チャンギ空港のスピンオフ企業Carigos、細分化した貨物輸送業界の改革に乗り出す

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.8.27

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貨物輸送業界と聞いて、デジタル化がかなり進んでいる業界だとすぐにピンとくる人はいないだろう。しかし、シンガポールに本拠を置くスタートアップがその状況を変えようとしている。

Changi Airport Group(CAG)の100%子会社である Carigos は、旧態依然とした貨物輸送業界に IT 化をもたらすべく2017年に設立された。

Carigos

国際空港管理団体の Airports Council International(ACI)によると、チャンギ空港は最新の貨物航空発着数の世界ランキングで12位になっている。

シンガポールは国際貨物の中心地となっている。CAG の昨年の航空貨物処理量は215万トンに達し、前年比で1.4%増加している。航空貨物処理量は、輸出、輸入、積み替えのすべての分野で増加しており、中国、オーストラリア、香港、米国、インドからの貨物量がトップ5を占めている。

Carigos によると、同社は CAG からの干渉を受けずに経営を行っているという。

4PL(Fourth Party Logistics)のサービスプロバイダーとして、Carigos はできるだけ保有資産を少なく抑え、運送会社や倉庫会社、配達業者などの3PL(Third Party Logistics)パートナーと連携するようにしている。Carigos は自社のオンラインプラットフォームで、e コマース企業から半導体企業まで、3PL 業者との連携による物流ソリューションを必要しているあらゆるビジネスを支援している。

統合デジタルソリューションのアイデアが出てきたのは、貨物輸送業界が旧態依然として分断されているためだと Carigos の最高商務責任者 Andre Lim 氏は Tech in Asia に語った。

貿易というのはそもそもが複雑な性質を持っている。複数の管轄区域にまたがる、ややこしい輸出入の規制があり、それに対応するために様々な分野の専門家が必要となる。商品が大量に積まれた貨物を輸送する輸出業者は、価格競争力のある業者を選ぶまでに複数の運送会社からそれぞれ見積りを出してもらうという面倒な作業を行う必要がある。Carigos のメインプラットフォームである Carigos.com では、オンラインで問い合わせができるサービスを提供している。ユーザは好きなときにリクエストを出して、価格競争力のある5社から1日以内に見積りを取ることができるため、短時間で簡単に各社の見積りを比較することができる。

まったくの素人にとって、商品の国際輸送は煩雑な手続きの山と戦う悪夢のようなものだ。Lim 氏によると、運送会社が行うのは、商品の受け取りから港までの輸送、輸出元国での書類作成と通関業務、運送業者との空輸便・船便の調整、輸出先国での書類作成と通関手続き、輸入業者の倉庫までの運搬だという。

Carigos は IT を取り入れてこうしたプロセスを合理化しようとしている。

貨物輸送業界の Expedia

旅行業界における IT の進歩は、貨物輸送業界のはるか先を行っている。Booking.com や Expedia などのオンライン旅行業者は、飛行機のチケットの予約をシンプルにしてきたが、貨物輸送では最近まで同様のサービスが存在しなかった。

貨物輸送業界の Expedia を自負する Carigos は、陸海空の輸送と速達便だけでなく、倉庫での保管から受取人へのラストマイル配達にいたる、幅広いサービスを提供している。同社の代表的な製品である Go.Carigos.com は、見積りを即座に取ることができるプラットフォームだ(ただし、空輸と速達便のみ)。通常のプロセスは数日を要するため、即座に見積りが取れることはインパクトが大きい。

どこかで聞いたことのあるようなサービスだと感じたなら、それは物流会社 Freightos のことだ。同社もデジタル貨物プラットフォームで見積りをすぐに取れるサービスを提供している。Freightos は昨年、Singapore Exchange がリードするシリーズ C ラウンドで4,440万米ドルを調達した。

