Amazon Goにみる「OMO戦略」を紐解く

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2016年ベータ版の際に筆者撮影

2019年はOMO(Online Merge Offline)戦略に注目が集まった年でした。

従来のネットから実店舗へ誘導させるO2O(Online To Offline)戦略から、顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、パーソナライズ体験を提供するOMO戦略に多くの小売企業が戦略の舵取りをしています。たとえば中国で急速に成長してユニコーン入りした「Luckin Coffee」が挙げられます。

同社はスマホで注文をした後に送付されるQRコードを、店舗入り口にある読み取り機にかざせば商品を受け取れるシームレスな体験を提供。「行列」の概念を取り払い、中国ではスターバックスを追い抜くほどの成長を見せています。

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Luckin Coffee Q3 2019

Luckin Coffeeはモバイル上に登録された顧客の注文データを、従来型のカフェ型店舗・ピックアップ専門店舗・デリバリーサービスのあらゆるチャンネルで活かし、ビックデータ戦略に成功している好例です。

同社の決算資料にある会社概要には、「BIG DATA」の記載があり、当初からOMOを事業戦略として据え置いていることがわかります。

We leverage our big data analytics and AI to analyze the huge volume of data generated from our operations and continuously improve our systems (Luckin Coffee会社概要より

同社のようなオンラインとオフラインをシームレスに繋げたモデルはOMOと呼ばれ、今後の店舗型ビジネスの核となると言われています。実際、Luckin CoffeeはOMO戦略を踏襲し、2019年10月からはお茶に特化したサービス「Luckin Tea」を立ち上げています。

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Image Credit: Amazon Go

ここからはOMOの未来を考えていくため、無人店舗「Amazon Go」をベースに、Amazonが思い描くOMO戦略を考察していこうと思います。

Amazon GOの現状

現在Amazon Goは同社の本社を置くシアトルに5店舗、サンフランシスコに4店舗、ニューヨークに8店舗の全米に計17店舗がオープンしています。Bloombergが2018年に報じたレポートでは、Amazonは2021年を目途に全米に3000店舗オープンさせるとしていたので、店舗数の視点では予定より遅れているのでしょう。

Amazon Goはアプリをリリースしており(上図)、アプリ上で発行されるURLを店舗改札にかざすことで入店することが可能となります。この入店体験はLuckin Coffeeも採用しています。

ECサイトと同じアカウントが利用されるため、Amazon Goの購買行動データと連携されます。たとえば、Amazon Goで分析した顧客の商品の好みなどを活かし、Amazonマーケットプレイスにパーソナライズさせた商品のレコメンド表示させることが出来るようになります。

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AmazonはOMO戦略を率先して展開する企業であり、最高の顧客体験をどのチャネルであっても提供する仕組みづくりに努めています。ただ、実績はまだ伴っていない印象です。

筆者シアトルの自宅真横にもAmazon Goの小さな店舗があり、よく目にするのですが利用客はほぼいない状態が続いていると感じます。一方、Amazon本社横に建てられた店舗には、日中訪れれば多くの人で賑わっているのですが、どうやらローカルユーザーでなく観光客のように思います。日本からの訪問者も多いようで、スーツを着たおそらく視察に来たであろう日本のビジネスマンに会うことが出来ます。

実際、CNBCによればAmazon Goの店舗において売り上げが出ているのは本社店舗のみだそうです。とはいえ、Amazon Go店舗は2020年以降も着実に増えていくことには間違いなく、同社の次の出店戦略として「空港」に目をつけているとCNBCが報じています

空港への出店戦略は大いに納得で、現状Amazon Goが街中で利用されていない根本的な「理由」を補完できるのではと感じます。

OMO戦略からみるAmazon GO

Amazon Goはあくまでコンビニエンスストアと名乗っているわけですが、特に私たち日本人からすると、コンビニとは24時間開いていて、あらゆるバラエティーの商品を手に入れることが可能な場所という印象を持ちます。

しかしAmazon Goはそんなことなく夜には閉まります。店舗数も少ないので、コンビニとしての価値にはやや疑問符がつきます。また、店舗ではオフィスワーカーの利用を想定してかサンドイッチやホットドッグなどの軽食を用意していますが、サンドイッチ一つで7ドル程の価格であり、お手軽とは言えません。

ただ、空港であれば、入店の必要もなく行列の生じない「軽食」の需要は大いにあると言えるでしょう。例えば5時間のトランジットの中で、レストランに入るほどおなかは空いていないけど、飲み物とサンドイッチ程度欲しいといった需要は多いはずです。

