“第二のLibra”「Celo」を解説しようーージャック・ドーシー氏ら支援のステーブルコイン

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Image Credit : Celo

ピックアップAnnouncing The Great Celo Stake Off

ニュースサマリー:ベルリンとサンフランシスコを拠点に活動するステーブルコイン開発企業「Celo」が、テストネット・ベータ版のローンチを前に、独自ブロックチェーンのバリデータ(検証ノード)を決定するイベントを実施する。

Celoは金融サービスにアクセスできない地域において、価格の安定したステーブルコインと、利便性の高いスマホ・ペイメント・アプリを提供することで、金融包摂の実現を目指す企業。製品ビジョンは現在世界中の金融規制当局から大きな反発を受けるFacebook Libraと似ている。

同プロジェクトは今年4月、a16z CryptoやPolychainから計2,500万ドルの巨額の資金調達を実施。投資家の中にはFacebook Libraに対し否定的な意見を述べ、先日Libra協会からの脱退を表明したSquareのCEOジャック・ドーシー氏の名前があることも興味深い。

話題のポイント: Celoはステーブルコインに加え、流通基盤となるパブリック型のブロックチェーンと送金用のスマホ・アプリを開発しています。本稿ではCeloがFacebook Libraとどのように重なり、どのように異なるのかなども、噛み砕いて説明していきます。

まず、Celoのステーブルコインは複数発行される予定です。基軸通貨としてCelo Goldという、手数料支払いや価格安定化メカニズム、コミュニティのガバナンス(投票など)に用いられるトークンがあり、その他に「Celo USD」や「Celo EURO」「Celo YEN」と言った各国法定通貨に価格ペッグしたステーブルコインが発行されます。それだけでなくCeloでは企業や地域が独自のステーブルコイン(例:企業通貨・地域通貨)を発行することも可能にするといいます。小さな経済圏の創出も実現させます。

また、Celo Goldは価格安定のためリザーブ・カレンシーとしての役割を持ちます。言い換えればCelo Goldの価値がその他ステーブルコインの価値を保証するという意味です。

Celoはステーブルコインらの価格を一定に保つため、独自の価格の安定化メカニズムを開発しています。各ステーブルコインの価格がペッグすべき通貨から乖離する度に、ステーブルコインの市場供給量や利用手数料をアルゴリズムで変化させ、市場の需要を調整することで、価格を一定に保つモデルです。

上記が暗号通貨の大きな課題の一つである”価格変動幅の大きさ(ボラティリティ)”に対するCeloの解決策ですが、もう一つ同プロジェクトは暗号通貨のUXの低さという問題にも解決策を提示しています。それが、ユーザーの携帯番号を暗号通貨アドレス化する技術です。

従来、暗号通貨でユーザー間送金を行う場合、私たちはウォレットをダウンロードし、公開鍵・秘密鍵のペアを生成し、受信者に対し16進数の公開鍵アドレスを共有する必要があります。この仕組みを理解することはユーザーにとって負担となっており、利用促進の大きな障害となっています。

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Image Credit : Celo

しかしCeloを利用して相手に送金する場合、相手の電話番号を入力するだけで送金が完結することになります。イメージとして「Cash App」や「Venmo」に近いものになるとCEOのRene Reinsberg 氏は述べています。仮に相手が未だCeloのウォレットを開設していなくても、相手の電話番号をもとにウォレットが作成されるまで、お金はプロトコルによって一旦保持されます。

現在、パブリック・ブロックチェーン上のサービスが使いづらい要因は3つの欠点が挙げられます。「ブロックチェーンのパフォーマンスの悪さ(トランザクション処理性能の低さ)」「暗号通貨のボラティリティの低さ」「UXの悪さ」です。以上の内容を踏まえると、Celoは主に後者2つの問題にアプローチしているプロジェクトだということが分かります。

ちなみにトランザクション処理性能に関して、Celoブロックチェーンのパフォーマンスは現在のEtheruemとさほど変わらず、秒間13件ほどのトランザクションしかさばけないとされています。この点は、今後改良が加えられていくのでしょう。(VISAは秒間1,700件ほど)

冒頭で少し触れたLibraと似ている点として、ステーブルコインを活用した様々な金融アプリケーションを構築可能なプラットホームであることが当てはまります。また、CeloブロックチェーンはEtheruemのフォークであり、EVM(Ethereum仮想マシーン)と互換性があるため、Etheruem上で開発しているアプリをCeloで開発することは非常に容易だとされています。

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Image Credit : Celo

ターゲット市場もLibraと同様に途上国を狙っており、特にインフレが深刻化する南米やアフリカ地域をメインとしています。興味深い実績として、Celoはすでに寄付支援団体「Give Directy」への技術提供やタンザニアの難民キャンプでのフィールド・ワークなど、様々な活動を行なっている点が挙げられます。

2019年に入り、中国のデジタル・キャッシュ構想やLibraなどのニュースが巷を騒がせ、規制当局なども含め大きな議論が生まれています。引き続き”ステーブルコイン”が国家規模で注目されることは間違いないでしょう。

そんな中、未だテストネット段階ではあるもののCeloの独自のスタンスには惹かれるものがあります。ただし、Facebookほどのネガティブな経歴とイメージを持つわけでもないですが、プロダクトの正式ローンチに差し掛かる中で、規制当局とも本格的に対峙していく必要性に迫られるでしょう。そのなかで、どのようにLibraと違いを示していくのかが同社の今後を大きく左右することになるかもしれません。

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