Carigos と Freightos は同じ業界で競合しているように思われる。Carigos の強みはアジア間の貿易とアジア太平洋地域での貨物輸送だ。一方、Freightos は太平洋横断ルートで強みを見せている。このような状況の中、「共存できる余地はまだまだある」と Lim 氏は言う。さらに、Carigos は国際輸送以外の業界にも進出している。

エンドツーエンドの物流ソリューション

市場調査会社 Technavio によると、世界の4PL 市場の規模は2020年までに120億米ドル以上に達すると見込まれている。また、アジア太平洋地域は、国際輸送や倉庫保管、ラストマイル配達で小回りの利く物流ソリューションを提供できる現地の業者によって独占されるだろうと予測されている。アジアでは現在、4PL logisticsAnchantoWaresix などが存在感を示している。

Carigos のチーム
Photo credit: Carigos

Carigos は現在、世界26都市、130以上のパートナーと提携している。Pickupp もそのうちの1社で、倉庫保管とラストマイル配達で提携を結んでいる。Carigos は DHL や FedEx などの速達サービス業者とも提携し、Megaton Shipping、Union Air Freight、EU-Around Logistics、1UP Cargo などの運送会社も Carigos の輸送ネットワークに参加している。

現在、多くの企業が単なる国際輸送とは異なる、エンドツーエンドの物流ソリューションを必要としていると Lim 氏は見ている。Carigos のような4PL 業者が狙いを定めているのもそこだ。こうした業者がいることで、企業は物流専門業者に個別に連絡を取る必要がなくなるのだ。Lim 氏によれば、同社が現在受け取る見積り依頼は月平均200件で、そのうち国際輸送の取引につながるのが20~25%だという。

Carigos は引き続き、倉庫保管とラストマイル配達で開発を進めており、すでにこれらの分野でパートナーも見つけ、同社の製品は進化を続けている。いずれ、同社の製品の最終形はマーケットプレイスモデルとは異なるものになるだろうと Lim 氏は述べる。

中小企業は現在、独自に大規模な顧客層を形成している。多国籍企業と比べると、中小企業の輸送量は少ない。つまり、中小企業は市場で最適な物流ソリューションを見つけられないため、別の手段を探す必要に迫られる場合もあるということだ。Carigos が狙いを付けているのがまさにここで、これまでは利用することが難しかったような、それぞれの中小企業に合わせたソリューションと価格を提供している。

また、Lim 氏は中小規模の運送会社の IT 化を進めたいと考えている。こうした企業の大半は今でも営業電話や飛び込み営業で顧客を開拓しているのだ。

今後の展望とマクロ指標

Lim 氏によると、Carigos がいずれ Changi Airport Group に吸収されることになるかを判断するのは時期尚早だという。しかし、同社の今後数か月の状況によっては、来年初頭に新たな投資ラウンドを行う可能性もある。

米国と中国の間で繰り広げられている貿易摩擦は、Carigos だけでなく、世界の貨物輸送業界全体にそれなりの影響を与えている。航空貨物の年間成長率は貨物トンキロ(FTK)をベースに計算されるが、International Air Transport Association(IATA:国際航空運送協会)によると、6月時点の対前年比成長率は4.8%低下した。これで、航空貨物量の前年比成長率は8か月連続で低下したことになる。

世界貿易が急速に落ち込む中、国際通貨基金は先月、2019年の世界貿易の成長率が2.5%になるとの予想を発表した。これは先に発表された予測よりも約1%低い数字となっている。IATA の調査によると、航空会社や輸送会社の CFO(最高財務責任者)たちも暗い見通しを持つとともに、貿易の先行きが不透明なために輸送の需要は今後12か月で急激に悪化すると見ている。

しかし、Carigos のチームは楽観的な見方を捨てていない。Lim 氏は次のように述べた。

幸か不幸か、Carigos は規模が小さいながらも成長を続けており、今のところ大きな影響はありません。輸送量も引き続き増やしていくことができます。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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