「新型コロナウイルスは2020年のブラックスワン」——Sequoia Capitalが、起業家に再び警告【全文訳】

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Sequoia Capital Headquarters
Image credit: Google Street View

シリコンバレー拠点の VC である Sequoia Capital は、新型コロナウイルス「COVID-19」が世界中に広がっているため、投資先スタートアップに警戒すべき状況を伝えている。

コロナウイルス:2020年のブラックスワン(原題:Coronavirus: The Black Swan of 2020)」と題された Medium への投稿で、同社はコロナウイルスの流行がもたらすかもしれないビジネス結果に対処しつつ、ビジネスの健全性を確保する方法についてガイダンスも提供した。

この警告は、新型コロナウイルスが世界中の都市を麻痺させ、何百万人もの人々を孤立させたことからもたらされた。新型コロナウイルスの流行はスタートアップ業界に大きな打撃を与え、多くの企業が従業員のレイオフや給与の凍結を余儀なくされた。また、株式市況に悪影響を及ぼしたほか、特にスタートアップのノンストップな職場文化に影響を与えた。

投稿は次の通りだ。


親愛なる創業者および CEO の皆さん:

コロナウイルスは、2020年のブラックスワン(訳注:市場において、予想できず起きた時の衝撃が大きい事象)だ。皆さんや我々の中には、すでにこのウイルスの影響を受けている人もいる。我々は皆さんのストレスを理解しており、皆さんを助けるためにここにいる。生命が危険にさらされているため、状況ができるだけ早く改善することを願っている。その間、我々は乱気流に備えて自分自身を引き締めるべきであり、展開されるかもしれないシナリオに対し心構えをしておくべきだ。

皆さん、皆さんの従業員、皆さんの家族の健康と安寧を守るために、皆さんは新型コロナウイルスを回避する予防策の提案に翻弄されているだろう。多くの人と同じく、我々は入手可能な情報を収集しており、我々の視点を喜んで共有したいので、興味があるかどうかを教えてほしい。このメモは、それとは別の話——ウイルス流行の影響がもたらすかもしれないビジネス上の結果に対処しながら、ビジネスの健全性を確保するためのガイダンスだ。

Sequoia Capital は世界中にオフィスがあるため、これは残念なことだが、グローバルビジネスに対するコロナウイルスの影響について、直接的に情報を得ている。全ての危機と同様、その恩恵に預かれる企業も存在するが、最前線にある国々の多くの企業は、ウイルス流行の結果、次のような困難に直面している。

  • 事業活動の低下——12月から2月にかけ、成長率が急激に低下している企業がいることを確認している。順調に事業成長していた数社は、ウイルスの影響のさらなる波及により、2020年第1四半期の計画を達成できないリスクに苛まれている。
  • サプライチェーンの混乱——中国での前例のない封鎖は、グローバルサプライチェーンに直接影響を与えている。ハードウェア、D2C(direct to consumer)、小売分野の企業は、代替サプライヤーを見つける必要があるかもしれない。純粋なソフトウェア企業はサプライチェーンの混乱にさらされることは少ないが、連鎖的な経済的影響のためにリスクにさらされている。
  • 旅行の中止や会議のキャンセル——多くの企業がすべての不要不急の旅行を禁止しており、一部の企業はすべての国際旅行を禁止している。旅行会社は直接影響を受けるが、対面会議に依存して販売、事業開発、提携関係の議論を行うすべての会社が影響を受けている。

ウイルスが封じ込められたと確信できるまでには、かなりの時間がかかる。おそらく数四半期だ。世界経済が基盤を回復するにはさらに時間がかかる。皆さんの中には、需要の減少を経験したり、供給の課題に直面したりする企業もあるかもしれない。アメリカの FRB(連邦準備制度理事会)や各国の中央銀行は金利を引き下げることはできるが、世界的な健康危機の経済的影響を緩和する上で、金融政策は効果が出づらい方法になるかもしれない。

