出張管理は効率化できるーー日本企業に優秀なトラベルマネージャーを提案する「AI Travel」が2億円調達、JR東日本グループ提携も

by Taishi Masubuchi Taishi Masubuchi on 2019.8.5

AI_Travel

ニュースサマリー:出張などのビジネストラベルを管理するSaaS「AI Travel」は5日、ジェネシア・ベンチャーズ、AGキャピタル、キャナルベンチャーズ、JR東日本スタートアップ、横浜キャピタル、その他事業会社を引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。これに日本政策金融公庫などからの融資を含め、調達した資金は2億円。同社の累計調達額は3億3000万円となった。今回調達した資金は、パートナーシップ強化やプラットフォーム機能性向上に利用される。

話題のポイント:AI Travelの総額2億円に及ぶ資金調達が完了しました。AI Travelは法人向けにクラウド型出張手配・管理システム(BTM: Business Travel Management)を提供し、出張の効率化を目指すサービスです。現段階で200社が導入し、ユーザー数も1万名を記録しており、今後はAIを組み合わせて更なる効率化を目指すとしています。

AI Travelの特徴はその「シームレス」にあります。同社プラットフォームでは、国内出張/海外出張、また一人/複数に関わらず、出張先までの交通手段と宿泊先をひとまとめに手配してくれます。また、SaaS型の特性を最大限に生かし、出張に関わる経費精算も全てシームレスに完結させることが可能なため、管理側にとってもポジティブな要素となるのです。

そこで本稿では同社代表取締役CEO兼CPOを務める村田祐介氏、また取締役CMOを務める本間卓哉氏に、日本におけるトラベル市場トレンド、事業の方向性など状況をお伺いしてきました(太字の質問は全て筆者、回答は村田・本間氏)。

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まず、トラベルSaaSを始めたきっかけについて聞きたい

村田:新卒で楽天に入り、出張頻度の多い部署に携わっていたのですが、本業と同じレベルで出張申請や予約、精算の煩雑さに追われる日々でした。もちろん、旅行代理店などのサービスもあるにはありましたが、彼らは手配と請求までしか面倒をみてくれないし、立替で直接予約したものをあとで経費精算するとなると、手間や負担が非常に多いと感じていました。これを一気に解決できれば会社にとっても個人にとっても生産性向上に繋がるのでは、と考えたのが最初のきっかけです。

出張をシームレスに、と考えるとSaaS型が適していたということ

村田:そうですね。また、企業における出張費の「精算」はあくまで出張費データを集める目的という前提がありました。つまり、いつ、だれが、どこで、いくらで、どのようにといった出張データを可視化できていないと気が付きました。出張の「申請」から「手配」・「管理」・「分析」・「会計連動」を一気に解決するにはクラウド型が最適解だと考えたんです。

AI Travelのプラットフォーム (例)

現時点で200社の導入実績、ユーザー数1万名を突破。需要を感じているか

村田:まず、既存旅行代理店のサービスに対し、私のような不満を感じている人は相当数いると思っています。ただ、そこにAI Travelのようにクラウドを利用したソリューションがあることに気が付いている企業さんは少ない。このギャップを私たちが埋めていき、ソフトウェアによる価値提供をさらに進めていきたいと思います。また、出張者、手配者、決裁者、経理などさまざまなレイヤーの方に利用いただくので、大きな企業であればあるほど、活用浸透に時間がかかると感じており、利便性を分かりやすく伝えていくことも重要視しています。

具体的に「分析」はどのようなアウトプットを想定しているか

本間あらゆる出張データを蓄積し見える化していくことで、例えば、部門ごとや個人ごとの出張経費など、さまざまな軸から可視化し分析できることを第一ステップとし、この先は、よく行く取引先の情報を分析し、どのタイミングで予約すれば最安値になるか、本当にこのタイミングでいく必要があるか、といった提案を自動でしてくれることを想定しています。また、トリップバックスのように出張費の貢献度を示すことで、ムダな旅費を削減することも可能になります。

実現に向けた障壁は

村田:開発面においては、出張先の在庫選択から生産データの正規化を実現し、ビックデータを収集する体制をまずは整えなければなりません。そのために、性質が全く異なる様々な出張関連商材を、少数のデータモデルで抽象化しシステム上で扱えるようにすることを目指しています。

本間:日本ではMaaS(Mobility as a Serivice) の取り組みは進みつつあるが、根底として交通機関がまだまだ協力的ではなく連携しにくい印象です。そのため、単に旅行商材の取り扱い数を増やそうと思っても、参入障壁がそれなりにあるのが現状。あらゆる機関の移動データがサービスごとで分断されており正規化できていないので、まずはそこから取り組まなければトラベル×テックは成り立ちにくい状況にあると思います。

「移動」に関わるあらゆるデータを集積する

最後に。今後のタイムラインについて。

村田世界一スマートな出張手配システムを目指すとともに、正規化した出張のビッグデータを蓄積し、AIを活用した出張の最適化や提案ができるようにしていきます。さらに、基盤となる検索・予約・管理の部分は国を問わず活用できると考えており、外資企業の日本法人や、海外拠点を複数構える日本企業への導入も増えており、将来的には外国人社員向けの英語対応をシステムとサポートの両面で整えたいと考えております。

本間この先の出張のあるべき姿は、1ストップサービスでチケットレスな社会となり、出張に関わる処理業務がほぼ無くなる世界。そして出張における成果情報が紐づくことだと思っています。単なる出張データではなく、SFAなどの営業管理システムと連携することで、最終的にどれくらいの売上規模になったのか、その行為は正しかったのか、等を判断することで、出張をさらに価値のあるものにしていきたいです。道のりは長いですが、私達はこの領域を追求していきます。

ありがとうございました。

まず法人向けトラベルサービスの市場で一体何が起きているのか振り返ってみましょう。つい先日、同様サービスを提供するTravelPerkやTripActionsが共にシリーズC・シリーズDにて「ビジネストラベルSaaS」企業として大型資金調達を実施しています。TravelPerkはヨーロッパを中心に、TripActionsは北米を中心にそれぞれ事業展開を進めていて、共にグローバル展開を進めていくフェーズに入ってきました。

日本政策投資銀行が2017年に公開した「出張マーケットに関する動向と今後」によれば、同市場は世界で146兆円、国内だけで3.7兆円の市場規模があるとしています。TravelPerkやTripActionsを見れば頷ける数値ですが、日本にて法人向けSaaSは海外同様増えている一方、法人トラベルという括りではそこまで印象がない状況が続いていました。そこにメスを入れようとしているのが「AI Travel」ということです。

ではなぜ日本で法人トラベル×SaaSがこれまで登場してこなかったのでしょうか。その根底の理由を、AI Travelの村田さん本間さんは「日本では今まで、トラベルマネージャーという概念そのものがなかった」と話していました。

主に海外では、企業内における出張管理を担当する「Travel Manager(トラベルマネージャー)」が役職として成立しています。そのためTravelPerkやTripActionsなどのSaaS導入へ向けた意思決定をしやすかったという背景もありそうです。

モビリティー市場とのタッグの大切さも強調されていた同社ですが、今回の資金調達を皮切りに、JR東日本グループの提供する「JR東日本ダイナミックレールパック」や「駅レンタカー」の取り扱いを始めるそう。彼らが躍進することで日本でも「トラベルマネージャー」という役職が広がることに繋がりそうです。

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