シンガポールのカーシェアリングマーケットプレイス「Tribecar」、資金調達なしで利益を上げつつ成長中

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.7.24

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シンガポールでは、車を所有するのは贅沢だ。俳優のヴィン・ディーゼルに聞いてみるといい。

2013年夏のブロックバスター映画、『ワイルド・スピード EURO MISSION(Fast & Furious 6)』の PR 巡業中、シンガポールの様々な車の価格を当ててみるよう、ある記者が彼に求めた。俳優である彼は、当時の時価を聞いて衝撃を受けた。「プリウスが15万4,000米ドル?」と彼は叫んだ。

シンガポールの車両所有者は、車にかかる基本的な費用のほか、車両を所有し運転するための車両所有権(Certificate of Entitlement)を、何万ドルも支払って購入しないといけない。

Image credit: Tribecar

これは同国政府が国内の車両数を制限する方法の1つで、うまく機能しているようだ。陸上交通庁(Land Transport Authority)によると、自家用車所有数は現在、2010年以来3番目に低い数値となっている。

Tribecar の共同設立者である Adrian Lee 氏は、これをチャンスととらえている。

Tribecar はシンガポールを拠点とするマーケットプレイスで、レンタカー会社の車両と借り手をつなぐ。2016年に設立された同スタートアップは、今では350台にのぼる車両を抱え、シンガポール最大手のカーシェアリング会社2社のうちの1社だ。もう1社の Smove も同等の車両数を抱える。

シェアリングは思いやり

シンガポールでは一般的に、車を所有する代わりに、公共交通機関を利用したり、タクシーを拾ったり、Grab や Gojek といった民間の配車サービスを利用したりする。しかし Lee 氏は、より長期のレンタルを対象としたカーシェアリング市場があると確信している。この場合、長期というのは数時間から数日間を意味する。

旧正月などの祝祭シーズンを例にとってみよう。シンガポールの家族は通常、2週間かけて国内の様々な場所にいる親戚を訪れる。民間の配車サービスも利用できるが、費用がかさむこともある。特に混雑時などに価格が上がる時はそうだ。こういった時期は公共交通機関もかなり煩わしくなりがちだ。

Tribecar のようなカーシェアリングサービスは、一時的に長期にわたって車を必要とする定期的な利用者に、便利で手頃な価格のオプションを提供することで、市場の隙間を埋める。

Lee 氏によると、カーシェアリングサービスには他にも様々な使用事例があり、例えば友達と夜出かけたり、家族で車で旅行したりする時などに利用できる。

毎朝5時から6時までレンタルして、ご主人を職場まで送るお客様もいます。

Lee 氏は思い返しながら語る。

Tribecar の車両は、シンガポール国内の270か所以上で利用できる。利用者は、車を受け取る希望日時、レンタル期間、希望の車両タイプを選択するだけだ。これを受け、Tribecar がもっとも近くのレンタル車両を探してくれる。

全て Tribecar のモバイルアプリ経由で行われるため、Tribecar のカーシェアリングサービスは24時間年中無休で利用できる。全フリートの70%を占めるのが通常車だが、他にもオートバイや大型トラック、ワゴン車も、個人利用および商用向けに提供している。

複数の戦線

カーシェアリングサービスを提供する会社は他にも何社かシンガポールにあるが、Tribecar は利便性と価格の面で他とは全く異なっている。

Lee 氏の見積もりによると、どのシンガポール人にとっても10分から15分の徒歩圏内に Tribecar があるという。また Tribecar の料金は、1時間当たり2シンガポールドル(1.47米ドル)からとなっており、国内でもっとも手頃なオプションの1つだ。

さらに、顧客は契約、会員制度、マイレージ料金に縛られることもない。支払うのはレンタル期間に対する費用だけだ。

また同社は、比較可能なあらゆる指標において価格を安く保ち、Grab や Gojek といった民間の配車サービスよりも優位な立場を維持している。さらに、両者はサービスを提供する利用者層やニーズが全く異なると Lee 氏は見ている。

それでは従来のレンタカー会社はどうなのか?現在レンタカー会社はシンガポール国内に約250社ある。彼らが自社のフリート車両で同様のサービスを提供しない理由は何か?