以下の通り、皆さんには、事業に関するあらゆる仮定に疑問を呈することをお勧めしたい。

  1. 手持ち資金が無くなるまでの時間——本当に十分な時間が残されているか? 経済が混乱した場合、数四半期を持ち堪えることができるか? 緊急時の対応計画を立てたか? 事業を根本的には損なうことなく、どの部分で経費を削減できるか? 痛みを伴うことになるかもしれない将来結果を避けるため、これらの質問に今すぐ自答してみよう。
  2. 資金調達——2001年(世界同時減速)や2009年(リーマンショックの影響)に起こったように、プライベートファイナンスが大幅に軟調になる可能性がある。困難な状況を、永続的な成功に向けて準備する機会に変えることができるか? 最も象徴的な企業の多くは、困難な時期にその原型が作られた。1987年のブラックマンデーの直後、我々は Cisco と提携した。Google や PayPal は、ドットコムバブルの不況の余波を乗り越えた。最近のものでは、Airbnb、Square、Stripe は、世界金融危機の真っ只中に設立された。制約は心を集中させ、創造力に豊かな土壌を提供する。
  3. 売上予測——会社にとって、直接的または即時的な露出が無い場合でも、顧客が支出習慣を修正する可能性があることを予測してほしい。確実と思われた取引が成立しないかもしれない。重要なのは、茫然としないことだ。
  4. マーケティング——売上低下により、顧客のライフタイムバリューが低下していることに気づくかもしれない。これは、マーケティング費用の一貫した収益を維持するために、顧客獲得費用を抑える必要があることを示唆している。経済的および資金調達の不確実性が高まる中では、マーケティング費用の ROI 水準を引き上げることを検討した方がいいかもしれない。
  5. 社員数——上記のすべてのストレスポイントが財務に与えられていることを考えると、今こそ、より少ないコストでより多くのことができ、生産性を高めることができるかどうかを批判的に評価すべき時かもしれない。
  6. 資本投下額——経済的自立への道筋を作るまで、普段より不確実な環境下で、資本投下額が賢明な範囲にあるかどうかを調べよう。おそらく計画を変更する理由はなく、ご存じのとおり、状況の変化が事業加速する機会を提供することさえある。しかし、これらは意図的な決定事項であるべきだ。

あらゆるビジネスの低迷を約50年間にわたって乗り越えてきた我々は、重要な教訓を学んだ。変化する状況に対して迅速かつ決定的な調整を行うことを後悔する人はいない。不況下においては、収益と手持ち資金は、常に支出よりも速く低下する。いくつかの点で、ビジネスは生物学に似ている。ダーウィンが述べたように、「強い者、賢い者が生き残るのではない。変化に対応できる者が生き残るのだ。」

永く続く企業の特徴は、こうした瞬間にリーダーが反応することだ。皆さんの従業員は全員が新型コロナウイルスのことを認識しており、皆さんがどのように反応し、彼らにとって何を意味するのか疑問に思っている。誤った楽観主義は、皆さんを簡単に迷わせ、緊急時の対応計画を立てたり、大胆な行動をとったりすることを妨げる。現実を直視し、状況の変化に応じて決定的な行動をとることで、この罠にハマることを避けてほしい。このストレスの多い時期に、チームが必要とするリーダーシップを発揮してほしい。

以下は、Sequoia Capital のパートナー Alfred Lin 氏からの意見だ。彼は、経営幹部として別のブラックスワンの瞬間を過ごしたことがある。

金融危機の前の2008年、悪名高いプレゼンテーション「良き時代の冥福を祈る(原題:RIP: Good Times)」 のために Sequoia のオフィスに呼び出されたとき、私は Zappos の COO / CFO を務めていた。まさに今と同じく、その時は直面している不況の期間や程度を知らなかった。後に私が確認したのは、このプレゼンテーションが我々のチームと我々のビジネスを以前にも増して強くしたということ。競合他社が打ちのめされた後、Zappos は金融危機の荒波を抜けチャンスをつかむことができた。

皆さんの健康を保ち、皆さんの会社を健康に保ち、世界に衝撃を与えよう。

Team Sequoia


企業にとっての不安がそうであるように、ウイルスはほぼすべての大陸に広がっている。中国だけでなく、ブラジル、イタリア、ナイジェリア、インド、ヨーロッパ、アメリカが先週、新しい感染者の報告をした。

この間、Sequoia は企業に対し、余剰人員の削減について重要な質問をすること、支出についてより慎重になることを勧めている。Sequoia の投資先には、GitHub、Google、LinkedIn、Nvidia、Oracle、Square、YouTube、Zoom など世界の最も成功した企業がある。

【via e27】 @e27co

【原文】