民泊は東京五輪の宿泊問題をどう解決するのか

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Image Credit : Airbnb Japan

ピックアップAirbnb is sponsoring the Olympics until 2028 for a reported $500 million

ニュースサマリー:宿泊予約プラットホーム「Airbnb」は11月18日、国際オリンピック委員会(IOC)と公式パートナー契約を結んだことを発表した。本パートナーシップ契約は、向こう9年間のオリンピックとパラリンピックにて有効。具体的には来年の東京、2022年の北京(冬季)、2024年のパリ(夏季)、2026年のミラノ(冬季)、2028年のロサンゼルス大会において適用される。Financial Timesによれば、契約金は5億ドルに上り、Airbnbが2028年まで宿泊施設提供のサポートすることになるそうだ。

IOC会長のThomas Bach氏は今回の契約について以下のようにコメントしている。

本パートナーシップによって、Airbnbが選手村に取って代わるような大きな動きはありません。観光客やアスリートの家族、運営関係者の宿泊場所を提供することに終始します。開催都市が当イベントのためだけに一時的に宿泊施設を拡充するといった非効率な経費を削減するでしょう。

向こう9年間の開催都市にリストされている5つの都市は、Airbnbのプラットフォーム上で特に旅行者とホストの多いホットスポット。Airbnb共同創業者のJoe Gebbia氏は今回のパートナーシップに関し以下のようなコメントを残している。

これまでのオリンピックでAirbnbは宿泊場所を提供してきていました。しかし、公式にサポートを行うのは今回が初めてです。開催5都市には20万以上のAirbnbホストが存在していますが、今回のIOCスポンサーシップによって、この数はさらに大きく上昇していくと期待しています。

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Image Credit : Pexels

話題のポイント:東京では数年前からオリンピックの宿泊施設不足問題が叫ばれていました。みずほ総合研究所が16年に行った調査では、オリンピックが開催される2020年には4.1万を超える客室が不足するという予測もあったほどです。

そこでかねてから注目が集まっていたのが民泊です。

東京五輪におけるAirbnbの仕事は主に2つ。1つは企業提携やイベント民泊制度を駆使した宿泊場所の拡充。そしてもう一つは体験型プログラムを通した訪日客の満足度向上です。

2017年に2,700万人だった訪日客数は、2020年にはオリンピック需要も期待されて4,000万人に達するとされています。そのため東京都市部では建設ラッシュが続き、民泊やゲストハウスはもちろん、コンテナホテルや船をホテルにする「ホテルシップ」などの対策も検討されるほどの大急ぎの準備が続いています。

日本では2018年6月15日、民泊新法の施行により、民泊ホストになるためには政府への届け出が必要となりました。その影響で一時的に物件数が激減、一部報道によると8割以上の物件数がAirbnbのサイトから削除されたといいます。

しかしその後、Airbnbはソフトバンクとの提携を通し、企業へのホスト提供などのモデルを構築。方針転換が功を奏し、Business Insiderによれば、2019年6月に過去最高の室数を記録しているといいます。ラグビーW杯においては、自治体との提携により手続きを簡素化、一時的な無免許民泊提供を許可する「イベント民泊」制度を駆使することで利用客は前年の1.5倍の65万人に増加しています。

これらの実績を踏まえると、Airbnbは国内の企業や行政と上手に連携し、サービス拡大を図る実績・ノウハウを既に蓄積していることが分かります。東京五輪開催まで1年を切っているものの、本パートナシップにより、Airbnbのホスト数をさらに増加させることができれば、当問題の緩和に大きく貢献することでしょう。

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Photo by John Tekeridis on Pexels.com

また、Airbnbによって検討されている施策の一つに、同社サービスを利用したアスリートらが訪日客らに直接パフォーマンスを見せる体験型プログラムの実施が挙げられます。Airbnbには既に体験サービスの提供機能も実装されていますが、そこにIOCのオリンピアン枠が追加されることになるそうです。

当プログラムで参加者は直接アスリートのパフォーマンスを観覧したり、指導を受けることができます。一方、アスリートはプログラムを通し収入を得られる設計になっています。訪問客が直接アスリートと触れ合うことでオリンピック競技を体験できます。体験者が高い満足度を得られる非常にクリエイティブな施策であることに加え、アスリートにきちんと対価が支払われる公正さを兼ね備えた取り組みです。

つまり、Airbnbは単なる宿泊サービスとしてだけでなく、スポーツエンターテイメント・教育サービスのプラットホームとしても東京五輪をサポートするということです。提携後初の本番である東京五輪から既にこのような施策を用意している点から、Airbnbの積極的な姿勢が伺えます。サービス自体は2020年夏から開始する予定だとされています。

今回の東京五輪の客室・体験プログラムの提供が好評であれば、2028年までのオリンピックにも良い影響を及ぼすことができるかもしれませんね。

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