創業4年で年商20億、残高60万円からの逆襲劇ーー隠れたキーマンを調べるお・ZIZAI渡辺氏

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ZIZAI代表取締役COOの渡辺稜太氏(撮影:大柴貴紀)

編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。シーズン2として2020年に再開

「隠れたキーマン」復活第一弾は、アミューズメント事業「スロパチステーション」、バーチャルライブ配信アプリ「IRIAM (イリアム)」、VTuber事業を行うZIZAIの代表取締役COOの渡辺稜太氏を取り上げてみました。ZIZAIは代表取締役CEOの塚本大地氏と渡辺氏が大学生の時に創業し、それから4年で20億円以上の売上を誇るまでに急成長。しかもほぼ全て自己資本で経営してきた、他のスタートアップとは一線を画す異色の存在です。あまりメディアに出ることもないZIZAIの「隠れたキーマン」渡辺氏のインタビューを早速ご覧ください。

「光の92世代」COO

大柴:「隠れたキーマン」復活第一弾はZIZAIの渡辺さんです!今日はよろしくお願いします!

渡辺:取材ありがとうございます!よろしくお願いします!

大柴:ZIZAIさんの情報としては、キープレイヤーズの高野さんがインタビューした記事は読みました!

渡辺:ありがとうございます!みんなその記事を見てくれています(笑。

大柴:では、早速お話を伺っていきたいと思いますが、現在おいくつでしたっけ?

渡辺:1992年生まれで、今年28歳です。

大柴:その世代って一部では「光の92世代」とか言われてますね。dely堀江(裕介)くんとかたくさん優秀な起業家がいますよね。塚本さんも同じ1992年生まれ?

渡辺:いや、塚本は一個下の1993年です。彼とは大学の同級生ですが、僕は一浪してまして(笑。

大柴:なるほど。では、塚本さんとの出会いを教えていただけないでしょうか?

学校に行かずにビジネスに没頭の日々

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渡辺:はい。名古屋大学工学部に進学したのですが、塚本とは同じ学部学科だったんですよね。大学入学後すぐに出会いました。

大柴:塚本さんと距離が近くなったきっかけってあったんですか?

渡辺:恥ずかしながら、僕は入学後すぐにパチスロにどっぷりハマっていまして、塚本との距離が近くなったのは塚本に「パチスロの勝ち方」を教えてもらってからです。

大柴:なるほど、パチスロって稼げるんですね(笑。

渡辺:胡散臭いんですが、パチスロってちゃんとルールに基づいてやると長期では必ず勝つ方法があるんです。塚本はもともと稼ぐためだけにパチスロをやっていて、稼ぎ方を教えてくれて僕をパチスロ中毒から救ってくれました(笑。ただ、パチスロで稼ぐのも1年ほど経つと飽きてきて、もっと面白いことをやりたいなと思い、二人でインターネットでビジネスを始めました。その頃から大学には二人ともほとんど行っていません。

大柴:どんなビジネスですか?

渡辺:よくあるメディアだったり、「せどり(本の転売)」だったり。大学生っぽいビジネスでしたが、楽しかったです。それと同時にビジネスの難しさもわかりはじめました。何度もあやしい商材や大人に騙されそうになりました(笑。

大柴:なるほど。あ、でもこの時はまだ個人事業としてやってたんですよね。

渡辺:そうです。大学4年になった時に「そろそろ腰をすえてちゃんとやろう」と法人化することにしました。会社名はノリで「DUO」にしました。二人だからちょうどいいか、と。あと、塚本が英単語帳の「DUO3.0」を使ってたんで(笑。

大柴:なるほど(笑。でも二人だから「DUO」ってするくらい二人は仲良いんですね。

渡辺:お互いのビジネスに対しての価値観が根本的に似てると思います。商売に対しての考え方、ビジネスの軸みたいなものが似てる気がします。当時は週3でサウナに行っていたので、仲はいい方だと思います(笑。

大柴:そうですね(笑。

渡辺:また、性格面ではかなり真逆で塚本は攻めタイプで、一方で僕は守りタイプ。お互いの得意分野が違うので相性はいいんだと思います。

アミューズメント業界に飛び込んだ理由

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ZIZAIウェブサイトより

大柴:法人化した時の事業は、個人でやってたものですか?

