シリーズCラウンドを開始した東南アジアのO2Oプラットフォーム「Fave」、店舗向けの〝スーパーアプリ〟に名乗りを上げる

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.8.23

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今やすべてのテックビジネスは〝スーパーアプリ〟になろうとしているようだ。モバイル決済でも配車サービスでもフードデリバリでも、1つの製品に一点集中していた日々は過ぎ去り、その代わりに企業はすべてが揃ったサービスを自分たちのユーザベースに提供しようとしている。

シンガポールを拠点とする Fave もそういった企業である。KFit というジムのサブスクリプションサービスとして始まった同社は、2017年に Groupon シンガポール、マレーシア、インドネシアを買収した際に生まれ変わった。それ以来、後ろを振り返ることはしていない。

Image credit: Fave

割引やクーポンの提供で知られる Fave は、「オンラインリワードプラットフォーム」や「デジタル商業プラットフォーム」と表現することができる。しかし設立者の Joel Neoh 氏は単純に同社を「店舗の顧客に奉仕するプラットフォーム」であると考えることを好んでいる。

2年前、割引クーポンの提供はビジネスの大黒柱であった。今日では、Fave は決済、ロイヤルティの構築、そして金融サービスを含む様々な商業サービスを提供しており、基本的にデジタル領域に関心を向けるオフラインビジネスにとってのワンストップショップとなっている。

Fave の店舗ネットワークはレストラン、カフェ、スパ、サロン、そしてジムで構成され、このネットワークを通じて同社は、美容健康から飲食物のクーポンに至るまであらゆるものについて、1日に数百件の割引を提供している。それに加え、同社のモバイル決済方法である FavePay によって、ユーザは買い物の支払いをスマートフォンで行い、同時にキャッシュバックを受け取ることができる。

しかし Fave のさらに大きな目標は、店舗の拡大や成長を手助けするテックインフラを築き上げることである。その目的ために、同社のビジネス向け製品一式である Favebiz は、あらゆるスタートアップのサービスを支えるものとしての役割を果たしている。

同社は今後数年間に向けてさらに多くのものを準備している。Tech in Asia は Neoh 氏およびチーフファイナンシャルオフィサーの Jason Tan 氏から同社の計画についてじっくり話を聞いた。

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「店舗ファースト」「製品ファースト」な企業

Fave 創業者の Joel Neoh 氏
Image credit: Fave

Fave には現在、シンガポール、マレーシア、インドネシアで2万5,000店を超える店舗が登録しており、Neoh 氏は2020年までにこの数が4倍に増加すると見ている。

店舗は無料のスターターキットを通じて Fave のネットワークに加入することができる。Neoh 氏によれば、これはプラットフォームをできるだけ低価格で使いやすいものにするための慎重な取り組みであり、店舗が現金からその他の決済手段へと変更するのを妨げる主な要因は、コストと分かりにくさであると認めてのことであるという。

一旦加入すれば、店舗は FavePay を通じて Fave の顧客からのモバイル決済を受け取ることができるようになり、また取引やセールスパフォーマンス、トレンドについて、リアルタイムなデータによるインサイトにアクセスできるようになる。ベンダーはキャッシュバックのスキームを通じて、ロイヤルティのプラットフォームを構築することもできる。Fave のウェブサイトによれば、同社のネットワークには現在400万人の顧客がいる。しかしこの数字がアクティブユーザ数を指すのか登録ユーザ数を指すのか、明確にすることは避けた。

O2O(オンライン・ツー・オフライン)プレイヤーである同社は、Fave を通じてマーケティングに1米ドル支出するごとに、投資に対するリターンは平均して8米ドルであるとしている。

Neoh 氏はテクノロジーを中小企業がより効率的に成長しスケールするための手段だと見ている。

テクノロジーなしでビジネスを運営するのは大変でした。テクノジーへのアクセス手段を持たない中小企業はたくさんあります。家族経営のビジネスでも、小さなレストランでも、スパでも。

かつて Groupon のアジア太平洋地域の運営を率いていた同氏はこう回想する。また、同氏は店舗毎にニーズが異なるということも認めている。

成長したいところもあれば、ロイヤルティを求めるところもあれば、コストをカットしたいところもあります。

そのため、同社は常に製品の提案や提供を査定している。5月上旬、Fave はレストランが営業を効率化できるように、食品注文と配達のアプリ CutQ と Food Time を買収した。同社のセルフオーダーサービスはスタッフの労働を20%減らし、サービススタッフの必要人員を削減している。

クーポンからロイヤルティモデルへの転換は、Fave が常に行っている顧客との対話から生まれた。

クーポンは新規顧客の獲得には良い手段ですが、顧客を長く留めておくということに関しては、必ずしも良いとは限りません。(Neoh 氏)

強力な店舗ネットワークのおかげで、消費者側における顧客獲得は「きわめて有機的」だと Neoh 氏は明かす。

弊社は店舗から多くの顧客を得ています。なぜなら店舗の顧客は弊社の顧客でもあるのです。

Fave の新規顧客のうち80%は加入店舗からのものであるという有意な効果がある。

金融への進出

Fave のチーム
Image credit: Fave

店舗がアクセスしやすくするため、Fave はコストゼロモデルで運営している。つまり、加入に際して先払いの手数料がないということだ。店舗は販売がなされたときにのみ支払う。加えて、店舗はキャッシュバックの額についても独自に決めることができ、Fave は使われずに残ったキャッシュバックの一部を受け取る。

