脱コーヒーの狼煙上がるーースタバが目論むレストラン版AWS「ゴーストレストラン2.0」戦略を考察する

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ピックアップ記事 : Starbucks wants to create the AWS for restaurants

ニュースサマリ:7月22日、米Starbucksが外食事業者向けのクラウドベースのソフトウェアを開発するBrightloomとの提携を発表した。同社は注文から受け取り、顧客データ分析に基づくオペレーション最適化までの一貫したソリューションを提供する。

今回の提携を通じて、Starbucksは自社技術ノウハウをライセンス供与という形でBrightloomへ提供する。また、StarbucksはBrightloomの株式を取得し、取締役を置くことが決まっている。Brightloomの前身は、サンフランシスコを拠点とした自動サラダバー「Eatsa」。

Eatsaではモバイルアプリでの事前注文、もしくは店頭に置かれたタブレット端末を使いオリジナルのサラダを注文。

最初の注文の際に顧客はオンライン・アカウントを作るステップがあり、通うたびに過去の注文履歴からオススメのサラダの組み合わせを提案してくれる仕組みを確立した。注文した商品はロッカー型の受け取り口でピックアップする。

顧客とのタッチポイントに店頭スタッフとの接点がないことや、調理プロセスの半自動化が行われていた点からロボット・レストランや自動サラダバーと称され反響を呼んだ。

しかし自社チェーン展開にスケール限界を迎え、Brightloomに企業名を変更し、システム外注企業として再出発をした。Brightloomを導入するレストレンはEatsaのようなオペレーションの自動化を図ることができる。

現在、Starbucksが展開する約80カ国の市場のうち、50%でモバイルアプリを展開しているという。一方、モバイル注文/ピックアップシステムを実装しているのは唯一8カ国。まずはこの展開国数の拡大をBrightloomとの提携によって目指すことが当面の目標となる。

話題のポイント:本記事のポイントとなるのは、Starbucksが「次世代ファーストフード店」を作る可能性です。

Starbucksは実店舗ビジネスで大成功を収めていますが、Brightloomのように自社商品を提供し続けるコンテンツ提供側からプラットフォーム企業の市場ポジションへ移行したい意図を感じます

背景にはレストランの“仮想店舗化”のトレンドが挙げられます。最近ではゴースト・レストランと呼ばれるようになった領域です。

ゴースト・レストランとは調理場だけを持ち、メニューをUberEatsに代表されるフード配達サービスに載せて販売するレストラン事業モデルを指します。ウェイトレスの人件費を無くし、店舗縮小により不動産コスト削減に繋げるオンデマンド配達時代の新たな飲食ビジネスの形と言えます。

StarbucksとBrightloomが見据える仮想店舗は「ゴースト・レストラン2.0」です。

どんなブランドや個人経営の料理人であってもメニューと調整プロセスさえクラウドにアップロードすれば世界中に店舗を持てる業態をここでは指します。

従来、シェフの技量によって提供メニューに制限がありました。

しかしEatsaで実現されたような調理プロセスが半自動化された店舗では、メニューと調理手順、素材さえ現地で揃えば顧客の欲する商品をどんな店舗でも提供することが可能になるでしょう。たとえば東京に店舗を構える日本料理屋のメニューが米国の地方店舗でも楽しめる具合です。

顧客がいつでも自分の好きな料理を、どの店舗へ行っても楽しむことができる飲食チェーンが各都市に誕生する可能性です。

海外で飲食店ライセンスを取らずともメニューさえクラウドサービスに提供すれば、世界中に出店できるモデルをゴースト・レストラン2.0と本記事では呼びます。Brightloomの現在のクラウドサービスにメニュー提供機能が追加されれば夢ではないでしょう。

現在のゴースト・レストランの考えでは、未だ自社で調理場やシェフ、配達サービスとの連携を手配する必要があります。

しかし2.0の概念が普及した世界ではメニューさえ提供すれば世界中の店舗に自動展開されます。店舗側は調理メニュー工程をシステムに読み込ませて味を再現するだけ。

あらゆるブランドや料理人がクラウドを通じて手軽に店舗展開できるような世界。この未来では世界中の飲食ブランドを集めた複合型フードコンテンツを扱う新たなファーストフードチェーン業態が展開されているはずです。

従来のファーストフードチェーンとは違い、商品メニューは自社開発せず世界中からクラウド経由で調達。メニュー提供者と売上を分配するモデルが考えられます。店頭担当者は問題なくシステムが動くかを確認、顧客に問題があった場合に対応するスタッフのみを置いておくだけです。

話を一度整理します。

どんな事業者でもクラウドにメニューをアップロードするだけで店舗展開できる仮想店舗の概念が「ゴースト・レストラン2.0」。この考えに基づいて顧客に最適なメニューをその場で提案・調理する未来のファーストフードチェーン業態が登場する流れです。

そしてこうした未来の飲食業界を支えるクラウドベースのソフトウェアが必須となります。この市場ポジションをStarbucksとBrightloomは狙っていると考えられるのです。このソフトウェアを指して“レストラン版AWS”と呼びます。

レストラン版AWSの考えが普及するには実店舗を運営する事業者が必要となります。

先述した次世代ファーストフードチェーンの運営母体が必要となるのです。そこでStarbucksが店舗を所有・運営することが考えられます。

Eatsaの失敗の最大の原因が高額な出店コストでした。不動産の賃貸費用をまかなうと膨大な投資が必要となります。しかしStarbucksの巨大資本であれば逃げ切れる勝算が出てきます。

クラウドと店舗の両方を抑えられば、Starbucksは次世代飲食業界の川上から川下までの全てを提供する一大プラットフォームへと進化を遂げられるでしょう。

加えてロボットを用いた調理の完全自動化や自動運転車の普及による配達自動化も進めば、完全クラウドベースで運営される無人店舗の展開が可能になります。完全自動化された店舗は圧倒的にオペレーションコスト削減に成功し、十分な利益率を確保できる想定です。

こうした自動オペレーション化された店舗時代を見据えつつ、StarbucksはBrightloomの構想に乗っかる形で統合クラウドプラットフォームの市場立ち位置を勝ち取りたい算段なはずです。

世界中で店舗オペレーションの自動化が進んでいる現状を見据えた次世代のレストラン業態。その中枢を担うのがクラウドであるレストラン版AWS。クラウドをフル活用した店舗が次世代ファーストフードチェーンの姿なのです。

飛躍した遠い未来の話という印象をお持ちかもしれませんが、無人店舗とAIクラウド技術、商品のパーソナライズ化のトレンドを見越せば5-10年以内に登場するコンセプトだと感じています。

事実、競合は多く誕生しています。同じくシアトル拠点のMicrosoftは同社クラウドサービスであるAzureベースの店舗技術開発をしていると噂されています。

Amazonは無人店舗Amazon Goの展開を強めています。市場検証が済めば、Brightloomの戦略同様に他社向けに無人店舗技術の外販を狙ってくるでしょう。Amazonが店舗向けAWSを立ち上げることができれば、世界のクラウド市場を寡占することに繋がります。

さて、こうしたGAFMAの参入するソフトウェアが主導する次世代店舗市場にStarbucksも参戦することが本ニュースで決定的となりました。どの企業が市場リーダーになってもおかしくないでしょう。

今後5-10年以内に、Starbucksがオーナーの新ブランド、ロボット・レストレンチェーンが誕生していても不思議ではありません。

日本の大手小売・飲食企業がこうした”黒船”がもたらす無人店舗化や次世代レストラン業態の流れにどう順応していくのかにも注目が集まります。

Image Credit : Howard LakeRicky Aponteshinji_wBrightloom

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