「エムティーアイ傘下入りは、プロダクトへの集中と勝負のため」——クラウドキャスト創業者兼CEO星川高志氏にインタビュー

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クラウドキャストの創業者で CEO の星川高志氏
Image credit: Crowdcast

先月、経費精算ソリューション「Staple(ステイプル)」を開発するクラウドキャストが、モバイルコンテンツ等大手のエムティーアイ(東証:9438)傘下に入ったことをお伝えした。クラウドキャストはエムティーアイから2017年12月に1億円を資金調達していたが、今回新たに7億2,000万円を調達、エムティーアイのクラウドキャスト株式持分は52.01%に達し、クラウドキャストはエムティーアイの連結子会社となる。

今回のグループ入りについて、クラウドキャストの創業者で CEO の星川高志氏は、BRIDGE のインタビューに応え、エムティーアイからの資金調達は事業のアクセルを踏むためのものでイグジットとは捉えておらず、今後も事業拡大に邁進すると強調し、最終的には数年以内の IPO に意欲を示した。

星川氏はクラウドキャストを設立する前、マイクロソフトや日本 DEC(現 HP)でプロジェクトマネージャーをしていた。簡単に言えば、エンジニア出身であり、ものづくりやユーザビリティに対するこだわりは人一倍強い。一方、今年で創業から9年目を迎えるクラウドキャストだが、同社には創業以来 CFO が存在しない。CFO が存在しないということは、CEO が CFO の役割を兼務しているわけで、CEO はプロダクトやサービス全般をケアする一方、並行して資金調達や財務戦略にも時間や労力を割く必要に迫られる。

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今回、多額の資金を手に入れ、エムティーアイ傘下に入ったことで、プロダクトのグロースに集中できる体制が整った、と星川氏は語っている。以前、人事労務クラウドの SmartHR が SPV(Special Purpose Vehicle)を活用することで資金調達の手間を大幅に効率化したことを伝えたことがあるが、クラウドキャストが出資先をエムティーアイ一に絞った背景には、同じような意図があったように思える。

当初は「MoneyNote」 という小遣い帳アプリを作り、弥生が開催した「弥生スマートフォンアプリコンテスト」でグランプリを受賞したのが2011年の秋。そこから会計で作れないかなと考え「bizNote」を作り、会計や経理だけでなく従業員にフォーカスした「bizNote Expense」を作った(bizNote や bizNote Expense の機能は現在、Staple に取り込まれている)。

ピボットを繰り返して Staple にまでたどりついたが、その時その時で経験したことは後のプロダクト開発に生かされていて、決してムダにはなっていない。カードプロセッシングのプラットフォームを作る Kyash と出会ったことで、経費精算用 Visa プリペイドカード「Staple Card」を発表できたことは大きい。Staple Card は評判が良く、今年はこのグロースに賭ける勝負の年だと考えている。(星川氏)

競合他社も出す従来型の経費精算アプリは、紙でやっていた経費精算をデジタル化しているという印象。しかし、Staple Card では企業が従業員に Staple Card を持たせることで、経費として発生する費用支払のプロセスを効率化することができる。むしろ、経費精算というプロセスを省いてしまう感覚に近い。そもそも、経費を後日精算という形で社員に立替を強いることにも異論はあるし、前金で払い出すのも運用が煩雑になる。Staple Card の利用が伸びているのは、そういったニーズを如実に反映してのことだろう。

Staple Card
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アメリカでは BREXDivvy、ヨーロッパではデンマークの Pleo といったスタートアップがクラウドキャストと似たような仕組みで経費精算の効率化ソリューションを提供している。彼らが近い将来、日本市場に参入して来る可能性は十分にあり得る。経費精算効率化ソリューションはスイッチングコストが高い分野であるため、先取りした者がその市場のドミナントプレーヤーとなるシナリオは考えやすい。

コロナウイルスを想定していたわけではないけど、経営者としては今年はアクセルを踏むべきと考えていた。その道を選んだ限りは、とことんやってやるぜ、という感じ。結果は、2年後とか3年後に出ると思う。

クラウドキャストには海外のメンバーも多くて、製品開発チームは現在20人くらい。ものづくりはうまくいっていると思うが、はっきり言って、我々は売ったりするのはさほど上手ではないので、調達した資金は、セールスやプロモーション活動に活用させてもらう。(星川氏)

今年からの数年間で、経費精算という分野で圧倒的な地位を取りに行くと宣言した星川氏だが、将来的にはスペンディング(費用支払)そのものをもっと突き詰めたいと言う。費用記録のアプリから経費精算自動化ソリューションへと進化した同社の行く先を楽しみにしたい。

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