2億人規模のメッセンジャー「Kik」がまさかのサービス停止ーー暗号通貨「Kin」開発・SECとの訴訟問題に注力

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ピックアップMessaging app Kik shutting down as company focuses on Kin, its cryptocurrency

ニュースサマリー:9月24日、カナダのオンタリオを拠点の「Kik Messenger(キック・メッセンジャー)」がサービス停止を予定していると創業者であるTed Livingston氏がMediumで発表した。今後創業者らは暗号通貨「Kin」の開発及び今年6月より開始したSEC(米国証券取引委員会)との訴訟問題にリソースを集中させるとしている。Kikのユーザー数は2億人。

Kinはデジタル経済プロジェクト「Kin Ecosystem」の一環で発行された暗号通貨。2017年に実施したICO(イニシャル・コイン・オファリング)では総額1億ドル(約110億円)を調達。その際に発行されたKinは、Kikを代表とするSNSやその他外部アプリ上で自由に流通可能なトークンとして活用できる。

Facebook Calibraがステーブルコイン「Libra」をWhatsAppやMessenger上で流通させようとしているが、SNSを含む複数アプリにまたがり流通するトークンという意味ではKinは先駆けであり、既に18カ月間運用されている。しかし、SECが訴訟するのは、まさにこのICO及び暗号通貨Kinを理由としている。

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話題のポイント:今年6月、Kinの運営元企業である「Kik Interactive」は上述のICOを発端とする“未登録証券販売”の疑いでSECから起訴されています。SECによるとKinは証券に該当し、その場合同社は証券取引法に基づいて同通貨を運用しなければならないという趣旨です。

これに対しKik Interactive側は真っ向から反論。理由は暗号通貨業界の発展のためです。

一度Kinが証券だと判定されてしまうと、SECはそれを前例としてその他多くの暗号通貨を次々と取り締まる可能性があり、暗号通貨業界が大きく縮小されてしまう可能性が出てきます。つまりKinは業界発展を阻害してしまわないためにも、SECと本格的に闘うことを選んだともいえるのです。

Kik Interactiveは「暗号通貨Kinは投機を煽る株式のような証券とは異なる。複数のプラットホームで利用されるべく作られた通貨性の高いトークンであるため証券には該当しない」という旨の主張をしています。業界発展の動きは自社サービスの生き残りにも繋がります。証券法に基づいた運用はKinトークン利用のUXを大きく損なうため、同社としては何としても回避したい意向とも言えます。

これに伴い同社は従業員数を100人規模から約19人ほどに縮小する予定。Kinの開発及び訴訟問題にリソースを集中させることで、上記の問題に徹底対処する考えを示しています。

KinのMAS(Monthly Active Spender:Kinが送金される月間回数)は200万あるそうです。また、Kinを利用できるアプリ数は合計で50以上。Kin Ecosystemは着実に形になり始めているのです。

以下は創業者のTed氏による公式のMediumで発表した3つの方針です。

  • Kinを何十億というユーザーに届けるため、取引処理時間を1秒程度に抑えられるようにしていく
  • Kin Ecosytemを全ての開発者が利用できるようにし、各エンジニアが開発する製品のグロースに繋げる
  • モバイル・ウォレットを開発し、Kinの購入を簡易化させる。楽しく・シームレスにKin Ecosytemを利用できるようにする

上記から察するに、創業者らはKin開発に関して非常に前向きな行動指針を固めていることが分かり、また、訴訟に関して言えば今後の暗号通貨市場の行方がKik InteractiveとSECの訴訟結果によって大きく変化することが予想されます。

Image Source&Credit : Kik, Kin, Pixaby

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