Appleが秘密裏に進める領域は「AR」と「IoT」ーー2020年のAppleハードウェア戦略を紐解く

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ピックアップ: This screenshot might be the first implicit confirmation of Apple’s AR headset

ニュースサマリー:AppleがARヘッドセットの開発プロジェクトを進めている噂は兼ねてからリーク記事として報じられてきた。過去数年、同社はAR技術の特許を取得し、アイデアを練ってきたのは各メディアの報道を見ると明らか。

事実、Tim CookはARをスマートフォンと同規模の非常に大きなイノベーティブなアイデアと考え、2017年には1,000人規模でエンジニアがこの技術に取り組んでいると報じられた

Bloomberg』や『CNET』は、Appleが2019年内に生産準備を整え、2020年には出荷できるような発表をするだろうと予測。先日の発表会を見ればこの予測は外れたことになったが、ARヘッドセット開発の確たる証拠リークが今回出回った。

iOSディベロッパーであるSteve Troughton-Smith氏(Twitter名)のつぶやきでは、開発途中のAR機材のテスト利用手順が載っているスクリーンショットが投稿されている。このつぶやきからApple社内でARヘッドセットの市場投入へ向けた開発が本格化していることが分かる。

 

https://twitter.com/stroughtonsmith/status/1171571825475825666?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1171571825475825666&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.theverge.com%2F2019%2F9%2F10%2F20860023%2Fapple-ar-headset-starboard-garta-luck-franc-holokit

ファイル名は「StarBoard」、プロジェクト名として「Garta」と名付けられている。iOS 13にビルドされており、もはや本格リリースの半ばに差し掛かっている状態だと言える。リークされたスクリーンショットからウェアラブル端末であることが想像できるという。

ARデバイスに加えて小型トラッキング端末の開発を思わせる証拠も見つかった。iOS 13のコードを調査している中で、「中央にAppleロゴのある小さな円形タグ」の画像が明らかになった。さらにFind Myアプリ内に、恐らくタグで物事を追跡するための新しい「アイテム」タブが発見されたとのこと。

こちらも兼ねてから噂をされているAppleの新製品だと思われる。Apple Storeで販売されている忘れ物防止トラッキングIoT「Tilt」を真似た製品であると予想されている。

「5G」と「サービス企業化」

話題のポイント: 「AR」と「IoT」の開発情報からAppleが描く2020年以降の製品ロードマップが垣間見れます。大きく2つ。

1つは5G時代での覇権。来年の秋には5G対応のiPhoneも市場投入するとされるApple。いよいよやってくる高速通信社会ではARやVRが遅延のストレスなく利用できる環境が整います。そこで新時代の覇権を握ろうとしているのがAppleです。まさしくAR端末は5G時代を代表するハードウェアになるでしょう。

Appleの常套手段なのが競合製品が投入されるのを分析してから後発で一気に巻き返す戦略。「AppleWatch」はFitbitを、「HomePod」ではAmazon Echoシリーズを追いかけるように市場参入しました。

それではARやMRグラス端末市場はどうでしょうか。Snapの「Spectacles」やMicrosoftの「Hololens」、「Magic Leap」、近々リリースされる「nReal」などが多数出揃っています。

各社とも絶対的な市場解を持っていない点は、時計型ウェアラブル端末や音響デバイスの市場創成期と似ています。まさにAppleが製品投入を考え始める時期です。

こうした市場環境を分析した上で、圧倒的に洗練したUXを提供する用意ができた時点で市場シェア獲得に走ると考えられます。この市場投入時期で最適なのが5G対応端末が登場する2020/2021年辺りであるとも考えられるでしょう。

2つ目はAppleのサービス企業化。つい先日、Appleの製品発表会が開催されました。ゲームサービス「Apple Arcade」や、動画ストリーミングサービス「Apple TV+」が発表されました。

4.99ドルという価格や、Appleハードウェア製品を購入すると1年間無料で使えるApple TV+の顧客獲得戦略は、Appleがサービス企業へと変貌を遂げている証拠と言えます。

他市場ですが自動車製造の限界を早々に予測し、サービス戦略を基軸にしたFordと同様、Appleもハードウェアからサービス企業へと変貌を遂げていると言える発表でした。

AR端末のような新時代の全く新しい領域ではない限り、競合企業にすぐにハードウェア開発技術はすぐにキャッチアップされてしまいます。そこで既存市場で戦い抜くために多数のサービスから収益化を目指しているのがAppleです。

さて、ここでIoTの話に戻りましょう。筆者も使っている忘れ物トラッキングIoT「Tile」は1個20ドル程度の低価格IoTで、1年で利用電力がなくなるため買い換える必要があり、サブスクIoTとも呼べる代物です。ちなみに累計調達額が1億ドルを超える大型スタートアップです。

Appleが開発中であるとされるIoTも同様の仕様になると考えられます。低価格で販売可能なため、前述したApple TV+の1年無料サービスと同様のキャンペーンを通じて大量に市場に流通させることもできるでしょう。

iPhone、iPad、Macbookを購入すれば無料で付いてくる「忘れ物防止サービス」という謳い文句で小型IoTを配布することが想像できます。サービス企業としてのAppleにとって、最適な端末カテゴリーであると言えます。もはやIoTではなくサービス事業の一貫としての利用価値が非常に高いのです。

このように「5G」と「サービス企業化」の2つが、Appleが考える2020年以降のロードマップの中心思考になることは間違いないと感じます。

Image Credit: Laineemaloca

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