死んだ後も価値を永続的に生み出し続ける会社を作るーーU25起業家に聞く「起業・新基準」/研究者と企業をつなぐ「LabBase」POL代表取締役、加茂さん

by ゲストライター ゲストライター on 2019.8.31

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本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。若手起業家向けの勉強会を定期的に開催中

20代起業家を対象に、彼らが考える新しいスタートアップのあり方を聞き出すインタビューシリーズ、前回登場のZIZAI代表取締役、塚本大地さんに続いて登場いただくのは理系学生のキャリアプラットフォーム「LabBase」を展開するPOL代表取締役の加茂倫明さん。

今回もUpstart Ventures、上杉修平さんにインタビュワーとして参加してもらい、お話をうかがってきました(太字の質問は全て上杉氏。執筆・編集:平野武士)。

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加茂倫明さん:1994年生まれ。東京大学在学中にスタートアップのインターン経験を経て、2016年にPOLを創業。翌年に研究内容をもとに優秀な理系学生をスカウトできる新卒採用サービス「LabBase」を公開し事業拡大中。2019年3月には新規事業として、産学連携を加速するプラットフォーム「LabBase X」をリリース

POLは研究者の採用やマッチングなど、研究に関わる人たちを通じたビジネスを展開されてますが、全体像としてはどのような事業を考えているんですか

加茂:今後の展開にもなるんですが、全体構想としては大きく3つあります。まずはプラットフォーム化で、現行のLabBaseとLabBase Xに加え、研究者や学生が日々の研究生活で使える機能をどんどん増やしていきます。研究室のインフラとなる「LabTech事業群」の構築です。研究関連市場は約3.5兆円とかなり大きく、そこでNo.1となる事業群を創ろうと。

次が「科学技術版のY Combinator」構想です。既存の2事業やプラットフォーム化を進める中で、POLには研究に関する膨大な情報が集まってきます。それぞれの研究者の最近の発明、保有技術、応用可能性、パートナーシップを組みたい企業といった具合で、あらゆる情報が集積される中、研究室発の事業シーズを、どこよりも早く認知できるようになります。そのシーズに投資し、インキュベートしていくという構想です。

壮大ですね

加茂:最後がグローバル化なんですが、研究に国境はあまり関係ないので、必然的にグローバルで戦わないといけないと考えています。実際にLabBase Xを運営する中でも、日本企業が「海外の研究者の情報を知りたい」というニーズが顕在化していることを目の当たりにすることも多く、逆に海外企業が日本の研究者の情報を求めるケースも少なくないです。

世界で一番、研究者や科学者にまつわる課題を解決できる会社になり、彼らが真にポテンシャルを発揮できるようになれば、科学や社会の発展スピードを数倍加速させられるのではないかと思っています。

研究者というフォーカスはややもするとニッチと判断されそうですよね

加茂:ですね。ただ、先ほどお話しした「科学技術版のY Combinator」構想などが実現できると、もはやニッチではなく研究関連市場を超えて全領域に対象市場が広がるなと思っています。LabTechプラットフォームで得た研究データやネットワークをもとに、ディープテック系の事業をどんどん立ち上げていく。無限の可能性が広がっていると思います。

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LabBaseの立ち上げってどういう戦略だったんですか

加茂:肝だったと思っているのが2つあります。1つが、ニワトリ卵問題の突破策として、泥臭く研究室まで学生に会いに行ったこと。もう1つが、プレスリリース大作戦です。

利用企業がいないと理系学生を集めにくいし、理系学生がいないと企業にも契約してもらいにくい。マッチングビジネスでは必ず当たる問題ですよね。POLはどちらからやったんですか

加茂:僕らの場合は学生からですね。どっちを先に集めるかという意思決定のときに、学生が集まったらそこに絶対企業は集まると考えたのが理由です。理系学生は研究室にいっぱい集まっているじゃないですか。じゃあそこに訪問しようと。獲得したいユーザーがあれだけ集まっている状況って珍しいですし、そこはラッキーだなと思いました。

なるほど、これは特有の状況ですね

加茂:「研究室を通して学生に登録してもらおう」ということで、僕や当時のメンバーで、研究室に訪問して「こういうのをやっています」「フィードバックください」「使ってください」とひたすら言いまくっていました。飛び込み営業みたいな感じですね。理系学生にプロフィールを書いてもらって、ある程度、300人ぐらい集まったタイミングでリリースしたという感じです。

プレスリリースを活用したそうですが、具体的にどんなことをしたんですか

加茂:「こういうLabBaseみたいなサービスがあったらいいな」って思った段階で「LabBaseというサービスがもうすぐリリースされます。事前登録募集開始しました」というプレスリリース打ったんです。

あ、まだサービスがないのに?

