。

国際連合環境計画の報告によると、毎年世界中で3億トンのプラスチックごみが生み出されている。そのうち、リサイクルに回されるのはわずか9%だ。90%以上は埋め立て地や河川に廃棄されるか焼却されており、炭素の排出や有害大気汚染の原因となっている。

さらに悪いことに、Ellen MacArthur Foundation の調査によると、今後20年以内にプラスチックの生産量は2倍になり、2050年までにはほぼ4倍になるという。プラスチック容器やプラスチック袋を利用するフードデリバリが世界中で広まっていることがその一因となっている。UBS の報告によると、2018年の350億米ドルから2030年には3,650億米ドルへと、フードデリバリビジネスの規模は世界中で10倍以上に拡大するという。

Zume の CEO である Alex Garden 氏は声明で次のように語った。

将来的に持続可能なフードビジネスを実現するには、まずは容器から変えていく必要があります。世界屈指の食品企業と提携したのも、生鮮食品やフードデリバリからプラスチック容器や発泡スチロールをなくすという目標を達成するためです。

フードデリバリによってこれまでのフードシステムは根本から覆されました。フードデリバリを利用する顧客は大幅に増えており、より持続可能な世界を実現する必要性も強まっています。これを実現するにあたり、食品包装が重要な位置を占めてきます。食品包装からは重要な消費データだけでなく、材料の供給元である農家から最終処分にいたる、有用な情報を得ることができるのです。

Zume Packaging は、バガス(サトウキビの搾りかす)や竹、小麦、わらなどの有機繊維生産元から出る農業廃棄物を再利用している。生鮮食品やフードデリバリからプラスチック容器と発泡スチロールをなくすという大きな目的のために、Zume は2020年までに食品包装に使われるプラスチックと発泡スチロールのうち10億個を、環境に配慮した容器に置き換えることを最初の目標としている。

Zume では、ピザを焼きながら届けてくれる。
Imzge credit: Zume

容器に農業廃棄物を使うことで、水とエネルギーの消費が大幅に抑えられ、プラスチックと発泡スチロールに比べて容器の生産時と廃棄時に排出される炭素も削減できる。Zume のコムポスト化可能包装は、使用後は有機物質に分解され、土壌や有機物質の再生に使用することができる。Zume の容器は完全に持続可能なリサイクル環境も実現する。栽培された食品が容器の原料になり、それを使って顧客に食品が届けられ、使用後の容器は再度多くの食品を栽培するために使われるのだ。

Zume Packaging の導入前は、コムポスト化可能包装でプラスチックと同等の使い勝手や耐久性を実現することはできなかった。また、生産コストもプラスチックに比べて50%から100%多くかかっていた。Zume Packaging は、最新の製造技術や材料科学を利用することでこうした課題に対処している。同社は独自にさまざまな調合プロセスや成形プロセス、仕上げプロセスを持っている。これらを使って、紙包装よりも生鮮食品の新鮮さや品質を保てる成形可能な繊維を生成している。

また、成形繊維用の柔軟性に優れた新たな生産セル技術によってコスト削減も行っている。成形繊維はさまざまな形の容器にすることができ、従来の生産方法よりも生産量を多くできるうえに、サイクル時間も短縮できる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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