コスト8割減、返金補償もーー大学単位取得可のオンライン学習「Outlier」

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Image Credit : Outlier

ピックアップMasterClass founder launches Outlier, offering online courses for college credit

ニュースサマリー:1月9日、完全オンラインで単位取得可能な学習コンテンツ・サービスを提供するスタートアップ「Outlier」が、シリーズAラウンドにて、GSV VenturesやHarrison Metal、Tectonic Capital、Jackson Square Venturesなどから総額1,170万ドルの資金調達を実施した。

Outlierは、完全オンラインで正式な学位取得可能な動画授業コースを提供する。現在は米国のPittsburgh大学と連携することで、同大学の「微積分I」及び「心理学入門」の2つのコースを秋学期にパイロット版として提供している。次回は2020年春学期のコースの受講者を募集し、提供コースの開発を進めている。

Outlierの創業者は、著名なビジネスマンやアーティスト、アスリートらのオンライン授業を受けられる学習サイト「Masterclass」の共同創業者であるAron Rasmussen氏。Masterclassと同サービスとの決定的な違いは、実際に正式な大学の単位を取得できる点である。

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Image Credit : Outlier

話題のポイント:Outlierのサービスの特徴は、コストとクオリティの点で、生徒に対し大きなメリットを提供している点です。

まず一つ目のコスト面では、オンライン動画授業による先生側の人件費をカット。加えて、生徒が単位を落としてしまった場合の全額返金保証制度の導入により、学習者の負担を大幅に軽減する設計がなされています。

同社によれば、米国の大学における一般的な「微積分コース」1コース辺りのコストは2,500ドル(約27万5,000円)である一方、Outlierの場合は400ドル(約44,000円)と、6分の1ほどの差があるとしています。

創業者のAron氏は、既存の大学の単価はOutlinerの6倍の学費に加え、落第者の割合は40%を超えるという事実を引き合いに出すことで、授業費の高騰や学生ローン問題に喘ぐ米国にとって、同社の学習システムがいかに重要かという点を強調しています。

二つ目に、同社の学習コンテンツでは一つのコース受講において、複数の先生の中からお気に入りの先生を選択できたり、授業中の休憩時に他の生徒とチャットを交わすソーシャル機能などの拡充を行うことで、学習コンテンツのクオリティを向上させる取り組みを導入しています。

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Image Credit : Outlier

肝心なビジネスモデルですが、今後Outlinerは2つの拡大路線が検討できます。一つはすでに著名なMOOCと呼ばれる「edX」や「Coursera」などのサービスのように、提供するコースを拡充し学位の獲得を可能なプラットフォーム・モデルです。

そしてもう一つが、米国中の大学に対し、SaaSモデル型で単位取得可能な学習コースの導入を進めていく形です。

というのも、Aron氏によれば、高等教育における上級クラス(研究や実践活動など)において、オフラインの教育機関に通うメリットは大いにあると認めています。一方、基礎科目の受講コストを削減することに大きな価値がある、と考えています。

この理念を踏まえると、同社は学位の提供というよりも大学でいう1・2年時に学習するような基礎科目コースの部分をOutlinerのサービスで代替することを目指していると考えられます。そのため基礎科目授業の提供において成長シナリオを描いている可能性が高いのではないでしょうか。

その場合、現時点のパートナーはピッツバーグ大学だけですが、今後は米国中に提携大学を増加させていき、主に基礎科目コース部分だけをOutlinerの動画授業で代替していくということになります。

さて、ここまで現状わかる範囲で、Outlinerの特徴・ビジネスモデルに関して考察を書いてきました。ただ、同社は未だ創業から1年未満であり、今度様々な方向転換が行われる可能性も十分にあることに留意が必要です。

米国は授業料の高騰による教育格差の拡大や学生ローンの肥大化が社会問題しているため、ポジティブに捉えれば、Outlinerのような革新的なエドテック・サービスが誕生し易い社会的なニーズが整っていると考えることができます。

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