加茂:はい(笑。狙いとしては、どれぐらい企業から事前登録がくるかどうかで、ニーズの広さとか深さを測れるというのがありました。あと事前登録してくれたところに営業しに行って、ヒアリングもしながら「ここの仕様どうしたらやりやすいですか」と、聞きながらつくれるので必要とされるものを作りやすいんですよ。

あとは最初からもう「リリースします」「できなかったら返金します」みたいな勢いで契約も取ってました。

すごいアグレッシブな作戦ですね(笑

加茂:必死でしたね(笑。

当時の1号社員として入ってくれたエンジニアと一緒に徹夜しながらやっていました。ただ、数週間で何百社がガッとお問い合わせをくれたのでニーズはあるなって思って、自信を持って取り組めたというのが大きかったです。開発も始まってない段階から、有名な大手企業とかに飛び込んで、「もうすぐできますよ」となんとか契約を取ってきたり。

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明確なニーズと方法がわかっていれば確かに強いですよね。加茂さんは事業選定にあたって何を意識していましたか

加茂:社会的な意義と、自分がやる意味・やりたいと思うかという二軸を考えてました。前者に関しては、身の回りで解決したい課題は何かというのを常に探して、意識して生活していました。後者に関しては、もともと音楽や食が好きだったのもあり、当初はその周辺領域のスタートアップを結構リサーチしていました。

あとは、海外のトップティアのVCの最近の投資先をAngelListやCrunchbaseでずっとウォッチして、それらがなんでこのタイミングで出てきたのか仮説立てて調べたりしていました。

研究者にフォーカスしたのはどういうきっかけで

加茂:現在の事業に関しては、大学の理系の先輩が研究に追われて就活を大変そうにしていたことを課題に感じたのが始まりです。

でもニッチだった

加茂:そうです。理系学生向けの就活サービスというだけでは、そこまで大きくなることは見込めず、また事業内容としてもそれだけを一生やっていたいと思えてはいなかったので、それをもっと大きい文脈で捉え直そうと考えました。

そうしたら、就活以外にも研究領域には課題が多いってことに気が付いて。そこからですね。「LabTech Companyとして、研究関連課題を全て解決し、科学と社会の発展を加速する」という目標を語るようになったのは。

少し話題を起業前の話に変えたいと思います。元々、いくつかのスタートアップでインターンされていたとか

加茂:東大に入学してインターン先を探していて、まず最初に入ったのがホワイトプラスさんでした。当時は社長の近くで働いて、仕事とはどういう感じでやるのか、ベンチャーはどういう雰囲気なのかを知りたかったというのが大きかったです。本当に面倒見の良い方々のところで働くことができ、また井下社長との議論の中で本質とは何かについてかなり考えさせられ、鍛えてもらえる会社でした。

次は海外

加茂:はい。休学して半年間、シンガポールのREAPRAさんというエス・エム・エス創業者の諸藤さんが立ち上げた企業でインターンしました。ここは事業をゼロから作るという経験をさせていただいたので、シンガポールから帰ってすぐ起業しようと思っていたのですが、当時は事業が定まっていなかったので、決まるまでReproさんで働かせていただいていました。

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結構濃密なスタートアップ・インターン生活。事業に興味を持ったのはそこからですか?

加茂:いえ、高校時代に、祖父の死のタイミングで生きる意味について考え、死んだ後にも何か残したいと思ったのが始まりです。また共同創業者の吉田(行宏氏・元ガリバーインターナショナル※現IDOM専務取締役)の影響などもあり、世のため人のために事業をしたいと、そしてやるからには大きなインパクトで意義あることをしたいなと。

モチベーション保つの大変そうですね

加茂:ユーザベース創業者の新野良介さんに、「加茂君はつまり、人生を意義深くしたいんだ」って言われたことがあるんです。

深い

加茂:これはその通りだと思っていて、自分のモチベーションはちょっとした満足ではなく、意義に向いているのと、かつ欲求のタンクが大きいからこそ、大きな意義あることをしたいって方向にあるのだと思います。だからこそ自分が生きている間だけではなく、死んだ後も価値を永続的に生み出し続けられるような会社を作りたいっていう思考に至っているのではないかなと。

スタートアップの組織づくりは最近どこでも話題ですね。採用してもカルチャーフィットしなくてすぐ辞めてしまったり

加茂:特に長い時間軸で考えれば考えるほど組織が重要です。変化の激しい今の時代で永続する事業は存在しないと考えていて、そうなると永続的に価値を生み出し続ける会社を作るためには、時代時代にあった強い事業を生み出し続ける永続する組織を作るしかないと思っています。

今をときめく国内ネット巨人も創業時の事業だけで継続してる例って稀ですよね

加茂:強い価値観/バリューやカルチャーが軸となる、経営者人材が育つような、強い組織を作ることが大事だと思います。アーリーステージの会社ほど事業で精一杯で、組織創りは後回しになりがちだと思いますが、会社のDNAは6〜7割くらいは創業期に決まるので、事業も組織も大きくなったタイミングから組織を強くしようと考えるのは遅いのではないかとも思っています。

どなたかロールモデルはいらっしゃるんですか

加茂:共同創業者の吉田行宏さん(元ガリバー・インターナショナル専務取締役)は最も尊敬する経営者です。また、FiNCの溝口勇児さんも、志の高さや覚悟などの面でとても尊敬しています。当初はロールモデルがいたわけではなく、自分として初めての起業、初めての社会人経験で、色々な人を巻き込まなければいけないというのは感じていました。共同創業者や30代の1号社員・2号社員の方を巻き込んだことをきっかけに、色々なことが加速した感じですね。

確かに溝口さんも多くの方を巻き込みながら体を大きくされていますよね。同世代での起業家とはどのように考えてお付き合いされてます

加茂:自分の経営者としての視座や志を上げていかなければと思っているので、各界の超一流と言われる人たちとの接点を意図的に増やすようにしています。

長時間ありがとうございました!

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