加えて空港の不動産であれば、軽食等を料理する環境が既に整えられている可能性も高く、設備投資への心配も少ないと思います。また、心理的面でも空港の食事で「10ドル」以下で済むのであればそこまで高いと感じないのではないでしょうか。街中と空港の値段差を比較したある調べによれば、平均して1.5〜2倍で商品が販売されているとしています。

将来的にAmazon Goがグローバル展開を狙うのであれば、重要なターゲットロケーションにもなりそうです。また、空港は中規模以上であれば、大体が24時間のオペレーションが多くなります。そのためAmazon Goは不動産契約をするのみで、24時間営業の店舗を低リスクで開始することが可能となります。空港の24時間のコンセプトに最適な店舗ソリューションがAmazon Goになるかもしれません。

Amazonが仕掛けるもうひとつのOMO戦略

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さて、Amazon傘下の実店舗といえばAmazon Goに加えて生鮮食品スーパーマーケットのWhole Foodsがあります。こちらも、筆者自宅の近所にありよく利用するのですが、Whole Foodsの「アマゾンカラー」が年々強さを増してきているように感じています。

たとえば、Whole Foodsはプライム会員限定の割引を実施していたりしますが、最も特徴的なのはプライム会員限定のデリバリーサービスです。AmazonマーケットプレイスからWhole Foodsのサイトにアクセスし、オンライン注文を35ドル以上することで無料で指定アイテムの配達をオーダーすることが可能です。

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Whole Foodsオーダー画面。チップの額は、Optionalとあるようにゼロドルにも調整可能

Whole Foodsはオーガニック食料品販売がベースにあるため、一つ一つの商品の値段は他スーパーマーケットと比較すると高くつく傾向にあります。ただ、無料配達という付加価値をそもそもプライム会員であったのであれば、Whole Foodsで買い物しようとなるはずです。この点、Amazonは会員がWhole Foodsを利用するように巧みに導線を引いていると思います。

ではAmazonはWhole Foodsを通してどのようにOMO対応させているのでしょうか。

Amazon Go同様に、Whole Foodsの実店舗でプライム会員限定の割引を受けるためには、QRコードを表示させスキャンする必要があります。加えて、Whole Foodsの食料品をオンライン注文する場合も、プライム会員ページにログインしてから注文します。こうしてAmazonはWhole Foodsのほぼ全ての購買チャネルから顧客データを獲得しています。まさにOMO戦略に則った打ち手です。

実店舗とオンラインの融合を進めるAmazonですが、顧客データ数を増やすため、2020年以降、Amazon Goはひとまず空港における新店舗設立に力を入れ、ダウンタウン近郊の街中にはWhole Foodsを増やし、「アマゾンエクスペリエンス」の接点を増やすといったリアル店舗戦略になるのではと思います。

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この流れに続くかのように、Amazonは2020年、LAの郊外Woodlands Hillsに新ブランドのスーパーマーケットを設立すると、CNETによって報じられています。報道の決め手となったのは、同社HP上の求職欄に突如現れた「Grocery Associate」の内容です。

職種の内容は以下のように記載されていました。

Join us as we launch a new Amazon grocery store in Woodland Hills. We are passionate about creating a shopping experience that customers will love. If you are customer-obsessed, like learning new things, and want to contribute to end-to-end store operations for a new business, this is the place for you!

new Amazon grocery store」の表記からもわかるように、こちらの店舗はAmazon GoでもWhole Foodsでもなく全く新しいブランド名がついた店舗となる模様です。

まだ正式にどういったコンセプトなのかはAmazonによって公開されていません。ただ、空港をメインにAmazon Go、ダウンタウンに近い街中をメインにWhole Foodsという拡大戦略が正しいとすれば、新しい店舗ブランドは、コストコのようなコンセプトの大型生鮮食料品店になる可能性が濃厚です。まだ詳細は公開されてなく、OMO戦略の一環として展開される店舗かも分かりませんが、可能性は高いと言えるのではないでしょうか。

オンラインベースでECを拡大させてきたAmazonが、その知見を大いに生かしリアル店舗をどのように世界へ羽ばたかせていくのか。OMO文脈と絡め、2020年からAmazonがリアル店舗をどのように反映させ、オンラインとオフラインを繋ぎ合わせていくのかとても楽しみです。

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