爆伸びする東南アジアのネット経済、その裏で深刻化するテック企業と国家の対立

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ピックアップ:Southeast Asia’s internet economy to hit $300 billion by 2025: report

ニュースサマリー:ロイター誌によれば、2025年までに東南アジアのインターネット経済の市場規模は3000億ドル(約32兆円)規模に達するという。情報源はGoogle及びシンガポール州立ファンドTemasek Holdings、そして国際ビジネスコンサルティングBain & Companyの共同調査によるもの。

本調査における「東南アジア」に含まれるのは、インドネシア・タイ・ベトナム・シンガポール・マレーシア・フィリピン。そしてインターネット経済とは、具体的にはライドシェアやフードデリバリー 、Eコマース、バンキングなどのネット上の商取引全体を指す。

同調査によれば、2019年時点での市場規模は1000億ドル(約11兆円)、すなわち3000億ドル規模への到達は、今後5年間での3倍成長を意味する。5年で3倍というとやや過大評価気味にも思えるが、2015年時点の数値は400億ドル、つまり4年で2.5倍成長しているという過去のデータから考えると、当然の予測とも言える。

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Image Credit : ロイター

話題のポイント:東南アジア市場の全体的な成長について分かったところで、もう少し具体的に、地域やマーケットについても具体的な数値を追っていきましょう。注目したいのは東南アジアの各国ごとのGMV(Gross Marchandize Volume・流通総額)を比較したグラフです。GMVとはEコマースプラットホーム上で販売された商品の価格に、その販売数を掛け合わせて算出された数値です。

真っ先に目が行くのはインドネシアの突出した成長度合いとマーケット規模。2015年時点の数値は当時二位のシンガポールと大差ありませんが、現在では既に2倍以上差をつけており、かつ10年後の2025年には4倍以上の差をつけると予想されています。その主要因が2億を超える人口にあることは言うまでもありません。

上記データから、東南アジアのインターネット・エコノミーの拡大を支える要素の一つに人口ボーナスがあるということは明らかです。人口動態で見ても、インドネシアやフィリピン、フィリピン、マレーシアなどの国は綺麗なピラミッド型であり、ネットに馴染みやすい若者が多く、また増加傾向にあることが伺えます。

ただし現在東南アジアのユニコーン企業に名を連ねる6社のうち、3社がシンガポール発のスタートアップです(Grab, Lazada, Trax)。その点、自国の人口は少なくとも、先駆けて発展しスタートアップのハブとなったシンガポールは、今後も東南アジアの人口増加の恩恵を享受し続けるでしょう。(※残り二社はインドネシアのGo-JekとTraveloka、一社はフィリピンのRevolution)

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人口増加とインターネットの発展に恩恵を受け爆発的に成長し、社会もその恩恵を受けますます豊かになっている東南アジア諸国ですが、一方で近年、巨大テック企業と規制当局との対立が目立つようになってきていることも事実です。

マレーシアのMyCC(競争委員会)は、去年ライド・シェア企業Grabが最も強力な競合の一つであったUberを買収して以降、同社に対して監視の目を強めていました。そしてついに今週木曜日、同社の競争法違反に対し、2000万ドル(約22億円)ほどの罰金を提案しました。追及されたポイントは、Grabドライバーが競合サービスを利用することを、同社が意図的に抑制していた点です。

またシンガポール政府は今週、FacebookやTwitterなどのソーシャル・メディアに対し、政府が問題だと判断したコンテンツを修正・削除させることを目的とした「フェイク・ニュース法」を施行しました。同法はインターネット上の自由に関して人権団体による批判も受けています。

世界規模で見ても、独占やソーシャル・メディアの在り方などに関して、巨大テック企業と政府(規制当局)との間で大きな対立が生じることは今や珍しくありません。テクノロジー企業が急成長する東南アジア市場でも、同様の流れが起きているのです。

しかし成長産業だからこそ、規制当局は社会にネガティブなインパクトを与えかねないテック企業に対して、積極的に介入しているとも見受けることができます。今後両者が良好な協調関係を築き、健全な自由競争や社会公益に関してベクトルを合わせることができるかが、将来的な東南アジアの発展度合いを大きく左右することでしょう。

Image Source&Credit : Reuter, Pixcel

 

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