渡辺:いや、そういうのは会社をつくった時に捨てて、ゼロから事業を考えました。自分たちが勝てる事業、領域をひたすら調べた結果、パチンコ業界だなという結論に至りました。パチンコ市場は非常に大きくて20兆円ほど市場規模があって、ユーザーも1000万人います。

大柴:確かにパチンコ業界って大きいですね。

渡辺:大学1年の頃からやっていたので知見はある。そして、若手プレイヤーがほとんどいなかったのでITをうまく使えばなんとかビジネスになるだろうと思いました。今思うと奇跡的な選択だなって思います。

大柴:なるほど。でもパチンコ領域って色々と結構厳しいイメージがあるのですが

渡辺:そうですね。怖い人はほとんどいませんが、やっぱり業界特有のノリや厳しさはあります。正直、業界に新規参入するのはかなり難しいと思います。「もう一回やれ」と言われてもやりたくないです。

大柴:やっぱりそうなんですね(笑。ちなみに最初はお金の工面はどうしたんですか?

渡辺:いろんな人のお力を借りて、JASDAQに上場している「プロトコーポレーション(中古車情報サイト『グー』などを運営する上場企業)」という会社の創業者の横山順弘さんにお会いできて、結果的には無利子で500万円ずつ塚本と僕に貸してくださりました。VCという言葉を知らなかった学生二人で1000万円個人で借入をするという今時聞かない資金調達です(笑。

大柴:確かにそんな資金調達、聞いたことない(笑。勢いのある若者に共感したのでしょうかね。

渡辺:自分の昔を思い出したのかもしれませんが、応援してもらえることになって助かりました。1,000万円もの大金をよくわからない大学生に、しかも無担保無利子で貸してもらえるなんて奇跡に近いですよね。

大柴:ほんとそうですね。

渡辺:はい。塚本は「100万円ずつすぐに返します!来月からでも!」と自信満々に横山さんに言ったんですが「それはよくない」横山さんは言うんです。「会社というのはすぐに結果はでない。資金はすぐになくなる。来月から100万円ずつ返すというのは現実的ではない」と。そして「約束は守れるものにしなさい」と諭してくれました。

大柴:すごい良い話…

渡辺:それで横山さんから「1年後から毎月5万円ずつ返して」と言われ、そうすることに決まりました。自己資本でここまでやってこれたのも横山さんのおかげです。感謝してもしきれないです。

大柴:今も返済中なんですか?会社も大きくなったし、一気に返済したとか?

渡辺:たしかに一括返済は可能なんですが、今でも毎月5万円ずつ返済しています。横山さん、毎月通帳を見るのが楽しみだと言ってたので、これからも毎月返済していこうと思ってます。

大柴:超良い話(笑。先日横山さんが来社されたと渡辺さんがツイートしてましたね。よく会社にはいらっしゃるんですか?

渡辺:年に一回くらいでしょうかね。新しいオフィス見て「でかくなったなー」って言っていただきました。とても評価もしてくださりますし、課題も教えていただけます。ありがたい存在です。

1000万円の借入が残高60万円となってからの逆襲劇

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大柴:資金も得たし、あとはやるだけですね。最初から順調だったんですか?

渡辺:いや、全然ダメで、1年経たずに銀行の残高が60万円まで減ってしまいました。最初に構想してた事業がダメで。次どうしようかと考えてる時にYouTubeの領域は良いんじゃないかという流れになり、一つのYouTubeチャンネルに着目しました。

大柴:ほうほう。

渡辺:個人の方が運営されてるパチンコ系のチャンネルで、塚本が運営者の方にコンタクトをとっていました。そのチャンネルを譲渡してもらって自分たちのコンテンツを載せるという提案をしに愛媛まで会いにいきました。そこで一晩寝ずに交渉した結果、根性負けして、僕らに15万人も登録者がいるチャンネルを託すという決断をしてくれました。

大柴:すごい交渉力ですね。

渡辺:その辺は塚本が得意な分野です。彼は、話す相手をファンにしてしまう才能があるんですよね。YouTubeチャンネルを僕らで運営することになって、これが転機となり、一気に事業が加速して、1期目から単月黒字も達成できるほどになりました。

大柴:それは凄い。でも、残高が少なくなってきたときに焦りとかそういう感情はなかったんですか?

渡辺:塚本も「何とかなるっしょ」みたいな感じだったので、そこまで焦りのようなものはなかったです(笑。

大柴:なるほど。トップがポジティブだと安心感でますよね。ところで現在は渋谷メインだと思いますが、どうして東京進出したんですか?

