
ピックアップ:Digital identity startup Yoti raises additional £8M at a valuation of £82M
ニュースサマリー:TechCrunchが伝えるところによると、8月2日の800万ユーロの調達を機に、デジタル・アイデンティティサービスを開発する「Yoti」の企業価値が8200万ユーロ(約100億円)に到達したそうだ。驚くべきことにこの日本円にして10億円近くの大金は、Yotiの創業者でありCEOのRobin Toms氏と匿名の個人投資家、そして彼らの従業員が出資している。(Robin氏は以前オンライン・ギャンブルサービスを創業し、売却に成功している)
Yotiはロンドンのスタートアップで、オンライン上で管理されるデジタル・アイデンティティと、マネジメントアプリを提供している。Yotiを利用すると、事前にアプリに登録したアイデンティティを証明する情報(パスポートや住民票、生体情報など)をもとにユーザーはオンライン上で簡単に自分自身の身元を証明することができる。
同社が創業したのは2014年。現在の主軸サービスであるスマホでのアイデンティティ管理サービスがローンチされたのは2017年と、約3年の開発・準備期間がかかった。しかしサービスローンチ後は順調に拡大し、今やオンラインショッピングや、旅行サービス、空港、政府など、様々な主体に利用される規模にまで成長している。

話題のポイント:ここまでITが発達し、様々なアプリやサービスが浸透した世の中であっても、インターネット上で個人が自身の身元を証明することには非常に手間がかかるものです。
オンラインで利用できる日本の金融サービスなどを例にすると、そのようなサービスでは、アカウント作成・利用を行う際に、わざわざパスポートや運転免許証、自分の顔写真を撮影・アップロードする必要があります。一度だけでも面倒な手続きですが、様々なサービスに登録しようとする度に毎回以上の手順を踏まなければならないというのは、いささか時代遅れに思えます。
ですが、以上のような問題は、Yotiのようなサービスを介せば一瞬で解決するはずです。ちょうどFacebookログインのように、登録手続きの際に、ネット証券サービス側がYotiに保存された個人情報を参照することで、簡単に個人認証が完了します。
他にも、年齢認証が必要なウェブサービスやサイトを、Yotiを介さなければ利用やアカウント登録ができないようにするだけで、未成年による反社会的なサービス利用のリスクを防ぐことが可能です。Yotiは、お店やコンビニなどの物理的なマーケットで、QRコードによる年齢認証ができるサービスも提供しています。
懸念点としてはやはりセキュリティリスクが挙げられます。Yotiには大量に保存された個人情報をなんとしてでも死守する義務があります。公式情報では、データの断片化・暗号化を行うことでセキュリティ対策を行なっていますが、今後何が起こるかは誰にもわかりません。
これからの時代、さらなるデジタル化が進み、かつ全てのサービスが個別にユーザー情報を取得するのではなく、Yotiのようなアイデンティティサービスを参照する流れが主流になった場合、セキュリティリスクはどんどん上昇していきます。
営利企業として順調に成長しているYotiですが、一方で非営利でYoti keysという活動も実施しています。これはそもそも年齢や出生などの身元を証明する手段を持たない人々、かつスマホを持たず、ネットにすらアクセスできていない人々を主な対象に行なっているもので、NGOなどと協力し、アイデンティティの証明書となる物理的なデバイスを開発しているといいます。
Yoti keysはオープンソースのアイデンティティソリューションで、様々な主体が移民・難民などの身元不明な人々に対し、住居提供や食料配布、教育、医療などの支援を行う際に利用されます。2019年後半からの始動を予定しており、現在はフェローシッププログラムの応募者を募集するなどしています。
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