テーブルの上に残された資金——休眠資産の驚くべき規模を検証する【ゲスト寄稿】

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


先日「強みを生かした投資」というタイトルの記事を投稿した。記事にある様に、VC とヘッジファンドのスタンスは根本的に違うものであり、数ヶ月前に S&P500 に投資した時も、投資判断において VC 投資経験が生きた訳ではない。結果的にこの投資判断は正しかったものの、マクロトレーダーではない私は、結果的に少々タイミングを逸して、テーブルの上に投資資金を残すこととなった。

投資資金を残してしまうことのペナルティは、ここ2年で急速に大きくなっている。前 ECB(ヨーロッパ中央銀行)総裁の Mario Draghi 氏の「金融危機を脱するためには〝何でもやる〟」という宣言は、経済をゼロ金利・マイナス金利時代へと導いた。

Image credit: Pixabay

高名なヘッジファンドトレーダーであり、「The Anti-bubbles」の著者である、Diego Parrilla 氏の示唆に富む表現を借りれば、我々は「リスクフリー金利」から「金利フリーリスク」へのパラダイムシフトの渦中にある。先日からのマーケットの下落を受け、中央銀行は今後もさらなる量的緩和が必要となる旨を宣言しており、マイナス金利時代がすぐに終わることはないと私は予想している。

リターンを得る手段が限られている環境では、小さな判断ミスが高くつく。例えば、フランス政府の後ろ盾がある「Livret(リブレ)」という預金は利率が0.75%である。これは現在の環境では高金利であり、特にリスクフリー(フランス政府を信用していればの話だが)というメリットがある。

一方、中小企業向けのクラウドレンディングプラットフォームの利率は4〜5%、実際はすぐに返済が始まるので2%程度は口座にデポジットとして残しておく必要がある。さらにクラウドレンディングサービスは看過出来ないレベルのデフォルトリスクもあるため、実際のところリスクを考慮したリターンがこの金利レベルで得られているのかは判断が難しい。

対して、0.75%の金利であっても、流動性が保証された Livret に資金を置いておく方が、タンス預金よりはベターである。これはほとんどの人が直感的に分かることだと思う。

この直感的なメリットの不明瞭さは、仮想通貨に関しても同様である

取引量の大きいデイトレーダー以外にも、さまざまな理由で仮想通貨を保有している人がいる。例えばイノベーションの先端を把握したい技術者、デイトレーダーではないが長期的なバリューアップを信じる人、若しくはポートフォリオの一部として少額を保有する人などである。

こうした人々にとっては、仮想通貨は単に眠っている資産であり、事実上タンス預金とほとんど変わりがない。現在は様々な仮想通貨関連のソリューションが登場しているため、短期保有者であっても積極的なトレーディングなくして価値を獲得することが出来る。リターンはリスクの取り方にもよるが、休眠資産として眠らせたり貸し出すよりも、保有資産をリスク・リターンのフロンティアに押し上げる方がよほど有益である。

私は、この仮想タンス預金が実際にどの程度あるのか試算するのは難しいであろうと考えていたが、最も優秀なブロックチェーン起業家の一人と会話する中でデータが存在することを知った。

Curvegrid のマルチ BaaS(Blockchain-as-a-Service)プラットフォームは、このような休眠している仮想通貨の額を調べることが可能である。彼らの計算の仕組みを理解するにはさらなるディスカッションが必要であるが、同社の優秀なチームが好意で私の質問に対する解答を用意してくれた。この驚きのデータにご興味お有りだろうか?

Image credit: Curvegrid

200億ドル

これは休眠資産となっている ETH(イーサリアム)の価値であり、実に ETH 総マーケットキャップの80%にも上るのである!

多くの人々がテーブルの上に資産を残したままにしている。私はまだこの数字を個人投資家、仮想通貨交換、レギュレーターに細分化し、更なるデータの意義を見出すことを試みている。近々またこのトピックについてお話させていただこうと思う。

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