渡辺:名古屋はとてもいいところなんですが、最先端の情報や人は集まりにくいので新規事業をやるには東京だなと感じていました。なので2年目が終わるころに五反田にオフィスを構えました。

大柴:そういう経緯だったんですね。

渡辺:はい。東京に拠点を移してからVtuber「ミライアカリ」やバーチャルライブ配信アプリ「 IRIAM」も開始しました。毎年1つ新しい事業を生み出してることになります。

大柴:それって凄いことですよね。一つの事業をつくるのも大変なのに、いくつも立ち上げて成功するって凄いと思います。

渡辺:塚本が新しい事業をつくるのがとても得意でして。自分が会社の内側をみているうちに新しい事業を探して人も集めてくれて。僕も今後はそういった役割をやらないといけないと思っています。その後、事業も増えてきて、人も増えてきて、五反田から渋谷に移転しました。ただ、渋谷でもすぐに人が増えて、増床していった結果、渋谷だけで4拠点になってしまいました。コミュニケーションが難しく、会社としても統一感がなくなってきたので、ワンフロアでやりたいなって思ってたんです。

大柴:それで去年ここに移転したんですね。ワンフロアで結構広いですよね。

渡辺:そうなんですよ。ワンフロア400坪でみんな同じフロアで働ける。コミュニケーションが取りやすく、とてもいい状況になりました。やっぱり働く環境って大事だなと思いました。

大柴:あと、DUOからZIZAIに社名変更も去年したと思いますが、どういう思いからですか?

渡辺:DUOという社名も気に入っていたのですが、事業も会社も大きくなるにつれて「どんな事業をつくって、どんな会社にしたいのか、世の中にどんな価値を提供できるか」ということを考えるようになりました。そこでしっかりと会社の方向性を決めてメッセージ性のある社名にしたいと思い、ミッション・バリューと共にを変更しました。

大柴:そういうことだったんですね、実際変えてみてどうでしょうか?

渡辺:社名変更やミッション・バリューの策定は1年ほどかかって大変ではありましたが、実際にやってみてとてもよかったなと思っています。会社としての方向性やバリューを決めることによって組織として強まっていっている感覚があります。

組織への向き合いがミッション・バリューを決めたことでようやくできるようになりました。今後は組織から事業が生まれ、育っていくという事業と組織の両輪がしっかりワークする会社にできればと思っています。長期的な会社の成長は組織力だと最近はとても感じています。

同年代で意識している経営者は塚本だけ

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ZIZAIウェブサイトより

大柴:さて、渡辺さんから見て塚本さんってどういう人ですか?

渡辺:そうですね、やっぱりとても人的な魅力があるなって思います。人を惹きつける力や相手をファンにする力みたいなものは凄いなって思います。そして、誰よりも頑張ってるし、刺激を受けますよ。事業アイデアも豊富だし、誰よりも事業のことを理解してます。正直、CEOとして悪いところはないと思ってます。

大柴:完璧じゃないですか。

渡辺:でも、家の電気代を払い忘れたりカバンを持たないとか、パソコンを使わないなど、変わった部分もたくさんあります(笑。でもそういうところ含めて魅力的だし、やっぱりずっと一緒に会社をやっていきたいなって思う人物です。ちなみに最近はパソコンを使うようになりました(笑。

大柴:会社での役割分担のようなものは?

渡辺:塚本が攻めで、自分が守りっていうスタイルで最初はやっていました。でも最近は優秀な「守り」の人も入ってきてるので、自分も攻めに転じていかないとなって意識しています。

大柴:攻めに転じた渡辺さんの将来の構想は?

渡辺:個人的な夢というのはそこまでなくて、いわば会社と自分が一体化しているので、もっと大きくて影響力のある会社をこれからもつくっていきたいと思っています。事業的にはYouTubeを主軸にいろんな事業をやっていきたいです。YouTubeは生活のインフラになりつつあります。そこでニーズに合ったものを生み出していきたいです。また、既存事業ももっと大きくできる可能性があるのでそこは自分がやらないといけないです。

大柴:なるほど。ちなみに渡辺さんが同年代の経営者で意識している人っているんですか?

渡辺:意識している人はいないですね。学ばせてもらう方はとてもいますが。しいて挙げれば塚本ですかね。やっぱり彼から学ぶことが一番多いし、彼の成長に追いつけるように日々努力していきたいです。

大柴:塚本さんへの敬意が凄いですね。仲も良いんですね。

渡辺:一般的な「仲良い」かどうかはわからないですが、お互いが切磋琢磨して成長している状況で仲が良いっていう状態がいいなって思います。今はそういう状態かもしれません。現状、塚本以外に惚れている人はいません。