つくば発スマート嚥下計「GOKURI」開発のPLIMES、シードラウンドでサイバーダインから1.5億円を資金調達——医療機器化や事業開発を加速

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左から:取締役 仁田坂淳史氏、代表取締役 下柿元智也氏、代表取締役 鈴木健嗣氏、取締役 Dushyantha Jayatilake 氏
Image credit: Plimes

筑波大学のスピンオフスタートアップで、嚥下計(えんげけい)デバイス「GOKURI(ゴクリ)」を開発する PLIMES は24日、同じく筑波大学発のロボティクスベンチャーであるサイバーダイン(東証:7779)からシードラウンドで1億5,000万円を調達したことを明らかにした。PLIMES はサイバーダインと業務提携も締結し、GOKURI の開発と市場展開を加速させる。

加齢と共に嚥下、すなわち、飲み込み能力が低下すると、誤嚥(ごえん)を生じて肺炎を発症したり、死亡に至ったりするリスクが高まる。医師によって嚥下機能の低下が認められた場合、リスク排除のため固形物の食事から粉砕あるいはペースト状の食事に切り替えられたり、場合によっては、胃瘻(胃ろう)による栄養摂取を余儀なくされたりする。

GOKURI は、そういった高齢者の QoL(生活の質)を向上させることを念頭に置いた医療支援デバイスだ。首の部分に接触させたマイクを使って拾う音から嚥下が正常であるかどうかを日常的に計測でき、ユーザのリハビリの効率化を目指す。正確なモニタリングが可能になることで、ユーザは従来の固形食など味わいのある食生活を取り戻せる可能性が高まる。

「GOKURI」
Image credit: Plimes

PLIMES のチームは、筑波大学と筑波大学付属病院で2010年から基礎研究を開始(当時はまだ法人化されていない)。実に10年に及ぶ研究成果を経ての今回のシード資金調達だ。そのきっかけとなったのは、嚥下の正常・異常状態の測定が97.3%以上の精度で可能になったこと、そして、病院を販売チャネルとしたビジネスモデルの確立だ。現時点でのビジネスモデルでは、患者への医療サービス向上のために病院が GOKURI を採用するケースを想定している。

例えば、病院においては、脳腫瘍のある患者を手術してせっかく治ったのに、食事をした途端に誤嚥性肺炎で亡くなった、というようなことがあることは避けたい。(中略)

開発に着手しプロダクトマーケットフィットを進める過程で、医師に患者の食事をモニタリングしたいというニーズがあることがわかった。しかし、医師が患者を見続けることはできない。そこを GOKURI が支援する。患者を早く退院させてあげたいという病院の思いに、ビジネスモデルとして刺さりそうだ、と。(共同創業者で CCO の仁田坂淳史氏)

京都府京丹後市、鹿児島県垂水市、福岡県など地方自治体らとも連携し、これまで地元医療施設で高齢者が参加した実用試験を続けてきた。高齢化に対応するソリューション開発は日本のスタートアップが得意とするユニークネスだと考える PLIMES は、高齢化は先進国に共通する社会課題であるため海外展開にも着手しており、現在、アメリカ、ドイツ、デンマークで実証実験中だ。

「GOKURI」
Image credit: Plimes

今回の資金調達を受けて、PLIMES では嚥下機能検査・モニタリングの研究・医療機器化の開発、ビジネス開発・言語聴覚士・クラウドでのアプリケーション開発・人工知能技術開発人材など、各領域で専門性の高い人員の募集を開始する。出資者であるサイバーダインは福祉・医療系ビジネスを手がけており、PLIMES とはシナジーが期待できる。PLIMES では、エンジニアリングやバックオフィス機能、販売チャネルの開拓などで広くサイバーダインの支援を受ける考えだ。

PLIMES は2015年、科学技術振興機構のスタートアップ事業「JST START」に採択。2018年にスタートアップとして法人化した。アジア・アントレプレナーシップ・アワード2018 で IP Bridge 賞、つくば市のアクセラレータプログラム「スタートアップアクセラレーションつくば」の第2期デモデイで優勝するなど、数々のスタートアップイベントやイニシアティブで優秀な成績を収めている。

<参考文献>

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