【Airbnbハック】 ECブランドが仕掛ける“体験する宿泊事業”ーー 新コンセプト「Airbnb as a Service」とは?

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2019.10.6

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ECブランドによるチャネルハックが起きています。顧客へ商品・サービスを届ける媒体の費用対効果を圧倒的に効率化させる手法が一般化し始めている印象です。

小売ブランドが大きなメリットを受けるチャネルハックの分野は往々にして不動産。たとえば2015年にサンフランシスコで創業した「b8ta」の例が挙げられるでしょう。累計調達額は3,850万ドルに及ぶ大型スタートアップです。

b8taは月額2,000〜3,000ドルで店舗の一画を各ブランドの販売商品の展示スペースとして割り当てる不動産事業を展開しています。自社で不動産を購入することはないため、いわゆる又貸しのビジネスモデル。EC事業者が手軽に一等地店舗に商品を並べる機会提供をおこなっています。

月額サブスクリプションモデルのためb8ta側は一定売上が担保されます。従来、店舗ビジネスを展開する事業者が収益をあげるには商品を売りさばく必要がありました。しかし、販売売上に左右されずに一定の売上予測が可能になったのです。出店ブランド側も多額の出店費用リスクを負う必要がなくなるWin-Winの関係構築ができました。

さて、b8taの事例は「店舗チャネル」のハッキングです。店舗を持てなかったECブランドが柔軟な料金体制と出退店契約を通じて手軽に顧客へ商品体験を届けられるようになりました。

そして昨今、ECブランドがAirbnbを通じた「宿泊チャネル」のハッキングを行なっている傾向にあります。

ホスピタリティをマーケティング戦略の武器にする

brown wooden center table
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Airbnbに「出店」するECブランドたちが徐々に登場してきました。ここから簡単に4社ほど事例をピックアップ記事から引用する形で挙げたいと思います。

  • Casa Mami: デザイナーズECブランド「Casa Mami」はAirbnb宿泊事業を戦略の主軸に据えている企業。特別にリノベーションされたデザイナーズハウスにAirbnb経由で宿泊ができます。ハウス内に置かれている全ての家具や日用品はECサイト上で購入できる導線ができています。
  • Utility Canvas: 日用品ECブランド「Utility Canvas」は都市部で宿泊場所を探している人ではなく、バケーション客をターゲットに宿泊箇所を提供。1泊85ドルから滞在が可能。最大6人が宿泊でき、ビーチすぐ側でゆったりと過ごせるそう。部屋には同ブランド商品が置かれており、滞在中に自由に使えるとのこと。
  • Floyd: Eコマース事業者である家具ブランド「Floyd」。 本記事執筆時には14拠点の宿泊部屋を展開。ピックアップ記事によると、Airbnbを利用している旨を前面に推し出しているとのこと。
  • Marine Layer: 衣料品ブランド「Marine Layer」はAirbnbに3つのアパートルームを展開。実店舗を持っており、宿泊部屋は全て同ブランドが主要都市で展開する小売店の上階にあります。 部屋の内装や雰囲気はMarine Layerが展開する服のラインアップに合うように調整されています。 また、Airbnbsに滞在する人は、店舗で15%の割引を受けられる特典付き。 Marine LayerはAirbnbと公式のパートナーシップを結んでいませんが、サイト上ではまるで自社運営の宿泊事業のようにサービスを展開しているのが特徴です。
woman in the kitchen preparing to cook
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ここまで紹介した4つのブランド達は「ホスピタリティ・ブランディング」を戦略軸に置いている企業です。

ホスピタリティマーケティングの利点は、単に製品だけを売るのではなく、“ライフスタイル全体を売る”ことに重きを置いています。配置する全ての生活用品のキュレーンレベルを高め、ブランド商品を通じてどのような生活を送れるのかを体験させます。

なぜホスピタリティ・ブランディングを重視しているのかという理由に次のデータが挙げられます。冒頭に紹介した記事よると、ミレニアル世代の84%が一般に認知されているブランディング手法を好まない/信用しないと回答しているそうです。一方、自分たちの価値観と一致し、個々のアイデンティティに適合する「本物のブランド」に魅了される傾向にあるとのこと。

単調な商品機能の説明ではなく、「体験」を求める時代になってきたことが上記のデータから伺い知れます。こうした時代のソリューションの1つが「店舗」であり、最近登場したのがECブランドによる宿泊事業といえるでしょう(Marine Layerのみ実店舗所有)。

ソフトウェア化するAirbnb

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Image Credit : © Airbnb, Inc.

ブランドがAirbnbを活用する強みは「ハコ」がすでに用意されている点でしょう。不動産を購入することなく、ホスト宅を一度内装を加えて、生活環境を整えるだけで宿泊事業として展開が可能となります。

こうした既存ハードウェア(ここではホストが持つ不動産)にSaaSの概念を持ち込み、宿泊 × ブランドの流れに最適化した業態を「Airbnb as a Service」と筆者は呼んでいます。

ビジネスモデルの観点からでもWin-Win-Winの3方良しの関係を築けます。

ホスト側からすれば、信頼できるブランドが部屋をデザインしてくれるため、高品質な滞在環境を実現できるでしょう。滞在客からの評価も高くなる傾向になるでしょうから、必然的に検索結果上位に選ばれ、平均流入客も比較的高くなると予想されます。

Airbnb側にとっては、ブランドが出店してくれることから、さらなるサービス認知度の向上、先述したホスト側のメリット増大が見込めます。また、ブランド監修の滞在体験は単価を多少高く設定することで、収益増加が狙えるかもしれません。

white fabric sofa set with coffee table
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ブランド側からすれば、初期投資に当たる部屋のデザイン費用さえ負担すれば世界中のあらゆるAirbnbネットワーク上に商品体験できる拠点を構えることができます。なお、初めから自社ブランドと雰囲気の合う部屋を持つホストにリーチすれば、内装コストも省き、宿泊施設に置く商品コストのみでで宿泊事業へと進出できるでしょう。

ちなみに先述したデザイナーブランド「Casa Mami」のように家を丸ごとリノベーションすることを除き、部屋の内装変更は中堅ブランドにとってみれば巨額の支出にはならないでしょうし、事実上ブランド商品を適切に配置するだけで事業展開できそうです。

また、Walmartに買収された小売ブランド「Bobonos」が展開するガイドショップ機能を持つような拠点として働くことも考えられます。Bonobosは店舗にほとんど在庫を持たず、顧客が店舗で商品を体験・購入の決定をしたあとはECサイト経由で購入プロセスを踏んでもらい、購入品は後日の自宅配送される仕組みを採用。

こうした店舗戦略を模倣し、在庫スペースを確保しなくてはならない店舗の代わりにAirbnbを使う活用法が確立されているのです。ミレニアル世代が望まないマーケティングへ莫大な費用をかけるのではなく、1ライン1商品を各滞在拠点に設置するだけでマーケティングチャネルを確立できます。

加えて、暮らしの中で商品体験をおこなうため、定量データでは測れない多大なインプレッション率を弾き出せるのも魅力です。どのような商品に興味を持ち、どのような生活をしているのかを定性的な視点から測ることができるはずです。

このように、宿泊施設の流動性はAirbnbの登場以来、世界中で高まっています。日本参入を果たしたOYOなども、こうした文脈のなかでECブランドの宿泊事業として利用される可能性は高いかもしれません。Yahoo!や楽天、BASE、ZOZOに出店するオーナーさん達が手軽に自社ブランド商品を生活体験できる場所として、様々な宿泊事業者と提携する未来はちょっと楽しそうです。

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