新宿のたこ焼き屋がFAX発注をデジタル化できたワケ、344兆円市場の“商機”とは

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FAX発注から脱却した新宿のたこ焼き屋さん(写真:ハイドアウトクラブ)

「俺だけど、いつものアレ、よろしくね」

これはとある都内の食品卸会社の留守番電話に録音されていた飲食店からの発注内容です。

その会社では、受注担当者が、声を聞けばどのお店からの注文で、その店の”アレ”は何の商品か分かるといいます。実はこのやり取り、特定の会社だけでなく多くの会社で起きている「受発注のよくある光景」なんです。

私たちはこういった飲食店を中心に、FAXをスマホやタブレットに置き換える受発注サービス「CONNECT」を運営していますが、急激に利用者の方の数が増えています。本稿では、アナログな現場で実際に目の当たりにした「小さなデジタルトランスフォーメーション」の実態について共有したいと思います。

B2B取引は、デジタル化が進んでいない

まず、前提としてスマートフォンの普及やテクノロジーの発展によりあらゆるものがデジタル化、効率化されている現代でも、B2B取引はいまだにアナログが主流です。

経済産業省が2019年5月に公開した「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、B2B取引で電子化された市場規模は約344兆(前年比8.1%増)だそうです。一方で、この市場規模は全体のおよそ3割にすぎず、いまだに国内B2B取引の大半の取引がアナログで行われていることになります。冒頭の発注シーンのように、口頭での発注や、手書きのFAX発注がまだまだ主流を占めているのです。

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引用元)『平成 30 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)』のBtoB-EC 市場規模の推移

ではなぜデジタル化が進まないのでしょうか?その一つの鍵に「受発注」というサプライチェーン独特の問題が挙げられます。

たこ焼き屋がストレスを抱えていたFAX発注の実情

当然ですが、現場の店主さんたちはFAX発注なんて早くやめたいのです。

新宿にある24時間営業のたこ焼き屋さんでは、複数の取引先に対してすべてFAXで発注をしていました。毎回、手書きでFAX送信をした後は、発注書をファイルで管理していたためファイル保管場所にも一苦労ですし、何よりFAX機を置くだけで物理的なスペースも割かれてしまいます。発注の際には相手が読み間違えないように字を綺麗に書く必要があったり、お店にしかFAXがないので残って発注する必要があったりと、地味だけど積み重なると辛いストレスポイントが多数です。

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FAX発注から脱却した新宿のたこ焼き屋さん(写真:ハイドアウトクラブ)

また間違いが起こると危ないので、発注業務は店長やベテランスタッフに集中してしまいます。一方、このたこ焼き屋の店長さんはたまたまインスタグラムに流れていた私たちのサービス情報を見て、FAX発注をスマートフォンに置き換えることができることを知って、すぐに切り替える決定をしたそうです。

よくある「こういった店舗ではデジタル機器を使えない」「リテラシーに問題がある」といったイメージは都市伝説で、実は問題はそれとは違う場所にあったのです。

進む受注担当者の職人化

では、インスタを普段からチェックしているような人たちがなぜ、デジタル化を進めないのでしょうか?

当然ですが、注文をするということは「受注側」も存在しています。

留守電やFAXなどのアナログな手段で注文を受ける、卸会社やメーカーなどの受注側にも苦悩はあります。毎日、何百通、何千通、何万通といったFAXによる受信をしており、この処理にコストをかけています。冒頭のように、受注を担当している方が職人化してきている会社も存在し、「いつものアレよろしく」といった留守番電話だけで、何をどの店に送れば良いかわかる担当者もいるため、どんどん属人化されている業務でもあります。

つまり、簡単にやめられないのです。

外から眺めると「早く効率化すればよいのに」と感じていても、急激な環境変化はハレーションの原因になります。しかし、職人的な方が退職されたりするとリスクですから、経営者としてはFAXや電話などでの受注を脱したいという気持ちも強いわけです。

まさにサプライチェーンの「あちら側とこちら側」でタイミングを図る必要性があり、それがデジタル化を阻む要因となっていたわけです。

アナログ業務をデジタル化するための鍵とは?

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FAX発注から脱却した新宿のたこ焼き屋さん(写真:ハイドアウトクラブ)

この裏で面白いお話があります。実は、こういった店舗さんの多くはデジタル化に取り組んだ形跡があるのです。昔ながらの受発注システムの存在です。しかし前述の通り取引は当然、相手がいることなので受発注のやり方は双方にとって良い仕組みであることが重要です。

いきなり「デジタルに完全に変更します」ではなく、アナログ業務で今、活躍している人たちに寄り添いながらデジタルシフトを推進していく必要があるのです。例えば私たちのCONNECTでは、発注側はスマートフォンで統一したとしても、受注側はオンラインシステムでも、従来のFAXでも両方併用できるようにしてあります。

定性的な表現ですが、世の中のアナログ前提の業務をデジタルトランスフォーメーションされていくためには、この「やさしさ」が何より重要な鍵だと考えています。ここでいうやさしさとは、使いやすさであったり、導入のしやすさ、取引先への案内のしやすさなどを含んでいます。この鍵こそ、344兆円の市場規模となったB2B-ECの市場の、更なる成長には欠かせない要素となっていくはずです。

<参考情報>

本稿はFAXをスマホやタブレットに置き換える受発注サービス「CONNECT」を提供するハイドアウトクラブ代表取締役の田口雄介氏によるもの。Twitterアカウントは@yutaguchi。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトされたい