
Image credit: Rob Matheson / MIT
いざという時、広い池や運河、裏庭のプールに架かる橋が必要なことはないだろうか?MIT の研究者と Amsterdam Institute for Advanced Metropolitan Solutions(AMS Institute)が開発したロボットなら、そのニーズに応えられるかもしれない。ロボットのようなボート、略してロボートと呼ばれるこのボートは、様々な配置の組み合わせをすることで「変形できる」よう設計されたプラットフォームだ。
MIT の Rob Matheson 氏がブログへの投稿で述べているように、センサー、スラスター、マイクロコントローラー、GPS モジュール、カメラその他のハードウェアが装備された長方形の物体であるこのロボートは、MIT と AMS Institute が共同で実施している Roboat プロジェクトの成果である。プロジェクトの長期的な目標は、アムステルダムに160以上ある運河で人やモノを運び、歩行者の混雑緩和に役立つ橋を自動で組み立てるようにすることだ。
最近の開発状況をみると、最新アルゴリズムがプランニングと追跡を処理して、ロボートの一団が障害物を避けながら水上を移動できるようになっており、3年にわたる共同作業の成果がここに表れている。MIT CSAIL ディレクターの Daniela Rus 氏によると、対象を定めて繫ぎ止めをするラッチ機構を使い、予め定められた進路を移動できる3D 印刷のプロトタイプを制作したという。Rus 氏は次のように述べている。
ロボートは別のロボートと結合と切断ができるようになりました。アムステルダムの路上での活動を水上に移せるようにしたいと考えています。

Image credit: Rob Matheson / MIT
ロボートには、コーディネーターとワーカーという2つの基本要素がある。さらに4つのプロペラ、無線マイクロコントローラー、自動ラッチ機構、センサーシステムを備えている。接続されているすべてのワーカーを認識して通信するコーディネーターには、その他にナビゲーション用 GPS、ローカライゼーション、配置、速度を計算する機能を担う慣性計測装置を備えている。
つなげられているロボートは、元々の形状と新たに作る形状との違いを比較し、その場にとどまるか移動をするかを判別する。その後、分離して新たな配置を作る時間が割り当てられる。その際は、衝突しない場所を事前に計算し、最終目的地に向かう最短の進路を見分ける。多くの最適化技術を利用することにより、コーディネーターが最終的な場所へ各ロボートを動かすために配置と速度を計算し、安全な進路を特定するのに100ミリ秒もかからないと研究者たちは述べている。
MIT のプールを舞台に行われた実世界の実験では、論文の共著者がロボートを直線でつながれた状態から再構成させてみせた。ロボートは側面で互いにラッチされ、前後で接続されて直線や L 字型になった。プロトタイプは長さ1メートル、幅50センチだったが、将来はアルゴリズムをスケールしてロボートを長さ4メートル、幅2メートルにするほか、豪雨など厳しい気象条件に対処しつつ、運河の壁のような滑りやすい建造物につなげられるようシステムを頑強にする課題が残されている。
同チームでは年内に、RoundAround と呼ばれるプロジェクトの一環としてアムステルダム市中心部にある NEMO 科学技術博物館と開発中の地域を結ぶ60メートルの運河をまたぐダイナミックな橋を展開したいと考えている。計画通りに進捗すれば、ロボートは運河で巡回運航してドックや乗り場で乗客を乗降させたり、途中で障害物を見つけたら停まったりルート変更したりすることができるようになる。
MIT の Carlo Ratti 教授は次のように述べている。
これは、世界で初めての自動ボートで作られた橋となります。船が行き来しているため、開閉式の可動橋やとても高い橋を作らなくてはならず、通常の橋を建造するのはきわめて高価になります。ところが、水上で漂いながらダイナミックで機敏に反応する建造物になる自動ボートを活用することで、運河の両岸をつなぐことができるのです。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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