DNX Ventures、3号ファンドに中小機構から40億円を調達——ファンドの大型化で、グロースステージB2B・SaaSスタートアップの支援も加速へ

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DNX Ventures の皆さん
Image credit: DNX Ventures

DNX Ventures は先ごろ、同社が運営を始めた3号ファンドに中小企業基盤整備機構(中小機構)から40億円を調達したことを明らかにした。3号ファンドの組成は2019年2月に発表されており、その際には、2号ファンドの1億7,200万米ドルより大きい規模とのみ伝えられていたが、後日 TechCrunch Japan と日経がそれぞれ、250億円規模300億円超と報じている。

3号ファンドの LP には、明らかになっているだけで、中小機構以外にも、みずほ銀行、東京海上ホールディングス(東証:8766)、JXTG ホールディングス(東証:5020)などが名を連ねているが、中小機構からの出資は3号ファンド全体の15%前後を占めることになり、最終的に最大の LP となる模様だ。これは中小企業成長支援ファンドからの出資によるもので、中小機構は「日本からグローバルな発展を目指し大きく成長を図るベンチャー企業を支援することにより、日本経済の活性化につながるもの」としている。

DNX Ventures のマネージングディレクターの中垣徹二郎氏は THE BRIDGE の取材に対し、同社がフォーカスとする B2B、なかでも SaaS モデルのスタートアップへの投資を安定的に行っていく上で、ファンドの規模が大きくなることは必要不可欠な傾向だろう、と語った。SaaS モデルは、当初は単月の売上は大きくないものの、安定的な売上が確保でき、ビジネスモデルとしては強く、景気変動の影響も受けにくい。ただ、そんな B2B や SaaS モデルのスタートアップに安定的に資金を供給できるファンドは、これまで限られていたのかもしれない。

従来の日本ではファンドのサイズの制約から、スタートアップのステージにかかわらず、ファンドからスタートアップに出資可能な金額にも限りがあり、一定規模以上の資金調達には IPO する以外に方法がなかった。これが結果的に、日本では小規模な IPO につながり、一部投資関係者らからは「日本の IPO は、サイズ的にはアメリカのシリーズ B ラウンド程度」と揶揄されたほどだ。しかし、ファンドのサイズが大きくなることで、ミドル・レイター以降の SaaS スタートアップが成長に必要な資金を VC からの調達で賄えるようになる。成長に時間のかかる B2B の分野において、そういったスタートアップをじっくり支援するため十分な兵糧を持ちたい、と考える VC は増えている。

そんな中、中垣氏によれば、最近、日本のファンドの LP に機関投資家(institutional investor)の存在が目立ちつつあるそうだ。ここでいう機関投資家は、事業会社からの資金注入を指すわけではない。事業会社による出資は、キャピタルゲイン狙いのものよりは、いわゆるオープンイノベーションに代表されるような PMI(post-merger integration)を期待してのものが多い。一方、機関投資家の代表格としては、THE BRIDGE のニュースにも時々登場する、カナダ年金基金の Ontario Teachers’ Pension Plan とか、オンタリオ州職員年金基金とか、あるいは、ファミリーオフィス(財閥など創業家の資産管理会社)などが挙げられるだろう。

機関投資家は常々から、グローバルな視点で投資機会を伺っているところが多い。日本の独立系 VC の元に機関投資家の資金が集まり始めたことについて、日本の市場に対する世界からの評価が高まってきたことの象徴として、中垣氏は好意的に捉えている。一方で、VC には、よりガバナンスの利いたファンド運用が求められるようになるわけで、「(一定のパフォーマンスを上げ続けることで)機関投資家の資金を預かり続けられるかどうかが、今後、VC が評価される上で一つのポイントになるのではないか。そういう点で、日本の VC 業界もターニングポイントを迎えている(中垣氏)」とした。

DNX Ventures が3号ファンド組成を発表後、同ファンドからは研究業界特化型クラウド購買システムの「reprua(リプルア)」運営、建設プロジェクト管理ツール「&ANDPAD(アンドパッド)」運営、クラウド SOP ツール「Teachme Biz」運営、VR クラウドサービス提供のスペースリー、非ディープラーニング系 AI で製造業の検査・検品を効率化するアダコテックなどが出資を受けている。

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