1.5万人が「プロライバー」目指し契約ーーライブ配信「17 Live」に前メタップス執行役員、鄭希氏がCOOとして参加

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17 Media Japan 取締役CEOの小野裕史氏と常務執行役員COOに就任した鄭希氏

ライブ配信アプリ「17 Live(イチナナライブ)」を提供する17 Media Japanは7月8日、経営体制の強化を公表した。メタップス執行役員だった鄭希氏が常務執行役員COO(最高執行責任者)として参画する。既存事業の成長に加え、新規事業開発やグローバル展開を推進する。

鄭氏は東京大学卒業後、三菱商事やリクルートなどでキャリアを重ね、2013年からメタップスに入社。中国事業の立ち上げを担い2016年に常務執行役員に就任した人物。2018年からインフルエンサー事業を手がけていた。

「17 Live」は一般ユーザーやタレントなどがコンテンツをリアルタイム配信し、投げ銭やライブコマースなどで収入を得ることもできるプラットフォーム。台湾でのビジネスが発祥で、グローバルで4000万人が登録している。

本誌では同社日本法人の取締役CEO小野裕史氏と、今回新たに常務執行役員COOに就任した鄭希氏のお二人に国内ビジネスを中心にその状況を聞いた(太字の質問は全て筆者)。

YouTuberなどを皮切りに近年インフルエンサーに注目が集まっている。17 Liveの配信者は稼げているのか

小野:具体的な数字は非公開ですが、上位の方は月間でサラリーマン平均年収クラスになっています。また、こういったプロのライバーを目指す方々で、直接イチナナとライバー契約されている方々が1万5000人いらっしゃいます。ここはほかのライブ配信プラットフォームとの大きな違いで、私たちはプラットフォームでもあり、日本最大のライバープロダクションでもあります。

いわゆる撮影したコンテンツを編集して配信するコンテンツと異なり、ライブ配信はリアルタイム性が特徴になる。このフォーマットでどのような事例が出てきている

小野:17 Liveは、コンテンツのバリエーションが豊富です。例えば有名人から一般の方、10代の中学生から70代のお婆ちゃんまで幅広い方が17 ライバー(ライブ配信者)として、ライブ配信をしています。またその中身も、雑談やトークだけではなく、歌や楽器を演奏したり、ダンスなどのパフォーマンスをしたりと決まったものはありません、これらは、即興性や親近感、双方向の3要素を満たす今までにない全く新しいエンターテインメントだと思っています。

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ライブ配信するライバーさんの例

国内でのライブ配信はYouTubeにFacebook、Instagramなどの大手プラットフォームからMirrativeのような仮想系まで広がってきた。イチナナのポジショニングは

小野:例えば北海道でシンガーソングライターとして活動していた女性が、17 Liveを始めたことで全国ライブツアーをできるまでに成長し、いまではアジアに向けてファン層を拡げつつあるという例があります。また、タレントの南明奈さんのようにTVでも活躍されている芸能人の方や、YouTuberとして活躍されている方が積極的にライブ配信をするなど、無名有名問わず、全ての才能がエンパワーされるプラットフォームとして認知されるようになっています。

売上やマーケットシェアの状況を聞きたい

小野:米国Frost & Sullivan社による、2018年11月時点での日本ライブ配信アプリにおけるマーケットシェア調査結果があるのですが、それによれば売上でライブ配信カテゴリでトップとなっています。また、こちらは私たちのリサーチですが、シェアの割合で約50%を獲得している状況です。

話を経営体制強化に向ける。現在の体制を変更した理由は

小野:2017年6月に日本法人を設立した当時は日本のメンバーは2名だけでしたが、現在は約150名まで増えてきており、まだまだ拡大を続けております。

特に大手芸能事務所やメディア、大手ブランドなど、社外の様々なパートナーとの連携も広がる一方、イチナナはグローバル企業としてアジアやアメリカなどに市場を拡大しており、経営層の強化は欠かせませんでした。

COOとして参加した鄭さんはメタップスでの中国事業立ち上げをされたとお聞きしている。次のキャリアとしてライブエンターテインメントに興味を持った理由は

鄭:世界中の人々に夢を与える事業をしたい、というのが根底にあります。

世の中には、ピカピカのキャリアを持っているエリートや有名人がいつも注目されておりますが、99%の人はそのチャンスがないままです。しかしどんな人でも必ず何か強みを持っていて、そして必ずそれに興味を持ってくれる人、ファンになってくれる人が沢山います。そんな99%の人がファンと仲間を作れるプラットフォームを実現したいんです。

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具体的には

鄭:まず業界全体の規模を大きく育てることからです。イチナナは日本のライブ業界において売上でトップクラスのプラットフォームになっていますが、ライブ先進国に比べ、マーケットの規模自体がまだまだ小さいです。市場としては業界全体の規模が10倍〜100倍まで成長できると考えています。

ライブ配信は基本的にユーザーのボトムアップで発展してきたエンターテインメント・シーンという理解だが、そこから市場規模を格上げするための戦略は

鄭:ライブ配信というのは「媒体」という役割があります。つまり、様々なコンテンツとの組み合わせにより、多様なサービスと価値が生まれるのです。エンターテインメントに引き続き注力しながら、新しい産業とのコラボもこれから創り出したいと考えています。

小野:例えば本社のある台湾では、すでにイチナナが提供するライブ番組がテレビでも同時に生放映され、アプリを通してインタラクティブにユーザーを楽しませるサービスが生まれたりしています。提供するライブコマースでは過去の何倍も売上をあげるショップが生まれたり、ライバーが様々な商品をインフルエンサーとして紹介したりしていますので、日本でも同様の動きを検討していますね。

またイチナナは台湾生まれ、世界9カ国で4000万人以上のユーザーを持つプラットフォームまで成長してきましたが、まだまだ進出できてない地域が多いです。これからの5G時代に向けて、各地域のネット環境や商習慣に従い、より多くの地域にライブ配信サービスを提供していきたいと思います。

最後に。鄭さんはCOOとしてイチナナの現場執行を担うことになった。どのような舵取りを考える

鄭:ビジネスには100%の正解はないと思ってます。特に急成長している新しい産業において、やってみないと分からないことがほとんどです。3カ月かけて検討するより、最小規模で始めてみて、そして進みながら修正していくスピード感が重要です。

また年齢が若いだけではなく、考え方も若いです。ライブ配信はインターネット×コミュニケーションの新しい産業で、日本のマーケット規模はまだまだ小さいです。今までの経験に頼らず、新しいことにどんどんチャレンジしていくことが重要だと考えております。

ありがとうございました。

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