約60社が集う起業家コミュニティ「千葉道場」、50億円規模のファンドを設立——シードとレイター投資に特化、高みを目指す起業家創出へ弾み

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左から:石井貴基氏、千葉功太郎氏、原田大作氏
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、10月29〜30日に開催されている B Dash Camp 2019 Fall in Fukuoka の取材の一部。

エンジェル投資家の千葉功太郎氏が率いるスタートアップ支援コミュニティ「千葉道場」は30日、千葉道場として初のファンド「千葉道場ファンド」を組成したことを発表した。ファンドのファーストクローズの段階で、LP として参加したのは大和証券グループ、みずほ銀行、ディー・エヌ・エー、ミクシィ、フォースタートアップス、リバネス、エンジェル投資家複数、千葉道場からイグジットした起業家複数で、調達金額は25億円。最終的には50億円規模の調達を目指すとしている。

千葉道場に参加するスタートアップを中心に、千葉氏がこれまでエンジェル投資家として出資してきた契約を千葉道場1号ファンドに移管しているため、今回初めて組成されるファンドはテクニカルには、千葉道場2号ファンドとなる。千葉道場ファンドの GP (ゼネラルパートナー)には千葉功太郎氏、パートナーにはオンライン学習塾「アオイゼミ」運営の葵を Z 会による買収でイグジットした石井貴基氏、フェローにはフリマアプリ「スマオク」運営のザワットをメルカリによる買収でイグジットした原田大作氏が就任する。

千葉道場の生い立ちを紹介する、石井貴基氏(右)と原田大作氏(左)
Image credit: Masaru Ikeda

石井氏と原田氏は2015年1月に北鎌倉の浄智寺で産声をあげた千葉道場の立ち上げメンバーであり、エンジェル投資家としての千葉氏の投資先の中でも最初にイグジットを果たしたスタートアップを経営してきた。千葉氏の名前を冠するコミュニティであるため、千葉氏が駆け出し起業家らにノウハウを伝授しているように見られがちだが、実際には、起業家らが持ち回りで課題を設定し、参加する起業家らが〝ハード・シングス〟を共有しあったり、互いにビジネスの高みを目指しあったりする場なのだという。

今回、千葉道場ファンドを組成するに至った背景について、千葉氏は THE BRIDGE の取材に対し次のように語ってくれた。

これまでエンジェル投資家として約60社に投資してきたが、これでいわば、スタートアップ投資の PoC が終わったかな、という感じ。まさに、エンジェルという〝趣味の投資家〟から千葉道場ファンドという社会性を持ったファンドに仕組み化していくというフェーズだ。私自身も、エンジェル投資家から進化したい。

千葉道場ファンドには、典型的なスタートアップ向けファンドとは、いくつかの違いがある。まずコミュニティの機能として生まれたファンドであるため、ベンチャーキャピタルとは異なり、あくまで、コミュニティとしての千葉道場に集うスタートアップが事業継続できるようにすることを前提としたものであること。ドローンスタートアップについては Drone Fund から出資するため、それ以外の非ドローン領域が千葉道場ファンドが出資対象とするバーティカルとなる。

そして何より千葉道場ファンドを特徴付けるのは、シードステージとレイターステージへの出資に特化している点だ。逆説的に言えば、ミドルステージについては対象としないということになる。この理由についても千葉氏に聞いてみた。

スタートアップの入(シード)と出(レイター)の両方をサポートするということ。レイターが近づいてくると、起業家は IPO の準備をしながら資金調達しなければならないので、本当に大変になってくる。市場に資金は潤沢にあるにもかかわらず、レイターで資金調達が大変なのは、意思決定をしてもらうのが大変だから。千葉道場ファンドがレイターの調達に加われば、他の投資家の意思決定を促せるアンカー的な位置づけになれるのではないか。千葉道場の LP と組んで、シンジケート出資できる可能性もあるだろう。

千葉氏の言うレイターステージでの出資は、海外でよく聞かれる〝スケールアップ〟の支援に類するものだろう。IPO を果たしたスタートアップの中には、バリュエーションが数十億円程度のケースはある。いわゆるユニコーン(バリュエーション1,000億円規模)よりもまだ小さい。日本では、レイターステージでファンドからの大型調達が難しいために、バリュエーションが小さい段階でも IPO してしまうケースが多いことも一因だが、これはこの拙稿でも書いたように、ファンドの大型化などにより事態は改善されつつある。

世界的に受け入れられるような、そして、社会に大きなインパクトを与えられるようなスタートアップを目指せば、必然的にそのスタートアップのバリュエーションは大きなものになるだろう、というのが千葉氏の見方だ。小粒なスタートアップで満足せず、日本からもデカコーン(バリュエーション1兆円規模)が多く生まれるような環境を作りたい。そんな高みを目指すためなら、あらゆる努力や協力を惜しまないという千葉道場のビジョンにも相通ずるものがある。

千葉道場に集うスタートアップ約60社の累積調達金額は1,097.2億円(デット235.4億円を含む)で、バリュエーションの総和は約5,100億円。千葉道場ファンドと Drone Fund の出資先合計約90社と今後新たに追加される出資先から、2025年までにユニコーン25社・デカコーン1社、2030年までにユニコーン100社・デカコーン5社を生み出すことを目標に据えている。

スタートアップ支援にあたっては、さまざまなハンズオンが必要になる。千葉道場ファンドには、知財支援で iPLAB Startups、人材支援(CxO 採用)で ForStartups、ディープテック領域支援でリバネスが、それぞれパートナーとして参加している。日本やアジアのディープテック・リアルテック領域のスタートアップ支援を得意とするリバネスと組むことで、この領域のスタートアップと千葉道場のインターネット・テクノロジー系が絡み合うことが可能になり、千葉道場とリバネスの双方にメリットが期待できるという。

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千葉道場には、アカツキ CEO の塩田元規氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの高宮慎一氏、Treasure Data 創業者の芳川裕誠氏と太田一樹氏、リアルテックファンド代表の永田暁彦氏、ラクスル CFO の永見世央氏、リバネス代表取締役グループ CEO の丸幸弘氏ほか、多数の経営者・プロ投資家(エンジェルではなく、LP にリターンをコミットしている投資家)・イグジット経験者らがメンターとして参加している。

Image credit: Chiba Dojo Fund

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