Orange Fab AsiaがFall 2019 Seasonのデモデイを開催、非侵襲の血糖値測定ウエアラブルデバイスを開発するクォンタムオペレーションが優勝

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フランスのテレコム大手 Orange がアジア地域で展開するスタートアップ・アクセラレータ Orange Fab Asia は12日、都内の dock-Kamiyacho(旧:dock-Toranomon)で Fall 2019 Season のデモデイを開催した。東京・ソウル・台北の各都市で展開するプログラムに加え、シンガポールのピッチイベントでの優勝チーム、ジャカルタで開催された NTT Startup Challenge」の優勝チームなど、総勢17チームのスタートアップがピッチを行った。

オーディエンス投票の結果、日本から参加した Quantum Operation 晴れて優勝の座を勝ち取った。 Quantum Operation には、来年5月にパリ市内で開催されるスタートアップ・テックカンファレンス VivaTech への参加権、往復航空券、宿泊券が進呈された。

本稿では優勝チームに加え、デモデイ会場で人気の高かったスタートアップをいくつか見てみたい。

【優勝】スマートウォッチ型血糖値センサー by Quantum Operation(日本 Tokyo Seaoson 12)

非侵襲の小型連続血糖値センサーを開発している。糖尿病患者が、身体を傷つけずに血糖値を測定する手段を提供する。他社の仕組みでは、近赤外線光は血管(グルコース)を通過しないため、レーザを使ったセンサーを使っているケースが多いが、レーザを使うと効果になりデバイスが大型になる。

Quantum Operation は、近赤外線光を使った指紋認証センサーで培った技術を応用し、近赤外線センサーでの血糖値測定を可能にした。これにより、回路の小型化と消費電力の低減が可能になる。同社ではこのセンサーを内蔵した、スマートウォッチを開発中。完成すれば世界初のウエアラブルグルコースメーターとなる。

Kickwαy by Hashilus(日本 Tokyo Seaoson 12)

VR を楽しむには、周囲にトラッキングセンサーを配置したり、ユーザが安全に動き回る必要があったり、一定のスペースが必要になる。池袋のサンシャイン60展望台に設置された「人間大砲」の開発で知られる Hashilus は、省スペースでの没入型の VR が楽しめるマシン「Kickway」を開発した。

ユーザはマシンに捕まって VR を楽しむのとで、動き回る必要がなく省スペースでも体験を楽しむことができる。ユーザがヘッドマウントディスプレイで見ている画像に合わせ、足元が動いて傾いたり、扇風機で風が送られたりする機能が備わっており、ヘッドマウントディスプレイだけを使う一般的な VR に比べ、没入感の高い体験を提供してくれる。

WELT by WELT(韓国 Seoul Season 11)

運動やエクササイズのパフォーマンスを記録・管理するためのアクティビティトラッカー。Apple Watch や FitBit などスマートウォッチ型のものを初め多くのタイプが出回っているが、実に33%のユーザが購入後6ヶ月の間に使うのをやめてしまっているという。着用するのを忘れてしまう、着用していても退屈してしまう、といった理由だからだ。

そこで WELT では、日常的に必ず着用する必要があるものでアクティビティトラッカーを作った。ベルトにアクティビティトラッカーを仕込むことで、着用を忘れる可能性はかなり低くなる。運動量に加え、ウエストサイズや座っている時間の測定、食事習慣(食べ過ぎ)などの情報もトラッキング可能。日本の百貨店や家電量販店でも取扱開始。CES 2020 Innovation Awards に採択。

PICO GO by Brilliant & Company(韓国 Seoul Season 11)

さまざまなスマートホーム用ソリューションを開発してきた Brilliant & Company は、小児喘息患者の症状緩和を狙いとした IoT デバイス「PICO GO」を開発。環境センサー、バイオメトリクスセンサー、ウエアラブルセンサーを搭載しており、喘息患者の症状を測定し、医師が最良の処方を行えるように支援する。

患者自身もまた PICO GO と連動するモバイルアプリを使って、生活習慣を改善し喘息症状を緩和するのにも役立つ。高麗大学医療院、現代グループ系の峨山福祉財団が運営するソウル峨山病院などで臨床試験を実施中。

S.I.T. Technologies/喜徳科技(台湾 Taipei Season 11)

ドイツと台湾を拠点とする S.I.T. Technologies(喜徳科技)は、自動車の遠隔診断と故障予測を提供するスタートアップ。自動車が故障し修理工場に持ち込んだとき、修理にどの程度の費用がかかるのか、どの程度の時間がかかるのかはすぐには判明しない。これは実際に修理する前に症状を診断するまでに時間がかかるからだ。

例えば、運転席のダッシュボードに「エンジンを確認」という警告表示された場合、考えられる原因は複数あるため修理工場は、修理に着手する前にそれを探る必要がある。S.I.T. では同社が提供する技術「uniqueTELEMATICS」を使って、原因の早期発見につなげるほか、故障を事前に予測することで予期しない修理による出費やロスタイムを抑制する。

AVISS by Seadronix (韓国 Seoul Season 11)

自動車を駐車するのが難しいのと同様、あるいはそれ以上に、港で大型船を埠頭に接岸させる際の操船は非常に難しい。通常、港側の担当者からの船と岸との距離を無線で聞き、それをもとに操縦士が操船して接岸させるが、双方の言葉が違ったり距離に対する表現が抽象的で、結果的に事故に至るケースもしばしば見られる。

Seadronix が開発した AVISS(船舶周辺ビューインテリジェントシステム)では、岸に設置されたカメラから AI により接岸対象の船舶を認識し、岸と船との距離を明示的に伝えることで操縦士はスマートフォンに届くデータを元に操船できるほか、自動車の自動駐車機能と同じように、衝突事故を起こさない船舶の自動接岸機能を提供する。ウルサン港の港湾当局、NVIDIA、現代らと協業中。

XTayPro(ベトナム Seoul Season 11)

XTayPro は、国際旅行者を活用した P2P デリバリプラットフォームだ。海外の EC 市場や店頭でしか入手できないものの購入代行サービスはこれまでにも存在したが、配送料金が高かったり関税が高くついたりする。一方で、越境 EC で取引される商品の84%は2kg以下と非常に小型かつ軽量であるため、国際旅行者が手荷物として持ち帰ればコストは抑制できる。

XTayPro では商品購入を希望する消費者と国際旅行者をマッチング。旅行者に訪問先で商品購入を依頼し、帰国後に依頼者に送ってもらう。サービス開始から1年半で45,000人のユーザが登録、プラットフォームを通じた取引額は90万米ドルを超えている。犯罪につながる事象や事故はこれまでに起きていない。ベトナム最大の VC から200万米ドルを調達済。BlaBlaCar との提携を狙う。


Orange Labs Tokyo パートナーシップマネージャーの西川浩司(ひろし)氏は、今回の Fall 2019 Season(Tokyo: Season 12, Taipei/Seoul: Season 11)の終了を受けて、Orange Fab Asia は累積でスタートアップ190社を輩出したと説明。うち2社は IPO、4社は M&A でイグジットを果たしたとしている。

次回バッチとなる Orange Fab Asia Spring 2020 Season は募集を既に開始しており、締切は来年2月中旬まで。プログラムは3月中旬に開始される見込みだ。今回から Orange Fab の展開国にロシアが追加され、Orange Fab Asia が連携可能な市場は合計で18ヵ国となった。

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