データドリブンな農業実現に向け、新世代のIoTツールを開発する米Arable(後編)

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前編からの続き)

正しい場所のデータを集めるArable Bridge

Arable の Mark2 は、天気、穀物の健康、灌漑の必要を教えてくれる。
Image Credit: Arable

Arable のセンサーやシステムが作り出した情報に加えて、プラットフォームはよく知られているサードパーティのセンサーに接続し、それらをさらに役立てることができる。農業における最大の難問の1つは、接続されていないシステムが多すぎるという点だ。データを土の湿度を測るプローブや灌漑用水路の流れを測るセンサーなどと結びつけることで、Arable は生育時期の全ての主要データを1ヶ所にまとめるのだ。

目的は耕作地における単純化、より良い決定を下すための脈絡のあるデータ、そしてコスト削減である。Arable は Arable Bridge を通じてそれを行う。Arable Bridgeは直観的なやり方で補助センサーからデータを収集し、有用でリアルタイムな分析のために、そのデータをシームレスにプラットフォームへと統合することができるのだ。

また、API のバージョン2.0も提供しており、プラットフォームのユーザが1つの農業用ソフトウェアソリューション上で参加し、編集、協力したりできるようにしている。Arable Open は相互運用性のために設計されており、それはつまりデータが幅広いデジタル農業用プラットフォームに統合されることもあるということである。

Arableの始まり

Arable は機械学習により、穀物へのケアを勧めてくれる。
Image Credit: Arable

Arable のチーフサイエンティストである Adam Wolf 氏は2016年に同社を設立した。彼は農業の研究者としてスタンフォードやプリンストンで働き、世界中を旅して植物や作物の変遷を研究していたが、必要な要素を測定するためには何十万ドルもする極めて複雑で高価なシステムを用意して設置しなければならなかった。彼は実際に研究を行うよりも、ネットワークの設置や維持に多くの時間を費やしていることに気が付いたのだ。

そこで彼はプリンストンの研究所に戻り、全ての作業を行うシンプルなデバイスを作り始めた。製作とイテレーションには数年かかったが、それが Arable の核となるセンサー製品の始まりであった。同社は2017年に最初の商業製品をローンチし、翌年には Ethington 氏が参加した。

私の1日は Arable と共に始まり、Arable と共に終わっていました。Arable で毎日が区切られていました。

Arable の顧客でありサウスカロライナ州で7代続く農家でもある Carolina Hemp の Chuck Dietzel 氏は声明でこう述べている。

今や Arable はサンフランシスコに30人の人員を持ち、農業用 IoT の第2世代のツールをローンチしている。同社はこれまでに Middleland Capital、S2G Ventures、Spark Labs、Cantos VC、Village Capital、Thrive Accelerator、National Science Foundation から1,800万米ドルを調達している。

作物を効率的に、そして持続可能な方法で栽培するにはどうしたいいのかという昔からある問題の解決に、弊社はまったく新しいアプローチをとっています。(中略)

弊社が行っていることの何が最先端かというと、弊社は新しい IoT 技術と機械学習を組み合わせ、農家の方にリコメンデーションやインサイトを提供できるようにしています。しかも、非常に拡張性が高い方法でです。同時に使いやすさ、企業レベルの信頼性も考慮しなければいけません。どのように作り上げるのか、接続するのか、動力をどうするのかということにはイノベーションが必要でした。そして結果として非常にシンプルな製品が出来上がりました。(Ethington氏)

より良いネットワーク、天候のモニタリング

 Arable は、IoT デバイスの接続に、新種のネットワーク技術を採用している。
Image Credit: Arable

5Gネットワークやナローバンドの IoT のような、到来しつつある新技術も助けとなる。

弊社はデバイスを既存の携帯電話網や基地局と接続することで、こういったことができるようになったのですが、スマートフォンでできることの6倍もできるようになりました。また、普通の携帯電話モデムに比べてデバイスの消費電力は4分の1です。そのため農村部での幅広い接続への扉が開かれるのです。

また Arable はバケツを覗き込むよりも良い降雨量測定のアプローチをとっている。同社の固形のセンサーは可動部がなく、簡単なメンテナンスで済む。雨がデバイスに当たるとマイクが拾うことができる音声信号を発し、一定時間内にどれだけの雨が降ったのかを記録することができるのだ。

Arable はパートナーと協力し、同社の技術が例えば灌漑エレクトロニクスのような、さまざまな設備と協働できるようにしている。パートナーには BASF、Netafim、Treasury Wine Estates、Ferrero、Mars がいる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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