3Dプリンティングプラットフォーム「Carbon」運営、シリーズEラウンドで2億6,000万米ドルを調達——評価額は24億米ドルを突破

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ズラリと並んだプリンタ「Carbon L1」
Image credit: Carbon

デジタルマニュファクチャリングと3D プリンティングの代表格である Carbon が、グロースラウンドで2億6,000万米ドルを調達した。このラウンドは Madrone Capital Partners と Baillie Gifford が共同でリードし、Sequoia Capital、Adidas Ventures、Johnson & Johnson Innovation (JJDC)、Fidelity Management & Research Company、JSR Corporation, Temasek、Arkema も参加した。

カリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とする同社が3億米ドルを上限として資金調達を行おうとしているとする報道が去る4月に流れたが、これが正確であったことが分かった。同社の評価額が17億米ドルであるとされていた2017年の2億米ドルのシリーズ D ラウンドに続いて、この度のラウンドで Carbon の総調達額は6億8,000万米ドルとなった。Pitchbook は今年、Carbon の評価額は25億米ドルになる可能性があると推定していたが、実際に今回のラウンドで同社の評価額は24億米ドルに達した。

Carbon は2013年設立。より多くのクリエイターや企業がデジタルマニュファクチャリングを利用できるようにするため、3D プリンティング技術を開発している数多くのスタートアップの1社だ。同社が「ハードウェア、ソフトウェア、そして材料科学」の交差点と称するところを活動の場としており、光の投影とプログラム可能な樹脂を組み合わせて液体を個体にする「digital light synthesis(デジタルライトによる造形)」技術を専門としている。さらに、従来の射出成形では不可能であった複雑で入り組んだ構造も作ることができ、完成品は丈夫で軽量だと保証している。

Adidas シューズ「Alphaedge 4D」を作成している様子
Image credit: Carbon

Sequoia Capital のパートナー Jim Goetz 氏はこう指摘する。

Carbon は3D プリンティングのスケールという問題を解決しています。彼らは世界初の完全に統合された大量生産用デジタルマニュファクチャリングプラットフォームを提供するというビジョンを本当に実現させようとしていますし、3D プリンティングの世界の形を変えようと突き進んでいます。

市場は準備万端

同社は2017年に、Adidas が同社の技術のおかげで3D プリンティングで作られた靴を大量生産していると発表したことでニュースの見出しを飾り、その製品は昨年リリースされた。Adidas が Carbon の以前のラウンド2回に投資を行ったのはこのためだったのである。非常に戦略的な資金の注入だ。

Carbon と Adidas が共同開発した「Futurecraft 4D」
Image credit: Carbon

その他にも Carbon の技術は多種多様な産業に使用されており、自動車産業もその1つである。最近 Ford は Carbon を使い F-150や Mustang のポリマー部品をデジタルマニュファクチャリングで作った。またアメリカンフットボール用品メーカー Riddell は Carbon を利用し、次世代ヘルメットの保護部品を製造した。

在庫ゼロ

このスピーディな3D プリンティング技術には別の利点もある。製造業者はマスカスタマイゼーションを提供できるようになり、またオンデマンドの在庫で済むのだ。つまり、在庫ゼロの製造業だ。企業は実際にいくつ売れるか分からないままに数百万個の商品を大量生産するのではなく、需要に合わせて生産することができるということである。

Carbon の CEO 兼共同設立者の Joseph DeSimone 博士はこう述べている。

弊社のデジタルライトによる造形を備えた Carbon プラットフォームで、企業はついに旧来のポリマー製造方法の制限から解き放たれ、以前は不可能だった速度と量で次に来るものを作ることができるようになります。

その他のデジタルマニュファクチュアリング界隈では、金属3D プリンティング技術を開発している Desktop Metal が今年1億6,000万米ドルの投資ラウンドをクローズし、産業用3D プリンティング企業 Markforged はさらに8,200万米ドルを獲得した。この数か月間、3D Hubs や Essentium を含む、3Dプリンティングに注力するその他の企業もかなりの額の投資ラウンドで資金を調達した

製造業は世界中で12兆米ドルの産業だとされており、製造過程全般にわたって最適化を求める声は大きい。例えば、Oden Technologies は分析論とビッグデータを使い、廃棄物の少ない工場を作ろうとしている。また Automata は卓上ロボティックアームで工場の自動化を民主化しようと努力している

新たに2億6,000万米ドルを確保した Carbon は、今やアジアやヨーロッパにおける既存および新規の市場でプラットフォームを成長させる良いポジションにつけている。また同社は研究開発への取り組みも加速させる予定だ。その一部には先進開発施設(ADF)の設立も含まれ、予想される成長を支援するための「スケールアップした製造環境」としての役割を果たすことになる。

Walmart 会長であり Madrone Capital Partners の設立者兼ゼネラルパートナーの Greg Penner 氏はこう加えた。

Carbon について感銘を受けている点は、市場と産業の多角化です。自動車やヘルスケア、そして消費財の分野における大規模な製造業者とのパートナーシップを通じて、彼らはデジタルライトによる造形技術で、大量生産における付加製造技術が分野を超えて現実のものとなりつつあると証明しているのです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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