東急のアクセラレータが2019年度のデモデイを開催、スタートアップ6チームが東急グループ各社との共創事業を提案ピッチ

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東急(東証:9005)は23日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム(TAP)」2019年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った6社が登壇した。なお、今回は新型コロナウイルス対策のため無観客開催、審査員は遠隔での参加となった。

東急アクセラレートプログラムは、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。前回のバッチからは締切を設けない通年募集、適宜共創を検討するという体制が取られている。今回からはさらにいくつかのマイナーチェンジが施され、経営メンタリングよりも東急グループ各社への事業実装を重視する形に移行、また以前は審査が毎月実施だったが、エントリから審査結果連絡までのリードタイムが2週間に短縮された。

2019年度はスタートアップ124社からエントリがあり、うち43社がプレゼン審査を通過、最終的に6社が共創検討対象(今回の登壇者)に残った。第1期からの通算での応募累計634社、うち PoC を実施した件数は30件、事業提携や資本提携を結んだのは6社で、東急グループからスタートアップへの出資総額は10数億円に上る。

対象となる領域は、交通/不動産・百貨店・スーパー/広告/ヘルスケア/ツーリズム/エンタテイメント/スマートホーム/デジタルマーケ/スポーツ/ホテル・ホステル/物流・倉庫/建設/カード・ポイント/教育・カルチャーなど17領域で、東急グループ26事業者がスタートアップとの協業を目指す。なお、次期2020年度からは、東急グループとの事業共創を前提とせず、東急グループにとっての全くの新領域も採択の対象となる。

最終審査会では、新規性、親和性、成長性、実現可能性の4つの観点で審査された。今回の最終審査会で審査員を務めたのは以下の方々だ。

  • グローバル IoT テクノロジーベンチャーズ 代表取締役社長 安達俊久氏(ゲスト審査員)
  • デロイトトーマツベンチャーサポート 代表取締役社長 斎藤祐馬氏(ゲスト審査員)
  • SBI インベストメント CVC 事業部長 加藤由紀子氏(ゲスト審査員)
  • Spiral Capital シニアアソシエイト 立石美帆氏(ゲスト審査員)
  • 東急 代表取締役社長 髙橋和夫氏(審査員長)
  • 東急 執行役員渋谷開発事業部長 東浦亮典氏(内部審査員)
  • 東急 執行役員沿線生活創造事業部長 金井美恵氏(内部審査員)

【最優秀賞】subsclife ✖️ 東急モールズデベロップメント

賞金:109万円

subsclife は、IoT 家具ブランドを展開する KAMARQ HOLDINGS からスピンオフしたスタートアップで、家具のサブスクリプションサービスを提供している。この日は、家具の購入から処分や売却まで、家具のライフサイクルを包括的にサービスとして提供できることをアピールした。

東急グループとは、法人向けには東急モールズデベロップメントが運営する商業施設に入居するテナントに対して、サブスクモデルによるインテリアや家具調達を踏まえた空間づくりの提案を行う。個人向けには、SHIBUYA 109 が監修した若年層ニーズ調査、企画開発に基づき、2種類のインテリアコーディネイトを3月下旬からサブスク家具として販売・提供する。

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【優秀賞(渋谷賞)】Balus ✖️ 東急レクリエーション

賞金:42万8,000円

Balus は、ライブエンターテイメントの分野に XR を持ち込むスタートアップだ。リモートでライブイベントが開催できるプラットフォーム「SPWN」を開発している。ライブ会場は都市圏に偏っており、週末は混雑していて予約が困難で、これは主催者であるアーティストにとっても、ファンにとっても不都合だ。また、アーティストにとって大きな収入源となるマーチャンダイズは、商品を購入した顧客情報を取得していないため、タッチポイントをその後のプロモーションに生かしきれていない。

バルスでは、VTuber の双方向ライブに代表されるアーティストのライブ中継はもとより(アプリ無し、ブラウザのみで使えるのも一つの売り)、チケット販売、マーチャンダイズ販売、DVD 販売、デジタルコンテンツ販売などを一つのプラットフォーム上に集約し、ファンにワンストップで提供できるようにする。顧客情報も集約するため、アーティストにとってもプロモーションを実施しやすく、マネタイゼーション効果を最大化できる。

昨年3月のローンチ以降、2019年には東京・大阪・福岡・札幌・福岡・上海・タイをはじめとして、69回のライブイベントを開催。これまでに45,000人がユーザ登録しており、平均単価15,000円、1イベントで最大3,800万円を売り上げた実績がある。東急レクリエーションとは、大阪や川崎のシネコン「109 シネマズ」で実施してきたライブイベントを全国拡大していくという。ライブイベント開催にあたって専用線敷設が必要なく、機材も PC のみで充足することから、主催者にとってのハードルが大幅に下がるという。