同社はまた、レンディングのような付加価値サービスを店舗に提供する方向へとますます動いている。

中小企業は伝統的な金融機関から融資を受けることができないという問題に、常に直面している。そういった金融機関は一般的に、中小企業が満たすことができない厳格な要件を持っている。元来、中小企業は実績がないビジネスモデルのためリスクが高く、市場で利用できるデータの欠如は適切な評価をさらに難しいものにしている。

インドネシアのモバイルウォレット Ovo の CFO であった Tan 氏は、Fave がこの情報の欠如を橋渡しできるチャンスを見出している。同社と店舗の緊密な関係は、店舗と金融機関を結びつけることにおいて同社に競争力を与える。その見返りに、Fave はリードジェネレーションの料金を受け取る。

同社は現在、このアプローチをテストするパイロット段階にある。

販売量や顧客評価、取引期間といったデータの組み合わせを通じて、Fave はプラットフォーム上の店舗のクレジットスコア算出を手助けし、そして店舗が銀行から見積もりをもらえるように支援する。

弊社が持つ代替となるデータセットで、貸主にも安心を提供しています。(Tan 氏)

Fave はローンの債務不履行のリスク軽減において、別の重要な役割も果たしている。同社は店舗とほぼ毎日支払を行っているため、支払の回収を補助するユニークなポジションにあるのだ。同社は売り上げが確定する前に、ローン払い戻しの控除を行うことができる。

アジアにおいて中小企業へのレンディングは、サービスが不足している巨大な市場である。同社のマレーシアにおけるネットワークでは、8割から9割の店舗が融資能力を持っていないと Neoh 氏は指摘する。しかしこれに気づいた企業は Fave が最初ではなく、同社は幾分込み合ったスペースに参入しようとしている。

金融サービスへの進出の一環として、テック企業 Grab は日本の金融会社クレディセゾンと提携し、東南アジアで消費者や小規模ビジネスにローンを提供している。Lazada も最近、同社の e コマースプラットフォーム上で店舗に対する短期融資を提供すべく、マレーシアのピアツーピアレンディングプラットフォーム Funding Societies とのタイアップを発表した。

現時点で Fave は同社のバランスシートから貸し出すつもりはなく、次の2四半期に様々な金融業者と提携する門戸を開いている。

弊社はこのプラットフォームを提供するというコアビジネスに注力したいと考えています。弊社はレンダーではないので、弊社の最大の価値とは橋渡し役をすることだと考えています。(Tan 氏)

将来のプラン

キャッシュバックモデルとモバイル決済の提供は、Fave 独特のものでは決してない。東南アジアは決済市場のパイを奪い合うモバイル決済のプレイヤーでひしめき合っている。例えば GrabPay、Go-Pay、ApplePay などだ。

だからこそ戦略的なパートナーシップが重要なのだ。昨年、Fave は Grab と提携を結び、これによって Grab の店舗が Fave に加入し、GrabPay が支払方法の1つとして統合されることとなった。つまり、Fave の店舗は Grab ユーザの追加的な流入を受けるだろうということである。

多くの Fave ユーザは自身の Grab ウォレットを Fave に接続しました。取引がなされた際は、その1米ドルは Grab が処理し、弊社がお手伝いする店舗が処理し…そしてこれはより効率的なやり方でもあるのです。(Neoh 氏)

Tan 氏は Fave が対処することができる、市場における非効率性を見ている。それは、決済業者が自身のネットワークに店舗を加えるために割いている時間と労力だ。

4人も5人も店舗と話をしています。店舗を獲得するのは大変な仕事です。(Neoh 氏)

Neoh 氏は Grab と結んだパートナーシップを他の決済業者とも結ぶというビジョンを描いている。つまり、店舗は多様な支払い方法にアクセスするために、Fave にのみアプローチすればよくなるということだ。

Fave のユニットエコノミクスはプラスだが、同社はまだ利益を上げていない。来年フィリピン、タイ、ベトナムに進出しようとしており、店舗ネットワークのインフラを構築するために、リサーチと開発に投資を続けている。

同社はシリーズ B ラウンド以降、急速に成長している。ビジネスは9月以来、一定のバーンレートで2.5倍に拡大している。Sequoia Capital、Venturra Capital、SIG Asia Investment がリードした B ラウンドで2,000万米ドルを調達した。

Neoh 氏と Tan 氏は同社がシリーズ C のプロセスを開始したと明らかにしたが、潜在的な投資家や調達額については固く口を閉ざし、前回のラウンドを「大きく上回る」額を調達するつもりであると述べるにとどめた。

同社はすでに投資家から、特に新たな市場への参入のために関心を持たれている。Neoh 氏はこれを3つのカテゴリーに分類している。成長のためにテクノロジーに目を向けているオフライン店舗ネットワークのオーナー、コスト削減のために次世代の商業テックを探している決済企業、そして Grab と Fave のパートナーシップと同様の、すでに持っている店舗ネットワークに加えることができるコンシューマーウォレットである。

彼らは弊社がシンガポールやマレーシアでやり遂げたことを目にし、それを他の市場でどう加速させることができるのかを見たがっています。(Neoh 氏)

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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