
ニュースサマリ:国際物流ソリューションを手掛けるShippioは11月11日、第三者割当増資の実施を公表した。引受先となったのはアンカー・シップ・パートナーズ、環境エネルギー投資、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DBJキャピタル、Delight Ventures、East Ventures、Sony Innovation Fund、YJ キャピタル、500 Startups Japanの9社。調達した資金は10億6000万円で、各社の出資比率、企業評価額などの詳細は非公開。これに合わせて同社の社外取締役にグロービス・キャピタル・パートナーズの南良平⽒が就任する予定。調達した資金は人材強化に充てられる。
今回出資したアンカー・シップ・パートナーズは国内で船舶投資を手掛けるファンド。プロジェクトファイナンス方式で船舶保有SPC(特別目的会社)を設立し、そこを通じて投資した船舶を海運会社に貸出すことで出資者や融資者に利益を分配している。近年では豪華客船「飛鳥」への事業投資も手掛けているが、今回はここのファンドではなく、本体からのシナジーを見込んだ事業出資となった。また、既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、DBJキャピタル、East Ventures、YJ キャピタル、500 Startups Japanについては初回・前回出資に続いてのフォローオン参加となる。
話題のポイント:デジタルフォワーダーのShippioが大型調達を実施しました。
まずそもそもあまり馴染みのない「フォワーダー」とはどういうお仕事なのでしょうか?調べてみるとこれは国際輸送を扱う貨物利用運送事業者で、自身は船舶や航空、鉄道などの運送手段を持たない事業者、となっています。事業者で言えば日本通運やFedExなどで、もしかしたら個人の並行輸入等でお世話になった方もいらっしゃるかもしれません。荷主と実際に運送する事業者の間に立って仲介する役割です。

で、ここの業務、大変なアナログ作業が残っているそうなのですね。Shippioの代表取締役、佐藤孝徳さんもプレゼンテーションの場所でしばしばお話されていましたが、Faxとかがオペレーションの現場に残っているような状況で、例えば見積もりに100時間かかることもあるそうです。
無駄です。しかし、例えば輸入する品物にフィギュアが入っていたとして、それは玩具なのか、それとも別の用途のものなのか、こういった細かいチェックをクリアするためには相当の属人的な経験が必要になるので、どうしても時間がかかってしまうんですね。
Shippioはこういった非効率を解消するためのクラウドで、情報の一元化や可視化、共有といったオンラインの得意なソリューションを提供した結果、例えば上記で挙げたような100時間かかる見積もり業務を数時間に短縮するところまで成功している、というお話でした。
同社の創業は2016年6月で、今年10⽉末時点で108社のユーザーが利用しており、⽶国・欧州・中国・ベトナム等、合計30カ国に対して実際の輸出⼊のオペレーション完了という実績を積み上げています。

ちなみにこの分野で大きなインパクトを持っているのがFlexportです。ソフトバンクのビジョン・ファンドから10億ドル規模で出資を受けたことから話題になったのは記憶に新しいところです。佐藤さんは目指す世界観について「誰もが簡単に輸出入できる世界」と表現されていましたが、ネットによってボーダレスが拡大する現在、それを支えるロジスティクスの効率化は国内外問わず必須であることがわかるトレンドとも言えます。
<参考記事>
2030年に向けて労働人口は確実に減少するという調査結果もあります。現在、まだマンパワーで非効率を押し切ることができたとしても、5年後、10年後にはそれは叶わないかもしれません。特に島国である日本は国際物流なしには自給自足もままならないわけですから、多くのチャンスが眠っているのはよく理解できます。佐藤さんにどうしてShippio以外のプレーヤーが出てこないのか尋ねると、この分野の専門性が参入障壁を高くしているのでは、と回答されていました。
確かに現在、Shippioに在籍している15名ほどのメンバーの顔ぶれをみると一般的なインターネット・カンパニーではお目にかかれない通関士などの専門的なオペレーションチームもいます。デジタルトランスフォーメーションが各分野・バーティカルで発生していますが、そういう視点でもShippioのチャレンジというのは注目度が高いのではないでしょうか。
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