日本のスタートアップは、アメリカで成功できるのか?〜Monozukuri Hub Meetupから【ゲスト寄稿】

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sasha-kaverina本稿は、京都を拠点とするジャーナリスト Sasha Kaverina 氏による寄稿を翻訳したものである。

オリジナルはこちら

Monozukuri Hub Meetup」は、 京都を拠点とするハードウェアに特化したスタートアップアクセラレータ「Makers Boot Camp」が主宰している。


日本に拠点を置くスタートアップにとって、リソースを海外とシェアしたり届けたりすることは新市場への進出に役立つ。しかし、ハードルの話になると、特に多くのスタートアップが目指す市場の一つであるアメリカは特に、日本の起業家が気づかない競合スタートアップにあふれている。

Monozukuri Hub Meetup では、困難についてオープンに話し合い、我々のエコシステムをより強くするのに役立つ、意味のある繋がりを作るため、カジュアルな機会を通じてスタートアップ創業者、起業家、投資家らと関係性を高めてきた。前回では、このミートアップのコアアジェンダは、どうやってアメリカ市場に打ち勝ち、日本のスタートアップの国際化に向けたアプローチを築くかというものだった。イベントには、さまざまな産業や異なる成熟ステージの起業家が、海外での PMF(プロダクトマーケットフィット)を見出すための実用的な学びを求めて集まった。

東海岸と西海岸の違い

イベントは、Makers Boot Camp の CEO 牧野成将氏のセッションで幕を開けた。牧野氏は、アメリカ市場への参入を期待する起業家に向けた、重要な学びを共有した。彼によれば、躍動するテックスタートアップ界で働くことを目指す多くの若い人材にとって、サンフランシスコは今でも最も有名な夢である一方、東海岸に定住し競合よりも事業を前進させることを選ぶ起業家は日に日に増えているという。牧野氏は、スタートアップハブを訪問したり、日本のスタートアップをアメリカのコミュニティに紹介した、最近の東海岸への出張を振り返った。

世界第二のスタートアップハブで、イノベーションのホットベッドでもあるニューヨークは、その賑やかなコミュニティや、資本と国際的な人材が集中していることが知られる。ERANYdesignsCELANUMA などのアクセラレータやインキュベータらのおかげで、新しいビジネスをローンチしたり、開発したりするのにも理想的な場所だ。

日本のコーポレートリーダーと共に、ピッツバーグのスタートアップシーンについて議論する AlphaLab Gear マネージングディレクター Ilana Diamond 氏(後ろ)、Makers Boot Camp マネージングディレクター 関信浩氏、Makers Boot Camp CEO 牧野成将氏

もう一つの東海岸の街ピッツバーグもまた、クラス最高のリソースにアクセスしたい、AI、ロボティクス、自動運転企業にとっての、新しいテクノロジーの地として頭角を現わしつつある。新しい活動の多くは、カーネギーメロン大学で開拓され、AlphaLab Gear のようなハードウェアアクセラレータによって後押しされた AI や機械学習技術から生み出されている。今年、ピッツバーグで開催された Hardware Cup Finals には、全米7地域と日本を含む4カ国から選ばれたファイナリストが終結した。日本からのファイナリストを選ぶ準決勝HackOsaka 2019 で開催され、イノベーティブなスタートアップ8社が国際的な顔ぶれの審査員の前で事業内容をピッチした。

あっと:容易に毛細血管の血流を観察できるデバイス「血管美人」を観察

あっと CEO 武野團氏

大阪を拠点とするヘルスケアスタートアップ あっと CEO 武野團氏は、数年間にわたり日本内外の医療クリニックや薬局向けのメドテックデバイスを製造販売している。彼が開発した革命的な顕微鏡「血管美人」は、簡単かつ痛みも無くユーザの血流を観察することができ、リアルタイムで血流の性質を表示することができる。

武野氏は、この新技術が血流の影響する広い分野に利益をもたらせると考えている。早期診断、特別な状態のモニタリング、病気療養などだ。彼はグローバルな健康・ヘルスケア領域にアクセスを持ちたいと考えており、世界中の大学や医療組織と協業している。

Scentee:アプリの操作で、香りが醸し出される技術

スマート香りディフューザーをプレゼンする Scentee の服部雄也氏(左)と竹本晃理氏(右)

東京を拠点とするスタートアップ Scentee の服部雄也氏と竹本晃理氏は、Scentee が人工知能を備えたディフューザーを使い、自宅にパーソナライズされた雰囲気を醸し出せる仕組みについて紹介した。彼らのプレゼンテーションによれば、ユーザが機能補完するモバイルアプリを操作すると、Scentee Machina という目に見える装置から香りが醸し出される。

Scentee Machina

2018年に成功した Kickstarter でのクラウドファンディングのおかげで、彼らは58,000米ドル超を調達することに成功し、ラスベガスに飛んで世界最大のコンシューマーショー CES に出展することができた。

国際的なトレードショーは、Scentee にとって、効果的なアウトバウンドマーケティング戦略であることが証明された。

彼はネットワーク拡大や露出増に関心のあるスタートアップは、グローバルなテックイベントに参加するチャンスを見逃すべきでないと考えている。

あっと、Scentee、HoloAsh、DOKI DOKI によるパネルディスカッション

左から:あっと CEO 武野團氏、HoloAsh CEO 岸慶紀氏、Scentee ビジネス開発担当 竹本晃理氏

あっと と Scentee の両社は、彼らのグローバル起業の旅路について語るパネルディスカッションを持ち、アメリカ市場における困難や事業機会が何であるのかを語ってくれた。このパネルには、サンフランシスコを拠点に、ネガティブな感情を克服するための AI アシスタントを開発する HoloAsh の CEO 岸慶紀氏も参加した。彼のチームはシリコンバレーのアクセラレータ TVLP への参加を認められた後、人々の違いこそが尊重される健康的な社会環境の構築を目指して、ブームに沸くヘルスケア市場への参入を始めている。

DOKI DOKI CEO の井口尊仁氏は長年にわたり、キャリアをサンフランシスコと京都で過ごしてきた。

DOKI DOKI の創業者で CEO の井口尊仁氏が、このパネルディスカッションのファシリテーターを務めた。井口氏は日本内外で優れたクリエイターと評価され、その経歴の多くを、テクノロジーを通じた人間関係の強化支援や、未来志向のアイデアを世界の聴衆に届けてのに費やしている。議論の方向性を定めるべく、井口氏は、テックユニコーンが作り出した波や、スタートアップがスケールアップする上で直面する数々の困難について話をした。この話がきっかけとなり、今回の登壇者と、登壇したスタートアップの背景にあるインスピレーション——エコシステムがスタートアップの発展をどのように支援してくれたか、何をもって国際市場で成功したと言えるか——について知りたい聴衆の間で、活発な議論が展開された。

パネルディスカッションの後、参加者はネットワーキングセッションに参加した。

この夜のイベントは、コミュニティの参加者無しには、露出が高まり参加者同士のつながりが深まる、このような成功とはならなかっただろう。IoT のスタートアップ創業者たちに、彼らの大きな困難の解決を支援できるよう、我々は価値ある機会を提供したいと考えている。今後のイベントにも期待してほしい。

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