今年で4回目を迎えた札幌No Maps、街を使ったMaaS体験・地域に根差したペインに取り組むスタートアップが注目を集める

SHARE:

本稿は、10月16日〜20日に札幌市内で開催されている「No Maps 2019」の取材の一部。

今年も札幌に No Maps がやってきた。スタートアップやデジタルトレンドの一大情報発信地へと変えた「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」にインスピレーションを受け、2016年のパイロット版を皮切りに始まったこのイベントも今年で4回目を迎えた

「まちに、未来を、インストール。」を合言葉にしてきただけあって、今回も札幌市内の各所を利用した最新テクノロジーの実践が目立つ。スケジュールの関係で、No Maps 今回は最初から最後まで見ることはできなかったのだが、いくつかを取り上げてみたい。

15日夜に札幌市内で開催されたレセプション。No Maps は「初音ミク」の生みの親、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之氏が、北海道からより多くのスタートアップを生み出す機運を作りたいと呼びかけ開催されるようになった。

伊藤氏の挨拶に続き、札幌市出身で MIT メディアラボ副所長の石井裕氏による基調講演。「山を登るのではなく、誰も見たこともない山を造ろう」と、イノベーションの極意を語った。

最先端の技術を一般の人々が手にできる、試せることに主眼を置いた No Maps では、街中で MaaS が提供されているのも目立った。群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)は2017年にも札幌大通公園を周回する公道で自動運転の実証実験を披露している

一度に運べる人を増やす意味から車体はワゴン車になり、GPS 情報に連動して話しかけてくれるロボットも備えられた。前回はプレスなど一部のみの公開だったが、今回は一般市民も試乗参加ができた。試験走行コースも、札幌市中心部から豊平川の土手まで行って戻ってくる3キロほどのコースが設定され、前回よりもより実践的になっている。

2年前には No Maps に先んじてバイクシェアリングの Mobike(摩拜単車)が札幌に進出したが、広大な土地に人が住む北海道においては交通が大きな課題であることから、MaaS(mobility as a service)は常にホットなバーティカルと言えるだろう。今回は e スクーター勢を代表して、国内からは LUUP、海外からはデジタルガレージが日本進出を支援する Lime がプレス向け試乗会を開催した。

筆者は今年の SXSW の際にオースティン市内で e スクーターを多用したが、e スクーターは小型であるため動力も非力なので、登り坂に弱いのが欠点。札幌市内は平地が多いのでその点の問題がないが、e スクーターが本領を発揮するのは、むしろ、ラストワンマイルアクセスに乏しい北海道の地方都市かもしれない。


No Maps では例年、産業技術総合開発機構(NEDO)が「Dream Pitch with 起業家万博」を開催している。北海道を中心にスタートアップ12チームが登壇したが、技術やビジネスモデルが評価され表彰を受けたスタートアップ8チームを紹介しておきたい。

ゼロスペック【最優秀賞】【NICT 賞(起業家万博全国イベント、北海道地区代表)】

暖房や湯沸の家庭や事業所では、北海道をはじめ北日本では灯油が多用される。灯油販売店は、必要な時に灯油が切れないよう、灯油残量にかかわらず、灯油販売店は定期的に契約先を訪問し灯油を補充しなければならない。ゼロスペックは、灯油タンクに独自開発の IoT デバイスを装着することで、灯油残量を外部モニタできるようにした。残量に応じて灯油販売店は契約先に配送に向かえるので、作業効率が上がり、高齢化に伴う人手不足の問題解決に役立つ。

RAINBOW【優秀賞、聴衆賞】【NEDO TCP(Technology Commercialization Program)賞】

脳梗塞を発症すると、脳の一部が損傷を受けることで後遺症が残り、その後の機能回復の多くはリハビリに頼っている。RAINBOW では、自家骨髄幹細胞を脳梗塞を受けた脳の部位に直接投与し、脳細胞の回復を促すというもの。幹細胞は体内のあらゆる細胞に分化できる特性を持つが、治療に自家細胞を使うことで免疫排除されないため、投与された脳の部位に長期にわたって滞在し生着するため、慢性期(発症から時間が経った患者)への治療にも有効と見られている。

RESA【優秀賞】

RESA が開発する「満室ナビ」は、公開されている賃貸不動産の情報、設備要件などを収集し、不動産オーナーが市中の満室物件と設備や条件を比較できるサービスだ。入居者ニーズをとらえ、各設備の保有率などを把握することで、空室に悩む不動産オーナーがどういう対策を施せば、借りたい人を増やせるのか、家賃を上げても貸せるのかなどがわかる。昨年の Open Network Lab にはライトブレインとして採択、今年1月に RESA に満室ナビの事業が引き継がれた。

チーム:LINAS【No Maps賞】

チーム:LINAS は、組み込み型マイコン「Arduino」のための AI アクセラレータ「FPGA2I シールド」を開発。AI が活用される多くのシーンにおいては、データをセンサーなどで取り込み、それをアップロードしてクラウドやサーバで AI を運用しているケースが多い。より簡単かつ安価に AI 運用するにはエッジ(センサーが置かれている現場)で動作させることが望ましいが、それに適した AI アクセラレータが存在しなかった。Arduino に対応させることで、プログラミングの知識がある人なら操作もしやすい。

FP-MYS【No Maps賞】

FP-MYS は、相続や贈与に関するトラブルを避けるための相談プラットフォーム「レタプラ」を開発。相続や贈与を受ける可能性がある家族が、相続税試算額、相続対策を専門家(税理士や会計士などの士業)に相談することができる。相続や贈与は家族内のセンシティブな内容を伴うため、知人や地元の士業に相談しづらいことが多い。一方で、士業にとってはつながりにくい相続人・被相続人と繋がることができ、効果的な営業開拓チャネルとなる。将来は、計画的な相続・贈与プランを立てるサポートを展開。

BREAKTHROUGH【審査員特別賞】【Mt.Fuji イノベーションエンジン賞】

BREAKTHROUGH が開発する「Soko-co(ソココ)」は、林業に特化した ICT プラットフォームだ。ケータイの電波が届きにくい山間部で利用されることを想定し、通信にはマルチホップ接続可能な近接間通信を採用している。「枯損木」「調査木」などの木情報、「つるがかり」「かかり木」「蜂の巣」「クマの糞」などの危険情報、「土場」「木材はい番号」などのアイコンを、任意の地点に登録し同グループのユーザーと共有できるほか、高精度 GPS による行動軌跡の表示や記録などの機能を持つ。

ファーストコネクト【審査員特別賞】

歯科業界の人材紹介サービスを提供するファーストコネクトは、歯科医師や歯科衛生士らによる口コミで、患者が自分に合った歯医者が探せるサービス「プロレコ」を運営。患者同士による評価から生じるステマやサクラの可能性を排除し、専門知識のない一般人の口コミによるミスリードを防ぐ効果がある。歯科医院とユーザーの最適なマッチングを実現することで、ユーザが自身の求める歯科医院を選択することができるとしている。

MILE SHARE【審査員特別賞】

MILE SHARE は、航空会社が発行したマイルをユーザ間で譲渡・譲受できるマーケットプレイスを構築し、市価よりも安い価格が飛行機に乗れる環境を提供。MILE SHARE では世界中からマイル提供者を募り、同一アライアンスの異航空会社間でマイルが使えることを活用、さまざまなフライト需要に応える。マイル譲渡者と譲受者の双方から10%ずつをシステム利用料として徴収。IVS 2019 Summer in 神戸の「LaunchPad」ファイナリスト

----------[AD]----------