Samsungが「5G戦争」最初の勝者になるかも

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Image Credit:Samsung Newsroom U.S

ピックアップ:Samsung Acquires Network Services Provider TeleWorld Solutions to Accelerate U.S. 5G Network Expansion

ニュースサマリ:「Samsung Electronics(以下、Samsung)」は1月13日、ネットワークサービスプロバイダーの「TeleWorld Solutions」買収を発表した。今回の買収は、TeleWorld Solutionsが持つ5Gネットワークの設計、テスト、および最適化ノウハウ獲得が目的。Samsungのネットワーク改善に活かしてサービス向上を図る。

話題のポイント:日本では2020年の春頃に各通信キャリアからサービス提供が始まる5G。4Gの延長線ではない「高速通信・低遅延・多接続」の利用性が連日話題になっています。

とはいえ、5Gをフル活用できるようになるのは2024年頃。あくまで今年から始まるのは「高速通信」の機能に留まります。また、5Gサービスを先行している米国の調査によると、成熟している4G LTEと比較して同程度速度しか計測できないケースが報告されている点も考慮すべきでしょう。この点、日本の消費者にとっては気長に待つ時期であり、5G事業を展開予定の人にとっては今が仕込みの時期と言えます。

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Image Credit:野村総合研究所「5G(第五世代移動通信システム)について」

ただ、通信キャリアが5Gを提供するための基地局の領域では、すでに市場競争の結果が見え始めています。

基地局は設備構築に多大な時間と費用がかかる性質上、スイッチコストが高いため、5Gの機能がすべて提供される最終段階を見据えてパーナーが決定されるます。そのためすでに市場には事業者が徐々に出揃ってきています。

そこで、5Gをチャンスとして、基地局の領域で一気に勢力を伸ばそうとしているのが今回取り上げたSamsungです。

Samsungに基地局のイメージを持っている人は少ないと思います。実際、同社はこれまで2G〜4Gまでの基地局を提供してきましたが、世界でのシェアは5%程度しかありません。4社で90%のシェアを持つHuawei、Ericsson、Nokia、ZTEに引き離されている状況でした。

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Image Credit:IEEE ComSoc Technology Blog

しかし5G基地局においては、2018年第4四半期〜2019年第1四半期の期間の調査で市場シェアを37%を記録しています。同期間における基地局市場の内、5Gは5〜10%程度だったため収益に大きく反映されたわけではありませんが、Samsungの勢いが続けば市場シェア率20%程度を確保してもおかしくありません。

Samsungを勢いづかせる要因

では、Samsungの勢いの生み出している要因はなんでしょうか。内的要因と外的要因に分けて下図に示しました。

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Image Credit:BRIDGE(筆者作)

ここからはSamsungの強み「半導体の技術力」について紹介します。

米国の一部を除くと、5Gで扱う周波数帯は2.5〜39GHzであり、4Gに比べて高くなります。電波は周波数が高くなるほど外部の影響を受けるようになり、遠くに届きにくくなる特徴があるため、5Gでは基地局が通信できる範囲は狭くなります。この点をカバーするために基地局の数を増やす必要があるのです。

従来の基地局数の差は約100倍。基地局を買う側に立てば、コストが100倍になるのは避けたいため、信頼と価格をトレードオフとして少しでも安い基地局が欲しくなるのは当然です。

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Image Credit:NTT docomo「5Gサービス展開イメージ」より抜粋

Samsungは5G無線チップセットを独自開発することができます。2019年2月には次世代5Gチップセットを発表しました。独自開発したチップセットによって、通信キャリアが求める基地局のサイズと消費電力を満足させられる点に加え、コストを下げることが可能になります。これはSamsungが培ってきた技術力の賜物であり、競合他社は真似できないと考えられます。

さらに、Samsungは端末(Galaxy S10 5G、Note10 5G、Note10 + 5G)も半導体から作り、世界をリードしている状況です。そのため、ネットワーク構築において競合他社とは比べ物にならないほど有利と言えます。

Samsungの武器は低価格と高品質ということになります。そして今回のTeleWorld Solutions買収を通じて、既存ネットワークの最適化に強みを持つ企業を取り込むことで、通信キャリアと顧客の信頼を勝ち得ることにつながるでしょう。

すでに、韓国国内のKT、SK Telecom、LGU +をすべて抑え、米国のAT&T、Sprint、Verizon、更には日本のKDDIと契約を発表しています。これから中国のHuaweiとZTEがシェア率を持つアジア、ヨーロッパでも成果が徐々に見られるでしょう。

Samsungは5Gの最初の勝者になれるのか、そしてend-to-endを実現できる企業としてどのような2020年代を作り出していくのか、その答えはもう間もなく分かります。

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