サムライインキュベートは今月、同社の執務スペース、イベントスペース、コワーキングスペースなどからなる「SAMURAI HOUSE -INCUBATION-」を六本木一丁目に設置した。六本木一丁目に存在した旧・斎藤医院を森ビルが買い取りリノベーションした建物を利用、高層商業ビルを手がけることが多い森ビルにとっても珍しい物件だ。
2008年に創業したサムライインキュベートはほどなく、東京・練馬の小竹向原に一軒家を使った社屋兼コワーキング(というか、コリビングでもあった)スペースの「SAMURAI HOUSE」を設置。ここからは、ノボット(2011年に KDDI 子会社の mediba が買収)やエニドア(2016年にロゼッタが買収)といったスタートアップが誕生した。2011年には東京・天王洲の Samurai Startup Island に活動拠点を移し、約8年間にわたってスタートアップ輩出と事業投資を展開してきた。
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この数年来、森ビルは赤坂アークヒルズ内の KaleidoWorks にベンチャーキャピタル数社を招聘するなど、スタートアップ関連プレーヤーの集積に積極的だ。そんな中、この新しい拠点についても森ビルから提案があったとのことで、抜群の立地と対照的に元は医院だったといいう特徴的な環境から、「ここを活用できるのは榊原さん(サムライインキュベート創業者 兼 CEO の榊原健太郎氏)しかいない」と、森ビルの担当者から白羽の矢が立ったという。
「日本から世界を席巻する会社を生み出したい」という兼ねてからの願いを込め、社屋の移転を機に、榊原氏はサムライインキュベートのブランドを改めることも決意。誰もが知る世界的クリエイティブディレクターに新 VI(Visual Identity)を依頼することを思いつく。
Google でサムライと検索すると、うちと同じか隣り合うくらい上位に佐藤可士和さんの名前が出てくる(SAMURAI は佐藤氏のクリエイティブスタジオの名前だから)。日本発でグローバルに成功している会社はまだ多くない中、佐藤さんはグローバルな会社のクリエイティブを多く手がけておられるので、ぜひリブランディングのディレクションをお願いしたいと思った。
でも、佐藤さんにパスがない。そうだ、Facebook で DM を送ればいい、と思い即実行。しかし、しばらく待っても案の定、返事はない。共通の友人がいないかと探したところ、うちの執行役員の成瀬(成瀬功一氏)が佐藤さんと繋がっていて紹介してもらった。佐藤さんのオフィスを訪問し、思いのたけを伝えてお願いしたところ、引き受けてもらうことができた。(榊原氏)
「できるかできないか、ではなく、やるかやらないか」というサムライインキュベートのスローガンは、創業者自らそれを地で行く形で生かされ、今回のリブランディングに至ったわけだ。サムライインキュベートの新 VI は、行動指針に照らして「志勇礼誠」という新たな言葉で表現され、その四文字を限りなく削ぎ落として抽象化された正方形四つのデザインでまとめられることとなった。
日本・イスラエル・アフリカでのスタートアップ投資に加え、最近では、大企業のオープンイノベーションやアクセラレータプログラム事案の受託も増え、サムライインキュベートのメンバーらが大企業と打ち合わせすることも多くなった。社屋移転により、そういったやり取りの効率も上がるだろう。オリンピックを控え、都心部の移動に制約が生じることを考えれば、東京の真ん中に拠点を設けたことによるメリットも大きい。
屋上やテラスなどオープンエア環境には恵まれた施設だが、消防や近隣住民への配慮からバーベキューパーティーを開くのは難しいかもしれない。しかし、サムライインキュベート主催イベントの定番である、メガホン片手に、床に敷き詰めた座布団に座る聴衆に向けてピッチする「サムライシャウト」の雄叫びが、ここ六本木一丁目の摩天楼の真ん中で轟く日が来るのを楽しみにしたい。
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