スタートアップ専用銀行「Mercury」がa16zから2000万ドル調達、その人気の理由とは

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ピックアップMercury banks $20M for its banking service aimed at startups

ニュースサマリー:スタートアップ特化のオンライン銀行「Mercury」は26日、シリーズAにて2,000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはCRVが参加し、既存投資家のAndreessen Horowitzも同ラウンドに参加した。また新たにWill Smith’s Dreamers Fundや複数の個人投資家も参加している。

Mercuryはスタートアップに特化したオンライン限定の銀行サービスを展開している。銀行業としての基本的な機能のほかに、スタートアップのニーズに特化したサービス設計やインターフェースの構築を施している。

TechCrunchによれば、同社が創業した2019年4月の初週にて1,500名の事前登録あり、月間40%の増加率を記録しているという。

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話題のポイント:Mercuryのようなオンライン展開の銀行は「チャレンジャーバンク」と呼ばれています。銀行業務ライセンスを取得し、既存銀行と同様のサービスを提供するオンライン銀行を指します。実店舗を持たずオンラインのみで金融業を完結させる近年のフィンテック市場にて急成長を遂げている事業エリアです。

著名なチャレンジャーバンクにはイギリス発の「OakNorth」「Monzo」「Revolt」、ドイツ発の「N26」が挙げられます。大半がヨーロッパを発祥であり、グローバル市場へ進出中だという印象です。

米国発のチャレンジャーバンクではミレニアル世代をターゲットした「Chime」などが台頭しつつありますが、ヨーロッパ市場の盛り上がりには劣る感じがします。

では、米国において需要がないのかというとそんなことはなく、たとえば上述したChimeは2018年時点で開設口座数が100万を突破しており、「チャレンジャーバンク」の概念がユーザーに浸透し始めている過渡期といえます。

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Chimeは完全オンライン型、デビットカードの発行も実施している

ChimeがB2Cモデルなのに対し、今回取り上げたMercuryはB2Bなため、上述したOakNorthと同様のビジネスモデル確立を目指しています。その上でスタートアップ領域に特化していると受け取れます。

スタートアップ向けに法人クレジットカードの提供をおこなう「Brex」は米国でも大変注目されているスタートアップですが、ビジネスモデル的にMercuryはBrexのデビットカード版ということになるでしょう。

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Mercuryの競合として「Silicon Valley Banks」や「Wells Fargo」など、老舗銀行の中でもスタートアップに対しも口座提供を行ってきていた銀行が挙げられるでしょう。ただ、上記2社は決してスタートアップに特化しているわけではありません。そのため、スタートアップのための銀行であるMercuryに創業初期の企業からの問い合わせが集まることが予想されます。

では、実際Mercuryの競合となるのはだれか。同社の競合はどちらかといえばテクノロジーベースで「銀行業」に踏み込む企業が当てはまるでしょう。たとえば「TransferWise」を将来的な競合と考えるべきではないでしょうか。

手数料を極限まで抑え国際送金を可能とするサービスとして著名なTransferWiseですが、新事業として「TransferWise Boarderless」を始めています。同サービスでは、海外にいながらもある特定の通貨を保有可能な銀行口座を開くことができ、現段階で40以上もの通貨を扱っています。

加えて特筆すべきなのは、米国において公共料金の支払いや給料の振り込みなどに必要なACHや銀行間送金に必要なWire Transferの番号が割り振られている点にあります。これは日本の銀行にはなく、米国独自のシステムなため、たとえば米国への留学生が大学側へ授業料支払いをする際などに非常に役立つことが想定されます。

海外にいながらもある特定の通貨を保有可能な銀行口座を開くことができ、現段階で40以上もの通貨を扱っています。TransferWise Boardlessは法人向けに同様サービス「TransferWise Boardless for Business」を提供しています。

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まさに利用面だけをみれば、Mercuryをグローバルな口座へ進化させた形といえるでしょう。しかし、一見「銀行業」的な枠割を果たしているように見えるボーダレスのサービスですが、一般的な「銀行」の定義とは少し違った形態で運営されています。

同社は銀行ライセンスを取得し銀行業を営んでいるのでなく、データ上の資金移動を行う電子マネー事業者として「銀行業」と同等のサービス提供に成功しているのです。

銀行ライセンスの有無では、Mercuryが目指しているスタートアップのための「銀行」とTransferWiseが提供するボーダレス「銀行」は直接競合とまで言い切れないかもしれません。

しかし事業内容で比較すると、現時点でTransferWiseがC向けであるという印象。これからB向けサービスの拡大も同時並行で進めるとなった際は、十分競合となりえると感じますし、既にC領域で地位を獲得しているアドバンテージは多くあることが想定できます。

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