ITエンタープライズ本社が集うシアトルの「社会課題解決型」スタートアップたち

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ワシントン湖を境に西はシアトル・ダウンタウン、東にベルビュー・レドモンド

アメリカ西海岸でテックスタートアップの聖地といえばサンフランシスコです。郊外にはシリコンバレーを要し、各所に名だたるVCが拠点を構えています。

さて、サンフランシスコと「西海岸」「テック」のキーワードで比較されるのがワシントン州に位置するシアトルです。どのように比較されるかといえば、サンフランシスコはテックスタートアップが集まり、シアトルにはエンタープライズ企業が集まる、そういった捉え方をされがちです。

実際そのイメージは間違っていません。

シアトルには大手IT企業を含め、あらゆる分野の本社の集合体で街が構成されています。たとえばAmazon。シアトルダウンタウンに構える同社HQはアマゾンタワーと呼ばれ、近辺には植物園型の「The Spheres」を構え、その特徴的な球体施設はアマゾンカラーを豊富に生み出しています。

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ダウンタウンシアトルから車で15分ほど東へ向かいレイクワシントンを越えた先にはMicrosoft本社がある街、レドモンドへたどり着きます。Amazonとは対照的に、大学にあるような2・3階建てのキャンパスを広大な土地に広げ、自然色豊かにマイクロソフトカラーを出しています。

シアトルはAmazon、Microsoft以外にも、オンライン旅行代理店のExpediaやコーヒーチェーンのStarbucks、航空機器製造のBoeing、ビッグデータ解析・BIツールとして著名なTableau、オンライン型の不動産データベースZillowなどを擁しており、挙げればキリがないほどエンタープライズ企業が本社を構えます。

シアトルで働くテックワーカーにとって上記であげた企業間を転職するのが普通のことです。筆者が出会った方は、Microsotで3年、Amazonで3年エンジニアとして働いたのち、同市にキャンパスを持つワシントン大学で教鞭を1年とり、その後Starbucks本社で新規サプライチェーンのマネジメント兼開発職に就く経歴を持っていました。

テック大企業間での転職は当たり前で、だからといって永遠にテックというわけでもなく、スターバックスのようにコーヒー業界に飛び込んだりすることも珍しくないというわけです。

さて、やはりシアトル発のスタートアップは数少なく、筆者が調達ニュースをチェックしていても「Seattle-based」の文字を見ることはとてもまれでした。ただ、シアトル発のスタートアップ数が少ない状況が徐々に変わりつつあるかもしれないデータを、Pitchbookがレポートで示しています。

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同レポートによれば、シアトル発のスタートアップもまた2019年着実に伸びています。同年度にVCやエンジェル投資家から資金調達した企業数は374社で計35億ドルと、2017年度まで下がり続けていたトレンドを盛り返していることが分かります。

筆者はシアトルに計4年ほど住んでいますが、先日、初めてサンフランシスコに1か月ほど滞在した際、両者に大きな違いを感じました。サンフランシスコのテックワーカーのスピリットには、英語でいう起業家としての「Entrepreneurship」が文字通りそのまま街に溶け込み、いわゆる私たちがテック系メディアで垣間見るテクノロジーの世界を体現している、という雰囲気があります。

逆にシアトルでは、生活の中心には「家族」があります。

もちろん米国や欧州諸国において、家族や親類と多くの時間を割く傾向は事実で、それはサンフランシスコでも同じでしょう。ただ、実際にシアトルに住んで感じる、生活の中での「家族の時間」はより大切にされていると感じます。そういった意味で、やはりスタートアップのカルチャーとは少し離れた特性をシアトルは持っているのかもしれません。

ということで、ここからは昨年に登場したシアトル発の調達スタートアップの中から、代表的なものを紹介していきます。まずは「Boundless」から。

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<参考記事>

同社は米国移民のグリーンカード手続きを手軽に、かつシームレスに行えるサービスを提供しています。米国で近年注目を集めている移民問題に対して、うまく切り込んだスタートアップです。

従来、移民手続きを進めるためには弁護士など専門家への依頼が必要であり、かつ、手続きの不透明さに疑問がありました。そこでBoundlessはオンライン化を通じて申請プロセスに透明性を持たせました。UXを高めることで、全米で利用者を増やしています。

まさに米国が直近で抱える社会問題解決をベースとしたスタートアップと言えるBoudlessですが、シアトルでは比較的こういった社会問題解決型スタートアップが多いと感じています。

例えば廃品回収サブスクを名乗る「Ridwell」も印象に強く残っています。同社はAmazon本社があるシアトルだからこそ意識する、空き配達箱問題に目を付け、いかにリサイクル資源として再利用するかの提言をしています。

<参考記事>

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シアトルにもサンフランシスコ発スタートアップのように、最先端技術のくくりにはいるAIやビッグデータを活用したり、それらデータのビジュアライズ化を図るスタートアップも誕生しています。

Polly」はSlackに代表されるビジネスチャットツールとの連携ツールを提供。社内のあらゆるデータの可視化を実現しています。「Showdigs」は内見版Uberと呼ばれ、オンデマンド内見エージェントを生み出しています。内見希望者(Uber利用者)と内見エージェント(Uberドライバー)をマッチングするP2Pプラットフォームを運営しています。

Uberが新たな形で”タクシー”ドライバーを生み出したように、新たな不動産エージェントを生み出すことを目指しています。

<参考記事>

photo of seattle skyline
Photo by Sergei Akulich on Pexels.com

Pitchbookが示していたように、シアトル発のスタートアップは増加傾向にあり、なかでもシアトルカラーが示されている社会問題解決型である「Boundless」などのスタートアップに資金が集まりだしていると感じます。Amazon、Microsoft、Starbucksなど今やエンタープライズといわれる企業達が作り上げてきたシアトルのカルチャーだからこそ誕生するスタートアップなのかもしれません。

2020年以降、シアトルはどう変わっていくのか。今後のシアトルという街が、サンフランシスコとは違ったカルチャーを持ちつつ、どのように「街づくり」をしていくのかとても楽しみにしています。

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