サプライチェーン管理SaaSのZenport、プレシリーズAラウンドで資金調達——商品を軸にしたステイタス管理で、物流効率化のさらに向こうへ

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Image credit: Zenport

サプライチェーン管理を効率化するクラウドプラットフォーム「Zenport(ゼンポート)」を開発・運営する Zenport は、プレシリーズ A ラウンドで資金調達したことを明らかにした。このラウンドで新規に参加した投資家は、REALITY ACCELERATOR、三菱 UFJ キャピタル、エンジェル投資家で LayerX 社長の福島良典氏(Japan Angel Fund から)、三井住友海上キャピタル。

既存投資家としては、2017年7月のシードラウンドに参加したグリーベンチャーズ(現在の STRIVE)と、ジェネシア・ベンチャーズも、今回ラウンドに参加している。Zenport は今回のプレシリーズ A ラウンド単体での調達金額を明らかにしていないが、前回シードラウンドと今回プレシリーズ A ラウンドを合わせた調達額の合計は1億5,500万円となる。

Zenport は、エンジニアである加世田敏宏氏(現 CEO)らにより、2015年7月に設立(創業時の社名は、Sendee)。貿易や国際物流最適化の B2B SaaS に事業をフォーカスすることになった経緯は、以前の記事に詳述した。当初はターゲットユーザを商社にするのか、フォワーダーにするのかが定まっていなかったが、荷主をメインに据えたサービスに落ち着いた。

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ターゲットユーザが定まってからもマイナーピボットを繰り返し、当初は貿易や国際物流業務のための管理ツールだった Zenport はサプライチェーン全体を管理できるツールへと進化した。国をまたいで、あるいは、会社をまたいでのやりとりだけなら物流管理で済むかもしれない。しかし、例えば、輸入商社の中では、社内の異なる部署間で、物流にとどまらず商品に関わるさまざまなステイタスの共有が必要になる。

そこで Zenport では、商品の企画から販売に至るまでの一連のプロセスをワンストップで管理できるようにした。商品を軸にして、ロット単位で最新ステイタスを記録し、複数部署や関連会社横断で情報を共有することができる。商品のステイタス更新は手動のほか、商社などに導入済の在庫管理システムなどからデータをエクスポートして反映することも可能だ。将来は API 連携により、リアルタイムでステイタス更新できる機能の実装も視野に入れている。

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多品種小ロットでサプライチェーンに多数の企業が絡んでいる業界では、サプライチェーンが分散化しシステム化が遅れており、それこそが Zenport のスイートスポットと言える。この条件にはまりそうな業界としてあげられるのは、例えばアパレル業界。さらに、大企業では、商品が〝動く〟際に関連するプレーヤーも多くなり、Zenport がサプライチェーン管理を効率化できる効果も大きなものとなる。多品種小ロットの商品ラインアップはあらゆる業界で増えつつあり、これが Zenport のユーザ獲得に追い風となっている。

クラウドとか、SNS とかの考え方を、もっとビジネスよりの文脈に組み込んでいったらどうなるか。簡単に国を超えたコミュニケーションができるようになるのではないか。(加世田氏)

Image credit: Zenport

確かにサプライチェーンを通じた商品のステイタス管理には、言語依存の大きな情報のやり取りは存在しない。定量的な情報をわかりやすくリアルタイムで伝えることができれば、国境や言語を超えた商取引はもっとスムーズになるだろう。Zenport は現在、日本語と英語で利用可能だが、ユーザからの需要に応える形で、現在ベトナム語や中国語に対応するインターフェイスも開発中だ。現在、中小規模の商社数社で契約を前提としたトライアル運用を実施していて、今後、より大きな規模の企業でのトライアルが控えている。

この分野の競合を見てみると、国際物流だけにとどめるなら、アメリカの Flexport や日本の shippio などがそれにあた流が、Zenport がサプライチェーンにまで領域を拡大していることから、DNX Ventures らが支援する Haven、ERP 大手 Infor が買収した GT Nexus(現在は Infor Nexus)、近鉄エクスプレスが買収した APL Logistics などに近いかもしれない。

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