「福岡のヌーラボから世界のヌーラボへ」——事業拡大や新製品開発に向け、NOW、XTech Ventures、新生企業投資から約5億円を調達

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ヌーラボ代表の橋本正徳氏と NOW 代表の家入一真氏。同郷の二人は、福岡人のソウルフード「博多天神」をインタビュー場所に指定してきた。

福岡を拠点に仕事効率化ツール「​Backlog​(バックログ)」「Cacoo(カクー)」「​Typetalk(​タイプトーク)」を開発・提供するヌーラボは3日、直近のラウンドで約5億円を調達したと明らかにした。リードインベスターは NOW が務め、XTech Ventures、新生企業投資が参加した。

同社では今回獲得した資金を使って、新サービスである「Nulab Pass(ヌーラボ・パス)」の開発を中心に、既存サービスの改善、開発者の採用や広告宣伝など事業拡大を加速するとしている。かねてから福岡市の高島宗一郎氏に IPO をネタにイジられることの多い同社だが、実際のところ、その実現を念頭に置いたファイナルラウンドとして今回の調達を位置付けているようだ。同社にとっては2017年9月に実施した調達に続くものとなる。

今回リードインベスターを務めた NOW は、言うまでもなく連続起業家でエンジェル投資家でもある家入一真氏が率いるベンチャーキャピタルだ。ヌーラボ共同創業者で CEO の橋本正徳氏と家入氏は共に福岡という同郷の出身であり、福岡を代表するテック&カルチャーフェスに成長した「明星和楽」を2011年の第1回から支える仲間でもある。

今から3年ほど前、家入氏は橋本氏と博多で飲む機会があり、このときにヌーラボの持つ可能性に大きな魅力を感じたという。

ヌーラボという会社のことは随分前から聞いていたが、橋本さんに会って話をしたときに、実際のところ、どんな会社なの? という話になった。多くの外国人が働いていて、いろんな人の価値観がある中で、それらをうまく共存させている。(中略)

LGBTQ とか、宗教とか、マイノリティや多様性についても取り組んでいて、それはパフォーマンスでもなく、着々と一介のスタートアップが頑張っているところに惚れたという感じ。その結果として、いいプロダクトを作り出せているのも確かだ。(家入氏)

豚骨ラーメンを待つ二人。インタビューでの滑舌をよくするため、テーブルには麦汁が用意。

スタートアップのグローバル化の話になると、DAY0 からサービスを複数言語に対応させる、社員に多様性を持った雇用を実施する、などの方法を提示されることは多いが、実際にこれを実現できているスタートアップは多くない。ローカルの単一言語で話ができる社員同士の方がコミュニケーションコストが安く、短期的には経営効率が良いことを複数の投資家も認めている。

しかし、経済性や効率性を追求すると一方で多様性を排除することになり、そのスタートアップのスケールの可能性に限界を作ってしまうことになる。ヌーラボは国内以外に、台湾・ニューヨーク・アムステルダムに拠点を持ち、シンガポールにはコミュニティスペースを設置。また、橋本氏のアシスタントもカナダ人であるなど、グローバル化を地で行っている。社員総会も全て英語で実施しており、ムスリム(イスラム教徒)の社員からラマダン(断食月)明けの宴に、橋本氏が招待されるなど和気藹々の関係なのだそう。

こうして生まれたヌーラボの社風の多様性は、プロダクトのグローバル対応にも少なからず良い影響を及ぼしている。世界中にユーザがいるヌーラボは、GDPR(EU一般データ保護規則)や CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)といった新ルールにもプロダクトをいち早く対応させた。

舌鼓を打ちながら、BRIDGE のインタビューに応じてくれた投資家と起業家。

前述した Nulab Pass は、こうしてヌーラボが会得したセキュリティやガバナンス確保のノウハウを製品化したソリューションとなる予定。ヌーラボは2016年と2018年の2回にわたり、複数のヌーラボ SaaS を一つのアカウントで管理できる SSO(Single Sign-On)のしくみ「ヌーラボアカウント」を公開しているが、Nulab Pass はこれをエンハンスしたものとなる模様。企業で管理者が社員向けに、SAML 認証方式による SSO 対応アカウントを作成できるようになる。将来は、監査ログなどの機能を設ける。

競合各社のサービスはユーザ単位課金が多いが、Backlog は会社全体で導入してほしいので、ユーザ単位での課金をしていない。その結果、経済産業省などの官公庁や大企業も導入してくれるようになりつつあり、これを加速していきたい。(中略)

GDPR や CCPA への対応は本当に大変だった。本来、国境が無いはずのインターネットで、個人情報の扱いの違いから、国によってルールが異なり、そこに新たな国の違いによる壁が生まれてきていることも事実。それらにも積極的に対応し、これまで福岡のヌーラボと言われ続けてきたが、これからは世界のヌーラボを目指したい。(橋本氏)