【二子玉川賞】LUUP ✖️ 東急電鉄

賞金:25万円

LUUP は、マイクロモビリティを都市に実装しようとする MaaS スタートアップだ。街のあらゆる場所にモビリティ機器を借りたり返したりできるポートを配置し、高齢者も含め全ての人が安全かつ便利に利用できるモビリティのプラットフォーマーになることを目指している。

現在は、マイクロモビリティを普及させるための素地づくりとして、電動キックボードの規制緩和(多くの先進国と異なり、日本やイギリスでは電動キックボードへの交通法規の適合化が進んでいないため、原付バイクと同じ扱いになる)やシェア事業としての実証実験(不動産オーナーと関係性を作りポートを整備、モビリティが所構わず放置されないための環境づくりなど)に注力、半年間で7つの自治体と連携した。

先頃、LUUP はマイクロモビリティ分野の複数プロバイダを集めた業界団体「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、LUUP の岡井大輝氏が代表に就任。LUUP は現在、警察庁の認可のもと一部公道での実証実験や、国の特定制度下(サンドボックス)での実証実験を行っている。東急電鉄とは、MaaS 実装、不動産連携、スマートシティ分野での協業を目指す。「東急線・東急バス サブスクパス」との連携、ベトナムで東急が開発するスマートシティ「東急ビンズンガーデンシティ」への実験導入などを行う。

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【SOIL 賞】空 ✖️ 東急ライフィア

賞金:10万円

は、ダイナミックプライシングによるホテルの価格設定支援サービスを提供している。同社の「MagicPrice」は、ホテルが周辺の競合ホテルとの比較や過去データに基づいた需要予想にも基づき、機械学習で最適な価格をリアリタイム計算。計算された価格は、自社サイトのほかサイトコントローラを経由して、旅行予約サイトや OTA にも自動反映できるしくみだ。東急グループでは東急ホテルズが運営する一部ホテルで MagicPrice が採用されている。

空では、東急グループとは、ダイナミックプライシングが適用可能な不動産(特に駐車場は在庫が持ち越せない点で、ホテルとビジネスモデルが似ている)、モビリティや観光(レンタカーやツアー旅行なども、ホテルと同様、需要に連動して価格が変動する)などへのダイナミックプライシング適用を検討。なかでも東急グループ傘下でコインパーキングを運営する東急ライフィアと協業し、コインパーキングへのダイナミックプライシング導入の実証実験を図るとした。

空は、先頃、披露された NTT 東日本のアクセラレータ「LIGHTnIC(ライトニック)」第3期においても、NTT グループ傘下のコインパーキング運営会社 NTT ル・パルクと同様の実証実験を行うことを明らかにしている。

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【SOIL 賞】SELF ✖️ 東急百貨店

賞金:10万円

AI スタートアップの SELF は、B 向けのコミュニケーション AI を開発している。小売事業向けの販売自動化システム「SELF LINK」では、リアル店舗でベテラン店員が接客するような体験をオンラインショップで再現することができる。ユーザの好みや特性を徹底的に理解し、他方、商品の特性も解析することで最適なマッチング提案を行う。

東急百貨店との協業では、4月13日からオンラインショップに導入される予定で、母の日商品、ギフト、ワインの商品カテゴリで、販売員に代わって SELF LINK が顧客と対話、売り場を的確に案内し、顧客が関心を示しつつも意外性のある商品の提案を行うことを目指す。オンラインショップにおけるコンバージョンレートの向上を狙う。

顧客の特性みならず、商品の特性も解析した上で双方マッチングするプロセスについては、「Okinawa Startup Program」の直近バッチで輩出された awoo(阿物)の取り組みにも似ているかもしれない。

【SOIL 賞】FUN UP ✖️ 東急百貨店

賞金:10万円

FUN UP は、スマホ上でパーツやデザインを選ぶだけでオリジナルアクセサリーが作成でき、それをプラットフォーム上で売買できる、ものづくりマーケット「monomy(モノミー)」を運営。ユーザは自らデザインした作品が売れると、販売代金の10%を獲得することができ、新たなデザインを生み出すモチベーションにつながる。

企画〜生産〜カスタマーサービスまで通常であれば2ヶ月を要し、発注の最低ロットのため余剰在庫を抱えることを余儀なくされるが、monomy を使えば工程を半分以下に効率化でき最短で1週間にまで短縮が可能。少ロット多品種を扱うことが可能になることから、最近はインフルエンサーによるオリジナル D2C ブランドに注力、ここ半年で70以上のアクセサリブランドを立ち上げた。

東急百貨店との協業により、今年5月に渋谷ヒカリエ ShinQs で OMO(Online Merges with Offline)の実証実験を複数展開する予定。サステイナブル素材(パーツに端材などを活用)を使ったアクセサリの店頭販売、在庫なし・BTO デリバリ方式による人気インフルエンサーの D2C ブランドアクセサリの店頭販売などを開催予定。

百貨店によるオンライン D2C ブランドのリアル進出支援では、丸井グループ(東証:8252)が先月、新会社 D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)を設立したニュースが記憶に新しい。

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