Image credit: Tribecar

この分野に関しては、競うのではなくパートナーシップを結びたいと Lee 氏は考えている。実際に Tribecar は、ハードウェアおよびソフトウェアの双方で自社のカーシェアリングサービステクノロジー、そしてインフラ面でのサポートをレンタカー会社に提供している。Lee 氏は、これがシンガポールでカーシェアリングの普及を加速させる最善策だと確信している。

今のところ、同社のカーシェアリングテクノロジーを定額制で利用するクライアントは2社ある。また今後さらに展開すべく交渉を進めている。Lee 氏は言う。

シンガポール人の生活を真に大きく変えるには、他の事業と協力体制を築く以外にありません。

定額制モデルに加えて、メンバーからの売上も Tribecar の収益に貢献している。Lee 氏は、同社のメンバーシップ基盤の実際の規模は明かさなかったが、メンバーシップは過去1年で50%近く上昇し、同時期の収益も約750万シンガポールドル(550万米ドル)へと50%の成長を遂げたという。平均して、Tribecar は1日に1台当たり3件から4件の予約を受け、それ ぞれの利用期間は数時間から数日間だ。

普通とは少し違う

Tribecar は「普通とは違うスタートアップ」だと Lee 氏は認める。Lee 氏によると、「クラウンジュエル」である同社テクノロジーをレンタカー会社に提供するほか、Tribecar はマーケティングにほとんどお金をかけていない。

同社の宣伝方法は、Tribecar のソーシャルメディアの存在と車両に貼られたステッカーだけだ。

マーケティングにお金をかけた時は、1ドル投じるごとに顧客から5ドル回収しています。

また、近い将来 Tribecar が資金を調達する予定はないという。Lee 氏は次のように説明する。

常に圧倒的な成功を収めるわけではないということを、理解していない会社設立者がたくさんいます。圧勝だけでなく、中規模や小規模のイグジットもあります。私が興味を持っているのは輸送分野ですが、イグジットの規模はそれほど大きくありません。

ですから資金を調達すれば、ビジネスのイグジットが難しくなります。時間が重要な要素でない限り、自力でビジネスを伸ばし、合併や買収が迫っている場合に限り資金を調達するのが望ましい。それが当社の戦略です。最終的には、当社のビジネスモデルが機能するということを証明しなければいけません。

Tribecar を経営する中で、Lee 氏は独特の課題にも直面している。会社を一から築き上げることの通常の複雑さに加え、犯罪や不正への対応が驚くほど大きな課題となっている。

Lee 氏が思い返した事例の1つで、Tribecar の会員が、配車サービス会社で運転するために車を盗んだことがあった。不正行為に関しては、一部のレンタカー会社が、損傷した車を特定の修理工場に送るよう顧客に求めることで見返りを受け取っていると同氏は説明する。

ある意味、合法的な汚職です。見返りや手数料を渡すのは間違ったことではありませんが、不運な顧客が支払う修理費は高くなります。修理代が500米ドルだったとしても、代わりに誰かが1,500米ドル請求することも可能です。簡単にお金が儲かります。ですから一緒に働く相手は、信頼できる人、こういったことに手を出さない人でないといけません。

2019年6月末に、厄介な問題が新たに持ち上がった。地元紙 The Straits Times が Tribecar の利益低下(2018年の数値)を用いて、シンガポールにおける民間配車サービス事業の落ち込みを証明したのだ。この際、同時期の同社収益は増大しており、生の数値の低下は微々たるものだったことは無視された。

問題は、Grab や Gojek といった民間の配車サービスは、カーシェアリングサービスとの共通点がほとんどないという点だとLee氏は説明する。実際、Tribecar の顧客の大半は、レジャー目的で同社のサービスを利用しているという。

Lee 氏は言う。

記事の筆者は、両者を無理に関連付けようとしていました。Tribecar のビジネスがうまくいっているかどうかは、民間の配車サービスと全く関係ありません。記者に悪意があるわけではないと思いますが、事実確認が不十分だったのかもしれません。当社が従来のビジネスであるとした上で、この報道機関が目を向けたのは収益性でした。当社のビジネスは赤字経営ではなく、急速に成長しています。

拡大計画

Tribecar は現在、フォルクスワーゲン・ビートルやミニクーパーといったスペシャルオケージョン(特別の機会)向けの車や、ピックアップトラックなどのより実用的な車両を2019年第3四半期までに導入することを検討している。今後2四半期の間に東南アジアの新しい市場へと進出する計画も進んでおり、具体的な都市や市場は後日明らかにされる予定だ。

一方 Tribecar には地元における課題がまだ残っており、主となるのがシンガポール人の車に対する愛着である。

車両所有者は2種類にわかれます。車を実用性のために所有する人と、実用性と名声のために所有する人です。前者に対しては、当社の車は身近な駐車場にあり簡単にアクセスできることを伝えます。ライフスタイルが変わることもありませんし、プライスポイントを見てもはるかに納得がいきます。車を実用性と名声の面から所有する人に対しては、心揺さぶられるようなスペシャルオケージョン車両を時間をかけて紹介していきたいと思います。

Lee 氏はこう断言する。

最終的に私が学んだのは、人々が気にするのは、納得がいくプライスポイントで自分たちのニーズに応えられる会社はどれかということです。重要なのはそれだけです。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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