米クレカの負債総額は8,700億ドルーーHappy Moneyが取り組む「Sad Money」問題を考察する

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ピックアップHappy Money Raises $70 Million At A Valuation Of Nearly $500 Million

ニュースサマリー別記事でもお伝えした通り、アメリカ発のFinTechスタートアップ「Happy Money」は9月5日、シリーズDにて7,000万ドルの資金調達を公表している。

同社は資金を貸したいクレジットユニオン(信用組合)とクレジットカードの負債を返済したいユーザーを結びつけるマーケットプレイスを展開。返済したいクレジットカードに紐づけられるユーザーの信用度(クレジットスコア)に応じて融資額が提示される仕組みだ。クレジットユニオンから融資された資金はクレジットカードの負債に対する支払いへ用いられる。

資金調達元のCMFG Venturesは親会社にCUNA Mutual Groupを持ち、同社は米国における95%以上ものクレジットユニオンとビジネス的関係性を持ち合わせているという。そのため、Happy Money社にとっては、今回のラウンドにて資金面に加えパートナーシップ強化にも繋がる。

話題のポイント:Happyの対義語はSad。そこでHappy Moneyはクレジットカードの利用による負債を「Sad Money」として表現しています。クレカ負債の問題は根深く、前回記事とは別の角度でこのサービスについて考察してみたいと思います。

Federal Reserve Bank of New Yorkが今年2月に発表したデータによれば、米国内のクレジットカード負債総額は8,700億ドルにも及ぶとしています。また、CNBCによれば米国民の半数以上を占める55%がクレジットカード負債の返済を余儀なくされている状況であるとしています。

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また、こちらはFederal Reserve Bank of New Yorkが2015年に発表した、クレジットカードの負債をキャッシュで返済できず、家財などの取り立てという結果に至った割合を示しています。

bad debt getting better

グラフは明らかに年々上昇し続けており、2015年には全体の13%ほどが「取り立て」という結果を迎えています。言い換えれば米国におけるクレジットカード保有者の10人に1人は負債に悩まされ最終的には支払いが不可能になっているという状況があるということです。

Happy Moneyが指すSad Moneyが溢れている状況です。なぜこういった市場になってしまっているのでしょうか?

ここで米国市場におけるクレジットカード負債返済の実情を説明するため、日本の状況を挙げてみようと思います。一例としてエポスカードなどを運営する丸井グループの2018年Q4における資料を見てみましょう。

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丸井グループ2018Q4

2018年Q3のデータを見ると、リボ払いや分割払いの総額が5,480億円と上昇傾向にありますが貸倒率は1.60%と米国に比較して低い水準を満たしていることがわかります。

ではなぜ日本市場においてはクレカの貸倒率が低く健全な経済市場が保たれているのでしょうか。経済産業省が公開しているデータによれば、2016年における民間最終消費支出の内、クレジットカード(デビットや電子マネーも含む)による決済は20%のみであり、80%はキャッシュによる取引が行われているということが分かります。

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経済産業省「キャッシュレスビジョン」

次にFederal Reserve Bank of San Franciscoが2016年に発表した消費活動における主要決済手段のグラフを見てみましょう。キャッシュが全体の26%を占め、クレジットやデビットカードが70%近くを占めています。

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Federal Reserve Bank of San Francisco

つまり、逆なんですね。日本においては確かにクレジットカードの負債返済は貸倒率が低く健全なように見えますが、最終支出の内に占める割合が現時点で非常に少ないことが健全な市場を維持している要因と言えます。

逆に米国では、最終支出がクレジットカードで多く占められているため、利用額に比例して貸倒率も高水準を維持していると考えられます。これは金額を考えずクレジットカードを使いすぎている文化というよりも、少額でもキャッシュを日常利用しない文化が引き起こしている問題であると感じます。

日本も今後、キャッシュレスが推進されるわけですが、将来的にこういった「返せない問題」がより顕在化してくるかもしれません。その際にテクノロジーがどのような対策を取るのか、金融ビジネスは多くの事業者が参入してくる激戦区なだけに、負の課題は注目ポイントになると思われます。

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