台北で開催されたスタートアップカンファレンス「Meet Taipei(創新創業嘉年華)」から、注目を集めたスタートアップを一気にご紹介

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Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、「Meet Taipei(創新創業嘉年華)2019の取材の一部。

台北市内の花博公園で、14〜16日の3日間にわたって起業専門誌「BusinessNext(数位時代)」らが主催するスタートアップイベント「Meet Taipei(創新創業嘉年華)」が開催された。最終日となった16日は土曜日だったということもあり、平日の日中には時間を割けなかった人々も会場を訪れ、イベントは活況を呈していた。アジアを中心に世界各国からスタートアップ1,700チームあまり、起業家・投資家・エコシステム関係者などのべ7万人が一堂に会する予定。通算で6回目を迎えるこのイベントは、過去最大規模となる見通しだ。

14日に実施された Global Media Pitch のセッションの第一弾(AI とデータインテリジェンス、モバイルアプリ、コネクティッドデバイスと IoT)に引き続き、この日は同セッションの第二弾(トゥモローズテック、フィンテックとメディア、マーテックとコマース)の領域から16チームが登壇。ゲームを楽しめたりエクササイズを促したりする子供向けスマートウォッチ「Team8(フランス)」が優勝、また、商業施設やレストランなどでの行列待ちをアプリでの呼び出しに置き換えられる「QueQ(タイなど)」が SparkLabs Taipei 賞を受賞した。

Team8
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Team8
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QueQ
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QueQ
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NeoStar(創業之星)Demo Show

一方、Meet Taipei の会場ではさまざまな主催者がピッチコンペティションを開催しているが、その中でも特に盛り上がっていたのは NeoStar(創業之星)Demo Show だ。NeoStar Demo Show は、BusinessNext が毎月行っているデモデイ/ミートアップイベントの集大成とも言うべきもので、台湾国内の将来有望スタートアップ30社がピッチした。うち、10社はヘルスケア、マーテック、フィンテックなどに AI 技術を適用したもので、B2B が B2C を上回る年となった2019年を象徴していた。審査員らの評価に基づいて審査がなされた結果、受賞したスタートアップを以下に紹介したい。

【Neo Star 賞1位、Infinity Ventures 特別賞】 Aiello.ai(犀動智能)

Aiello.ai(犀動智能)
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Aiello.ai(犀動智能)は、それぞれお Google や Qualcomm 出身の創業者らにより設立。音声を使うことによって、デジタルな情報リソースにアクセスしやすくしようとする AI スタートアップだ。ホスピタリティや旅行業界でオペレーションや UX を改善することに注力している。同社が開発するカスタマイズ AI 音声アシスタントとクラウドを使えば、ホテルは業務効率やサービスを改善するだけでなく、顧客に合わせてユニークなブランド音声で話しかけることが可能になる。

【Neo Star 賞2位、中華開発創新加速基金(CDIB)特別賞】TMYTEK(稜研科技)

TMYTEK(稜研科技)
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TMYTEK(稜研科技)は、5G に必要なビームフォーミング技術(多数のアンテナ素子を用いて電波を目的の方向に集中させる技術)を4年にわたり研究開発し、ミリ波(mmWave)RFシステム「BBOXTM」をローンチした。5G 市場で最先端技術の開発に従事可能な人材は限定的とされる中、TMYTEK の開発した技術を使うことで、モバイルキャリアやデバイスメーカーが 5G 分野の基礎技術・サービス・デバイス開発を加速できる効果が期待できる。9月には、RF 技術テストプロバイダの ACE(筑波科技)と提携を発表している。

【Neo Star 賞3位、Taiwan Tech Arena(台湾科技新創基地)賞】ITM(国際信任機器)

ITM(国際信任機器)
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IoT のデバイスメーカーやサービスプラットフォームには、データセキュリティの確保と共に分散化の必要性が求められるようになった。ITM(国際信任機器)は、ブロックチェーン対応 IC を開発しており、ブロックチェーンへのトランザクション(取引記録)登録と、高速検索技術の IC 化に成功した。この技術により、パブリックブロックチェーンの帯域幅(トランザクション頻度)の問題が解消され、IoT デバイスのデータをネットワークに載せやすくなる。医療、交通、エネルギーなどの業界へのブロックチェーン技術の適用に注力。

左から: iTrash(晧揚環境)CEO、Infinity Venture Partners 田中章雄氏、Aiello.ai(犀動智能)のメンバー
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なお、スマートシティのゴミリサイクルシステムを開発する iTrash(晧揚環境)は Infinity Ventures 特別賞を受賞した。iTrash は空き瓶や空き缶を回収できるベンディングマシンを開発している。

iTrash(晧揚環境)
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ユーザは飲料を飲んだ後の空き瓶や空き缶をこのマシンに投入することで代金が還元され、台湾版 Suica である Easy Card(悠遊卡)に貯めることができる。上位3位と iTrash は12月上旬にバンコクで開かれる Infinity Ventures Summit に招待される予定。

Canner.io(易開科技)
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また、オープンソースのコンテンツマネージメントシステム(CMS)を開発する Canner.io(易開科技)は審査員特別賞を受賞し、中華開発創新加速基金(CDIB)から投資を受けられる権利を獲得した。

台湾で人気を集める O2O 割引アプリ「RE 紅包」

RE 紅包 CEO の Michael Lin(林翊忠)氏
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RE 紅包
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番外編として、最近、台湾で人気を集める O2O アプリ「RE 紅包(アール・イー・ホンパオ、RE は紅包を英訳した Red Envelope の略)」を紹介しておこう。紅包は中華圏で定着している伝統的なお年玉のような習慣で、この概念をデジタル時代に O2O へと適用するスタートアップやテック大手は、これまで中国を中心に垣間見られた。

2017年7月にローンチした RE 紅包は今年9月の段階でダウンロード件数60万件、台湾国内の実店舗約4,000軒が加盟。ユーザはクレジットカードや現金を使って RE 紅包にポイントをチャージ、ユーザは店頭でバーコードを提示すると商品を購入できる。RE 紅包は店舗から取引成立時に実取引価格の10%相当を送客やマーケティングの手数料として差し引くが、そのうちの4割(ユーザにとっては価格全体の3.5〜4%)がユーザにポイント還元される仕組み。

一度チャージしたポイントは店舗で使ったり、他のユーザにあげたりすることは可能だが、現金として引き出すことはできない。台湾にもキャッシュレス決済の波は訪れており、Google Pay、Apple Pay、Samsung Pay、台湾 Pay、Jkopay(街口支付)、LINE Pay など決済手段は過密になりつつある。事実上のキャッシュバックに相当する機能を持たせることで、RE 紅包は決済アプリとは少し違う土俵で躍進を遂げているようだ。

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